米司法省、原油流出事故関係各社に資産売却等の事前通知を要請

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米司法省は6月23日付けで、三井石油開発の米子会社Moex USAを含む関係各社に、損害賠償責任があると判断された場合に賠償支払いに充てられるかも分からない資産を処分する前に政府に事前通知をするよう要請するレターを出した。Bloombergが情報公開法に基づき入手した。

司法長官は、米国最大の原油流出事故のクリーンアップの費用を米国民が支払うことはないとし、政府は責任のある会社に責任を取らせると述べている。

要請先はBPAnadarko PetroleumMoex USAの権益保有3社と、Deepwater Horizon rig の所有者で掘削作業のコントラクターのTransocean 及びセメント作業のコントラクターのHalliburton 5社。

レターでは、裁判で損害賠償を行うよう命じられた場合に賠償支払いに充てられるべき資産を各社が処分することがないよう、米国政府は強い関心を持っているとし、支払い、売却、リストラ、買収などを含む行動を行う場合は30日前に連絡するよう求め、この要請に応じるかどうかの返事を求めている。

Transoceanへのレターでは、同社は30億ドル以上の自社株買いと10億ドルの配当を決めたが、賠償支払い能力を減らす可能性があり、特に、事故が420日に発生し、賠償責任の可能性があるのに気が付いていながら、514日に10億ドルの配当支払いを承認したのは、問題だとしている。

BPは本年に年間105億ドルの配当を予定していたが、大統領との会談後、配当政策を見直し、既に発表済みの6月21日予定の第1四半期配当を取り止め、第2、第3四半期の配当も取り止めた。

BP Transocean へのレターでは、毎月の財務諸表、金融機関との借入契約その他の提出を求めている。

このほか、BPHalliburtonTransoceanAnadarko と問題のリグを製作した現代重工業に対して、原油流出事故に関する情報の保持を求めている。政府の調査を予想して記録を破棄すれば司法妨害に問われると警告している。

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米国政府は「重大な過失、意図的な違法行為」を理由に、米国油濁法による負担限度額(75百万ドル)の適用を除外する意向の模様。
    2010/6/22 
メキシコ湾石油流出事故の損害負担(その3)

米国ではAnadarkoと三井石油開発もファンドに拠出するべきだとの声が挙がっている。
ルイジアナ州財務長官は6月24日、Anadarkoと三井石油開発もファンドに拠出すべきだと述べた。両社とも利益とリスクを共有しており、また、これにより万一BPが破産した場合のヘッジとなるとした。

既報の通り、BPはAnadarkoと三井石油開発に対し流出対応費用や賠償額を含む5月の総費用の分担を求める請求を行ったが、今後も毎月、自動的に請求を行うと思われる。

    2010/7/1 BP、パートナー2社に事故関係費用分担金を請求

米Coast Guardは最近、米国政府の費用として70.9百万ドルを請求したが、請求書はBPだけではなく、他のパートナー2社とTransocean及びその保険会社Lloyd’にも送られた。「油濁法によれば責任ある当事者と保証者にも連帯責任がある」としている。

付記

White Houseは713、BPに対して4回目の請求書(99.7百万ドル)を送付した。前回同様、AnadarkoMOEX Transoceanにも送付した。
過去3の合計122.3百万ドルはBPが支払っている。

パートナー3社間及びコントラクターの間の責任に基づく負担問題は、米国政府や被害者には関係のない話である。

事故対応への支出(毎月必要)と、責任に基づく負担(解決に時間が必要)が絡み、三井石油開発や三井物産にとって問題が深刻になってきた。

なお、三井石油開発の付保については、5月10日の三井物産決算説明会で以下の説明がある。(同社ホームページ記載)

「付保状況については、三井石油開発にてプロジェクト100%ベースで、 暴噴制御費用保険300百万ドル、第三者賠償責任保険150百万ドルを付保している。保険が本件に関しどのように適用されるかは現時点では不明である。」

同社の比率は10%のため、暴噴制御費用保険30万ドル、第三者賠償責任保険15万ドル、合計45万ドルとなる。

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三井物産の持株比率は2006年初めには44.34%であったが、その後、順次買い増し、現在 69.91%となっている。

本年2月には、三井化学(4.98%)、三井住友銀行(4.28%)、みずほコーポレート銀行、三菱東京UFJ銀行から、合計12.85%を約320億円で購入している。

 

 


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