光ファイバーカルテルで住友電工に株主代表訴訟

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光ファイバーケーブルをめぐるカルテルで2010年5月に約68億円の課徴金納付命令を受けた住友電気工業の株主が近く、損害賠償を求めて同社の取締役と元取締役を相手取る株主代表訴訟を大阪地裁に起こす。

2010/5/26  光ファイバーケーブルのカルテルで過去最高の課徴金

リーニエンシー制度を使わずに損害が膨らんだ点を問題視しており、リーニエンシー制度を使わなかった取締役の責任が問われる初の代表訴訟となる。

リーニエンシー制度は、独禁法改正で2006年1月に導入された。
談合やカルテルへの関与を公正取引委員会に自主申告した先着3社が対象で、立ち入り検査前の申告であれば、1社目は課徴金がゼロに、2社目は5割、3社目は3割、それぞれ軽くなる。検査後の場合は3割の軽減となる。

今回の光ファイバーカルテルでは、NTTグループへの販売の見積価格を調整したとして、住友電工、古河電気工業、フジクラ、昭和電線ケーブルシステム、住友スリーエムの5社に計161億円の課徴金の納付を命令した。

アドバンスト・ケーブルシステムズ(Corning Cable Systems 50%、日立電線 50%)は自主申告で全額免除となっており、古河電工は、課徴金が3割減となったことを明らかにしている。
(あと1社、減免の会社があることとなる)

8月26日に株主は同社の監査役に対し、責任追及等の訴え提起請求書を送付した。

同社は、課徴金納付命令を応諾し、67億6272万円を納付したので、同社には同額の損害が発生した。

以下の理由で、本件カルテルが認定された2005年2月9日から立入調査を受けた2009年6月までの間、一時期でも取締役の地位にあったことがある者全員に対し、連帯して全額を請求する訴えを提起するべきだ。

① 本件カルテルに関与又は黙認した過失
   本件カルテルに関与し、又は知り得たにもかかわらず看過黙認して本件カルテルを放置。

② カルテル防止に関する内部統制システム構築義務違反
   真に有効なコンプライアンスシステムを構築しなかった過失。

③ 課徴金減免制度(リーニエンシー)に関する内部統制システム構築義務違反
   他事業者の申告に先駆けて違反事実を申告して課徴金を免れるための、
   有効なリーニエンシーに関するコンプライアンスシステムを構築しなかった過失。

④ 実際にリーニエンシーを利用しなかった過失
   他事業者はリーニエンシーにより課徴金を免れている。
   この減免申請を怠り、減免の機会を失した過失。

役員らに対して責任追及の訴えを提起するに際して同社を代表する監査役に対し、会社法847条1項に基づき、本件取締役らを被告として、上記課徴金相当額の損害賠償を求めて責任追及等の訴えを提起するよう、請求する。

上記責任追及等の訴えを提起しないときは、会社法847条3項に基づき、株主代表訴訟を起こす。

この請求に対し、同社の監査役は調査の結果、10月25日に、不提訴理由通知書を送付した。

提訴しないこととした理由は以下の通り。

(1)本件行為に関与又は黙認した過失
公正取引委員会から指摘された覚悟値及び見積価格の決定等の行為に関しては通信営業部長と担当グループ長というごくわずかの担当者で、電話等によつて短期間で行われ、会合の場合も、自己負担で行われており、取締役等には完全に秘匿されていた。結果的に、本件については担当取締役や執行役員、他の取締役には、全く知らされていなかった。

社内では、カルテルの防止について周知・徹底されており、本件行為がなされていることを疑わなかつたとしても、過失責任は問えない。

(2)カルテル防止に関する内部統制システム構築義務違反
社内の内部統制システムの構築は真摯に、かつ、熱心に行われており、独占禁止法遵守に関しても、社内全体を対象として、各種の研修が継続的に行われている。

(3)課徴金減免制度に関する内部統制システム構築義務違反
独占禁止法に関する研修の中で必ず課徴金減免制度に十分な時間を割き、その動向も含めて説明しており、社員等が違反行為を申告するための社内外の窓口も整備され、社内報等を通じて周知されている。
立ち入り後、法務部門が直ちにリニエンシーの準備作業に着手した。

(4)リニエンシーを利用しなかった過失
取締役は、立ち入り検査前にこれを知ることはできず、リニエンシーを利用できなかった。
立ち入り検査時点で、リニエンシーの準備に着手していたが、事実確認等の準備中に3番目に申告を行った会社があることを知り、リニエンシーによる免除を受けることができなかった。
結果的に短時間のうちに席が埋まったため、リニエンシーの利益が受けられなかったもので、過失は認められない。

監査役が提訴しないため、株主代表訴訟を行うこととなった。

原告を支援する弁護団は「内部統制の仕組みが形式的な水準にとどまり、有効な法令順守体制を築いてこなかった」とし、電線業界をめぐり繰り返し価格カルテルが指摘されている点も問題視し、「カルテルの発生を十分に予想できたにもかかわらず、これを怠った責任は大きい」と指摘しているという。

本件を扱うのは、「株主の権利弁護団」。

株主の権利の実現・株主の被害の救済・株主権利の啓蒙・教育などを目的とする。
具体的には
 ・株主の権利の実現の為の立法・政策・運用の提言を行う
 ・株主の被害の相談・アドバイス・必要な場合は株主の依頼により会社・所管庁・証券取引所などへの要請・申告、裁判・告訴・告発などを行う
 ・株主の権利などについての講演会、セミナーなどを行う

日立造船橋梁談合、大林組土木建築工事談合、住友金属橋梁談合・使途秘匿金・ステンレス鋼板カルテル、神戸製鋼所橋梁談合などで株主代表訴訟を扱っている。

 2010/4/10 株主代表訴訟での和解、相次ぐ


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


 

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