人民元上昇

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4月29日の上海外国為替市場の人民元相場は対ドルで上昇し、終値が1ドル=6.4910元と、2005年7月の人民元改革以降で初めて1ドル=6.5元を突破、最高値を更新した。

中国人民銀行は、当日の基準値を1ドル=6.4990元と最高値に設定、取引時間中には一時1ドル=6.4892元まで元高が進んだ。

インフレ対策のため、また5月上旬の米中戦略経済対話に備え、当局が元高を容認しているとみられる。

中国は2005年7月21日に2.1%の切り上げを発表、その後、管理フロート制を取ってきたが、2008年夏の金融危機以降、レートを1ドル≒6.8人民元でほぼ固定してきた。

国際通貨基金(IMF)は2010年3月に、「人民元の実質実効為替レートはドルと共に下落してきた。中期的な観点から大幅に過小評価されている」と指摘した。

オバマ大統領は中国に「市場指向の為替レート」へ移行するよう呼び掛け、世界経済の不均衡是正に不可欠な要素だと指摘した。
米国の民主、共和超党派の議員団は、中国が人民元の切り上げに応じない場合、厳しい罰則を科すことなどを明記した事実上の中国制裁法の制定を目指す考えを表明した。

中国の中央銀行である中国人民銀行は2010年6月19日、「人民元相場の弾力性を強化する」との声明を発表、2008年8月から固定していた人民元を再び管理フロート制に戻した。

管理フロート制では、中国人民銀行の発表する基準値に対して、上下0.5%の変動を認めているが、上のグラフの通り、政府の介入により、取引はほとんど基準値どおりで推移している。

中国のGDPに占める消費の割合は4割弱で,アメリカの7割,日本の5割強とくらべると低い。
逆に輸出はGDPの約4割を占める。

人民元の上昇は輸出産業に影響を与え、倒産や失業の続出で共産党への批判を呼ぶ可能性があるため、政府はこれを避けるため、元売りドル買いを行ってきた。

この結果、外貨準備高は2006年10月に1兆ドル突破、2009年4月には2兆ドルを突破、本年3月末には3兆ドルを突破した。

しかし、元売りドル買いの結果、市中に人民元があふれ、また人民元安が輸入原料価格の高騰をよび、これが物価高をよんでいる。
2011年3月の消費者物価指数は5.4%、うち、食品は11.4%となった。

ここにきて、中国当局は最大の課題であるインフレ抑制のため輸入物価の下落につながる元高を容認する姿勢を示したもの。

経済成長とインフレ抑制、人民元上昇を迫る米国の圧力、中国にとっては難しい舵取りが求められている。

 


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化学系企業で開発を担当している管理職です。本当に勉強になります。感謝しております。
『もっと』と思ったら、何をすべきかお教え頂ければ有りがたいです。

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