IEAが石油備蓄放出

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国際エネルギー機関(IEA)は623日、加盟28カ国がリビアからの石油供給が絶えていることに対応して6000万バレルの石油備蓄を放出することで合意したと発表した。

リビアからの石油途絶の継続で影響が出てきているとし、夏の季節需要により不足が深刻になり、世界の景気回復の支障となるとしている。

加盟国は日量200万バレルを30日間、計6000万バレル放出する。
うち、米国の放出量が全体の
50%、欧州が約30%、アジアが残り20%となる。

日本は民間備蓄義務量を国内消費の70日分から67日分に引き下げ、27日から1か月間実施する。
合計
790万バレルの放出で、加盟国全体の13%に相当する。

IEAではリビアの輸出減は日量150万バレルだが、リビア危機により5月末までに合計で13200万バレルが輸出減となったとしている。

IEAメンバー国の石油備蓄は合計41億バレルで、そのうち約16億バレルが緊急目的用に国により備蓄されている。
ネット輸入国はネット輸入量の
90日分の備蓄義務を有するが、現状は最低量をはるかに超える約146日分を備蓄している。
http://www.iea.org/netimports.asp

IEAルールのルールでは、放出は、
1)加盟各国が協調する場合
2)石油供給途絶またはその恐れがある場合
となっており、価格対策のための放出は行わない。

IEAの緊急石油備蓄放出は1974年の設立以来3回目で、最初は1990/91年の湾岸戦争時、2回目は2005年にHurricane Katrinaによりメキシコ湾岸の石油設備が破壊された時で、2001年の米同時テロ時も検討されたが見送られた。

IEAの発表を受け、北海ブレント先物は約5%安の1バレル=108ドル近辺に下落。米原油先物も5%近く下げて91ドルを割り込み、2月以来の低水準となった。

石油価格引き下げのためではないのかとの質問に対し、IEAでは、リビアの輸出減と石油の需要増が、回復途上にある世界経済にダメージを与えるのを避けるのが目的であり、価格問題ではないとしている。

現実には投機筋をけん制し、価格引き下げにつながっているが、逆に年金資金などを運用するファンドが原油価格急落の損失補てんのため株を売る可能性も指摘されている。株安が進み、消費が一段と冷え込む可能性もある。

オバマ大統領は、石油市場のひっ迫は世界経済を圧迫する可能性があるとし、今回のIEA決定を歓迎すると表明した。

一方、米石油業界とOPEC加盟国は、供給をめぐる非常事態はないとしてこれを批判した。
米石油協会は、「戦略石油備蓄は供給の非常時に利用することを意図しているが、非常事態は存在しない」としている。

イランなどOPEC加盟国も備蓄放出は正当化できないとしている。ある湾岸国のOPEC代表は「1バレル150ドルに上昇したわけでもなく、このような動きにでる理由はない。市場は供給不足に陥っていない。クウェートやサウジはこれまでも増産しているが、買い手はそれほど多くない。IEAは米国とともに政治的に動いているだけだ」と述べた。 

ーーー

OPEC20091月から生産枠を、イラクを除く「11カ国の20089月の生産量2,904.5万バレルから420万バレルカット」する2484.5万バレルとしている。(200811月時点の枠 2730万バレルからは245万バレルの減となる)

2008/12/18 OPEC 大幅減産決定

その後、相場は回復し、実際の産油量も今年4月にはイラクも含めて日量2880万バレルまで増えていた。
(イラクの生産量は250万バレル程度)

今年6月のOPEC総会で、サウジ、クウェート、カタール、アラブ首長国連邦の4カ国はアジアの需要増などを理由に、さらに150万バレル多い日量3030万バレルへの引き上げを提案した。
「石油離れ」を加速しかねない1バレル100ドル超の原油価格は望まないと考えた。

しかし、議長国であるイランが他の6カ国とともに増産を拒否した。

サウジは総会に先んじて静かに増産に乗り出しており、生産量は2008年以降初めて日量900万バレルを超えていた。
サウジは第
3四半期までに生産量を日量1000万バレルまで増やす可能性がある。
(2008年末までのサウジの生産枠は847.7万バレル)

この結果、1986年以降のOPECの生産枠制度が事実上、なくなり、サウジは好きなだけ原油できることとなった。

サウジのヌアイミ石油鉱物資源相は総会後に、「市場では不足が生じない」と述べた。

しかし、IEAはサウジによる増産のスピードと、リビアが供給していた軽質原油を確保できるかといった点に疑問を呈しており、これが今回の備蓄放出の理由とされている。

JPモルガンは、「今戦略備蓄を放出すれば、消費国は生産国の増産余力をほとんど信用していないというメッセージや、OPECの短期的・長期的な価格戦略への懸念を表明することになる」とし、懸念を表している。


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