Lanxess、シンガポールでポリブタジエンゴムを生産

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Lanxess61日、新しいネオジウム触媒ポリプタジエンゴム (Nd-PBR)の立地をシンガポールに決めたと発表した。

2億ドルを投じて、ジュロン島に年産14万トンのプラントを建設する。2015年上半期の操業開始を目指す。

工場は、現在建設中で
2013年第1四半期に完成予定の年産10万トンのブチルゴム(BR)のプラントに隣接して建設される。

Nd-PBR はタイヤに使用される原料の一部で、他の多くのタイヤ用ゴムに比べ、より効率的な燃費をもたらし、タイヤ摩擦も低減する。自動車の安全性、環境保護、経済性の向上においてより重要な役割を果たす。

LanxessPCSPetrochemical Corporation of Singapore)は、原料のブタジエンをPCSからLanxessに、ゴムの副産品のラフィネートⅡをLanxessからPCSに、それぞれパイプラインで供給する覚書を締結した。

同地で建設中のブチルゴムは、イソブテンとイソプレンを共重合した合成ゴムで、高い空気不透過性を備えており、主要用途は、タイヤ用インナーライナー、インナーチューブで、特殊用途としては防護服、医薬用ゴム栓、チューインガムなどがある。

中国とインドで顕著な中産階級層での急速な自動車普及によるタイヤの需要増加に対応する。また医薬品産業で特にアジア地域で高い需要がある。

Lanxess20082月、シンガポールに年産10万トンのブチルゴム生産拠点を新設すると発表した。

当初は
2010年稼動の予定であったが、需要の減少を受け、二度にわたり、延期し、この期間を利用し、製造技術の更なる改良を行った。
その後
20105月に前倒しでの再開を決定し、20105月に着工式を行った。

Shellは、Jurong島に隣接するブコム島にある同社のコンプレックスのブタジエン抽出設備から、ブタジエン抽出後のラフィネートをパイプラインを通してLanxessに供給する。

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世界で、燃費性能、ウェットグリップ性能、騒音などの新規制に対応できる「グリーンタイヤ」の原料ゴムのニーズが増大しているが、今回のNd-PBRの新設はこれに応じるもの。

EUは2012年にタイヤの「ラベリング(表示)制度」を導入する。
タイヤの転がり抵抗(燃費)、ウエットグリップ(雨天時のスリップ防止)、騒音量の3つの性能をラベルで表示する。

消費者はラベルを確認し、環境性能に優れたタイヤを容易に選べるようになる。

また、燃費規制でCO2排出量120g/kmが導入される。(2004 年実績比で約26%の減少)
(車両・エンジンの技術改良により130g/km以下にし、
タイヤの性能などの技術改良やバイオ燃料の利用促進などで、10g/km削減し、120g/kmとする。)
但し、2012年には新車販売台数の65%、13年には同75%、14年80%とし、15年にすべての新車に対して適用する。

日本のタイヤメーカーは、2010年初頭から任意で「ラベリング制度」(※表示項目、および等級分けは欧州連合とは異なる)を導入しており、米国や韓国も同様の表示規制を現在検討している。

このため、これに適応するゴムが要請されており、Nd-PBRとSSBRを各社が競って増設している。

Nd-PBR は、他の多くのタイヤ用ゴムに比べ、より効率的な燃費をもたらし、タイヤ摩擦も低減する。

SSBR は、高性能タイヤのトレッドコンパウンドに使用され、湿潤路面でのタイヤのグリップ性能を向上する一方で、転がり抵抗を低減する。

2010/12/27 溶液重合法SBRの増設相次ぐ

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合成ゴムを最初に製造したのはBayerだが、2004年7月に合成ゴム、ゴム薬品を含む化学品・合成樹脂の一部が新会社 Lanxess として分離された。

2009/7/6 合成ゴム100

Lanxess は合成ゴムの世界トップメーカーである。(単位:千トン)

会社名 能力 製品
Lanxess 独、仏、ベルギー、米、加、ブラジル  1,413 ESBR, BR, EPM/EPDM, IIR, NBR, CR, SSBR,SBC
Goodyear   775 SSBR, BR, IR, ESBR
Kumho   743 ESBR, BR, NBR, SSBR, SBC
Polimeri 伊、英 653 EPM/EPDM, NBR, ESBR, BR, SSBR, SBC, SSBR
ExxonMobil 米、仏、英  646 EPDM, IIR
JSR  379 BR, IR, EPM/EPDM, NBR, SSBR, ESBR
日本ゼオン 日、米、英   338 ESBR, BR, IR, NBR, SSBR 
 * 資料:日本ゼオン ファクトブック 2011

同社は現在、ドイツ( Dormagen)、ブラジル(Cabo)、フランス(Port Jerome)、米国(テキサス州Orange)の工場でNd-PBRを製造している。

同社は
20103月に、上記の4拠点で2012年第1 四半期までに年間計5万トン(うちテキサスで2万トン)の追加増産を発表した。
同時に
SSBRでの手直し増強を行っている。

NKNK(Nizhnekamskneftekhim) はロシアの化学会社
Sythos S.A.はポーランドの化学会社 
KKPCは韓国のKumho Petrochemical(錦湖石化)の略称
SIBUR Group GAZPROM100%出資するロシア最大の垂直統合石油化学会社
Polimeri EuropaENI 100%
Karbochem (Pty) Ltd は南アの合成ゴムメーカー

 


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