原発の安全性基準に関する「政府統一見解」

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政府は7月11日、原子力発電所の再稼働の可否などを判断する新たな安全評価をとりまとめ、公表した。

1) 一次評価(先行実施)
   対象:定期点検中で起動準備が整った原発
   目的:再稼働の可否を判断
   内容:大規模な地震や津波など設計上の想定を超える事象に対し、
      重要な施設、機器などがどの程度の安全度を有しているかを評価

付記 一次評価の項目は以下の6項目(後の2項目を追加)
     地震、津波、全電源の喪失、原子炉の熱を逃す機能の喪失
     大地震と津波の複合事故
     シビアアクシデント対策

2) 二次評価
   対象:全原発
   目的:運転継続または中止の必要性などを判断
   内容:
欧州のストレステストの実施状況や福島原発の事故調査・検証委員会の検討状況などを踏まえ、
       今後、内容や実施時期を確定

経済産業省原子力安全・保安院は今週内にも評価項目や計画を作成し、安全委に提示する。
原発事業者による評価結果について保安院とともに、安全委も妥当性を確認する。

首相が原子力安全委員会も関与するよう指示した。
しかし、安全委は「保安院の確認行為の妥当性についての判断はするが、再稼働の可否は政府が決めること」としている。

付記
EUとの違いは、EUでは欧州委員会の1人と27か国の規制当局から6人の合計7人から成る多国籍チームがPeer reviews を行うこと。現地訪問も行う。

定期検査を終えた九州電力玄海原発などで先行実施するが、これにより再稼働は8月以降にずれ込む見通しとなった。

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玄海原発などの再稼働については政府内部で混乱した。

海江田経産相は6月18日に原発の安全宣言をし、玄海町は7月4日に運転再開を了承したが、首相は急に、「新たなルールを作って、あらためて国民が納得できる判断が出るよう指示している」と述べた。

海江田経産相は7月6日、原発の安全性確保のため、全原発を対象にストレステスト(事故・災害への耐性調査)を行うことを明らかにしたが、これが再開の条件になるのかどうかで意見が分かれたため、統一見解をまとめたもの。

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客観的にみて、福島原発の事故がありながら、6月18日に保安院が発表した「シビアアクシデントへの対応に関する措置の実施状況の確認結果について」だけで「安全宣言」をしたのはおかしいと言える。

今回の統一見解には、「保安院による安全性の確認について、理解を示す声もある一方で、疑問を呈する声も多く、国民・住民に十分な理解が得られているとは言い難い」とある。

これは「シビアアクシデントが発生した場合でも迅速に対応する観点から措置すべき事項のうち、直ちに取り組むべき措置」であり、内容は以下のものだけである。

① 中央制御室の作業環境の確保
② 緊急時における発電所構内通信手段の確保
③ 高線量対応防護服等の資機材の確保及び放射線管理のための体制の整備
水素爆発防止対策
⑤ がれき撤去用の重機の配備

河野太郎議員ブログ「ごまめの歯ぎしり」は、これらでさえ、全ての原発で対応を終えていないとしている。

有名になった
原子炉建屋に穴を開けるドリルさえも女川原発、浜岡原発では7月末完了予定であり、本格的な水素対策は今後3年かけてという原発もある。
玄海原発の場合、格納容器内に静的触媒式水素再結合装置を今後3年程度で設置するとなっている。 


もっと大きな問題がいくつも残っている。

1)外部電源

敦賀原発、伊方原発1、2号機、東通原発などは、1カ所の変電所から送電線を引くため、地震などで変電所が長期停電すると早期に復旧できない恐れがある。(原子力安全・保安院 6月9日発表)

2)電源喪失対策

安全委が1990年に定めた原発の安全設計審査指針では「長期間にわたる電源喪失は、送電線の復旧、非常用発電機の修復が期待できるため、考慮する必要はない」とされている。安全委はこれが誤りであったことを認めた。

ほとんどの原発が非常用炉心冷却装置を作動させる補助電源を持っていないとされる。

3)原子炉格納容器 MarkⅠ

国際原子力機関(IAEA)閣僚級会議に出席した海江田万里経済産業相は6月20日、ウィーンで会見し、東京電力福島第1原発1~5号機に使われている米GE開発の原子炉格納容器 MarkⅠについて、安全性の観点から、廃炉を含めた検討が今後の課題になるとの考えを示した。

MarkⅠについては1972年に米国原子力委員会の安全担当のStephen H. Hanauerが安全性の問題で廃止するよう主張している。
容量が小さいため、水素が溜り、爆発・破壊の危険があるというもの。

GEの元社員Dale G. Bridenbaughと同僚2人は、MarkⅠ型原子炉について重大な欠陥があり大規模事故につながると確信し、1975年に退職した。「設計の際に、冷却水が無くなった時の動的荷重を勘案していないのが問題」としている。(2011/3/15 米ABC News)

1980年に米原子力規制委員会が再評価した際、原子炉格納容器の圧力上昇を抑える圧力抑制プールの耐震強度が十分でない可能性を予測しながら、米国内の電力会社の意見を参考に「無視できる」と結論づけていたことが、NRCの「安全性評価報告書」で分かった。

日本の原子力安全委員会も1987年の指針で、圧力抑制プール内の地震揺動を検討項目に含めなかった。

MarkⅠはGEが1960年代に開発した。

 
福島1~5号機    福島6号機

同型炉は、米国は東部に24基、日本には10基、ほか台湾2基、スイス1基、スペイン1基がある。

日本は、廃炉が決定している福島第一の1~4号機と浜岡1~2号機のほかに、女川1号機、敦賀1号機、島根1号機、福島第一の5号機である。

敦賀市の河瀬一治市長は6月1日の定例記者会見で、運転開始後40年を超えている敦賀1号機をめぐり、福島の知見で高経年化(老朽化)などの影響があったと明らかになった場合には「早く廃炉に持っていくことも選択肢の一つ」と述べ、2016年としている運転終了の前倒しもあり得るとの考えを示した。

日本原子力発電は2002年に、敦賀1号機の運転を2010年に終了し、廃炉にすると表明したが、その後、3、4号機の建設が遅れている事情もあり、運転期間を2016年まで延長している。

なお、沸騰水型の原発で事故が起きた際、原子炉格納容器の損傷を防ぐため、容器内の圧力を外部に逃がす「耐圧強化ベント」の設備が、国内では敦賀1号機だけ設置されていないことが分かった。

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