米国、債務上限引き上げ、デフォルト回避

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8月2日の期限切れでの米国史上初のデフォルトを目前にし、米与野党指導者は7月31日夜、連邦政府の債務上限を2.1兆ドル引き上げるとともに、その条件として今後10年間で2.5兆ドルの財政赤字を削減することで合意に達した。

下院は8月1日、賛成269票、反対161票で可決した。
上院は8月2日、賛成74、反対26で可決した。

オバマ大統領は直ちに署名し、法律となり、デフォルトは寸前に回避された。

しかし、最大の焦点だった財政赤字削減の具体策は先送りされ、米国債の格下げ懸念も続く。

 

連邦政府の債務については、 1917年成立の公債法(Second Liberty Bond Act)で上限が定められている。
1917年には限度額が4000億ドルと決められたが、1962年3月以降74回、2001年以降では10回引き上げられている。

現在の上限は14.29兆ドル(約1130兆円)で、 5月に上限に達し、つなぎの資金繰り対策でしのいでいるが、8月2日までに上限が引き上げられなければ、米国は新たな借り入れができなくなり、米国債の利払いなどの資金が不足して、米国史上初のデフォルトに陥るおそれが指摘されていた。

しかし、前提となる財政赤字削減策で、民主党と共和党が争い、ぎりぎりまでもつれ込んだ。

民主党は富裕層向けの増税を主張、共和党は増税に反対、社会保障費のカットを主張した。

草の根保守派運動「Tea Party」の支持を受ける共和党議員らは上限の引き上げ自体に反対した。

共和党は半年程度の資金手当てに必要な1兆ドル規模の上限引き上げを実施した後、総額3兆ドルの赤字削減で合意すれば再度引き上げに応じる2段階方式を提案 した。
これに対し、民主党は来年末まで資金を手当てできるよう2兆7千億ドルの引き上げを行い、同額の赤字を10年間で削減する案を主張したが、共和党は「赤字削減の実現性が疑わしい」と批判した。

7月29日、下院は共和党のベイナー下院議長が提出した法案を、賛成218票、反対210票の小差で可決した。

まず9000億ドルだけ債務上限を引き上げ、2012年2月までに与野党で総額3兆ドルの赤字削減で合意すれば、更に1.6兆ドルを引き上げるもの。

法案は上院に即日送付されたが、与党民主党が賛成多数で同法案を審議しないことを決め、廃案となった。 

 

今回の合意内容は以下の通り。(細目追加

 ・今後10年間で約1兆ドルの支出を削減(先行決定)

10月1日から10年間9170億ドルの削減(初年度は210億ドル)

 ・大統領に2.1兆ドルの債務上限引き上げ権限

デフォルトを避けるため、直ちに4000億ドル
9月中に追加の5000億ドル(議決必要だが、大統領に拒否権)

12月末に予算修正案が通れば、追加の1.5兆ドル、通らなければ1.2兆ドルの引き上げ権限授与

 ・超党派の特別委員会が11月末までに1.5兆ドル規模の財政赤字の追加削減策を大統領と議会に報告    

11月23日までに1.2~1.5兆ドルの削減案決定(増税、福祉費、軍事費を含める)
議会は12月23日までに採決(修正なしで yes or no、遅延認めず) 

付記 米議会の超党派委員会が、11月23日の期限を前に、決裂した。
    民主党:2.3兆ドルの赤字削減、うち富裕層向けに1兆ドルの増税
    共和党:年金、医療保険の大幅縮減

否決の場合、10年間1.2兆ドルの予算カット条項発動(2013年1月から)
  半分は国防・安全保障費、メディケアも一部カット、
Social Security とMedicaidは除外

      12月末に予算修正案(シンボリックなもの)
     通れば、追加の1.5兆ドル、通らなければ1.2兆ドルの債務上限引き上げ権限授与

 

先行決定の1兆ドルの支出削減には、大統領が強く求めていた富裕層向けなどの増税措置は盛り込まず、基本的に歳出削減で対応する。

追加赤字削減策の対象には、
  社会保障費や高齢者医療保険への切り込み:民主党リベラル派にとり妥協の余地は少ない、
  税制改革も対象:共和党主張の「増税なき財政赤字削減」路線が覆る可能性
  軍事費削減
が含まれ、難航は必至であり、今回は単に時間稼ぎをしたに過ぎない。

また、2012会計年度の予算教書ベースでは、米財政赤字は向こう10年で累計7兆ドル超に上る見込みで、仮に2.5兆ドル規模の赤字削減が実現しても、巨額の財政赤字が残ることとなる。 

 

付記

米格付け会社Standard & Poor'sは8月5日、米長期国債の格付けを最上位の「AAA」から1段階引き下げて「AA+」に格下げしたと発表した。
米政府の債務削減計画が格付けを維持するには不十分と判断した。

さらに今後の格付けの見通しを、追加引き下げの可能性がある「Negative(弱含み)」とした。今後2年以内にさらに1段階格下げして「AA」にする可能性があるという。

日本の国債の長期国債の格付けについては、本年1月に「AA」から上から4番目の「AA-」に下げ、見通しは4月に「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。

 

  

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