中国・大連で化学工場の撤去求め デモ

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中国遼寧省大連市で8月14日、化学工場の撤去を求める市民およそ1万2,000人が市政府庁舎前に集まり、抗議を始めた。

撤去を求めているのは、大連の市街地から北東約20kmの大孤山石化産業園区の沿岸部にある大連福佳・大化石油化工有限公司の工場で、パラキシレンを生産している。(能力は年産 700千トンで、450千トンの増設計画あり) 

8月8日に台風9号中国名:梅花が接近した際、工場から約50mの距離にある防波堤が決壊した。
防波堤のすぐ近くに保管されていたパラキシレンが漏れ出す恐れが強まり、付近住民らが避難する騒ぎとなった。

大連の地元当局は9日、新華社通信などに「防波堤の修復は終わり、有毒物質は漏れなかった」と述べた。

市政府は当初、工場の移転を一つのオプションとして検討するとし、同時に有毒物質を出来るだけ早く取り除くとしていたが、夕方になり工場の即時操業停止と早期移転を決定し、抗議活動は収束した。

毎日新聞は以下の分析をしている。
経済の急成長に伴って市民の権利意識が高まる一方、浙江省温州市で先月起きた高速鉄道事故のずさんな対応などによって政府への不満がくすぶる。中国当局に、事態の長期化で批判の矛先が政府に向き、収拾がさらに難しくなるという懸念があったのは間違いない。

報道では、大連工科大学の専門家(匿名)が、国際的な規則ではパラキシレンは都市部から少なくとも100km離れて建設されることになっていると述べた。(これでは日本のコンピナートでは生産できないこととなる)
工場は大連から21kmしか離れていないため、市民に不安が広がった。

ほとんどの住民は工場で何を作っているかを知らなかったため、「危険施設がこんなに近くにあったとは」と住民らの反発は収まらず、インターネットなどでデモ呼びかけが行われた

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大連福佳・大化石油化工は大連福佳企業集団(Fujia)と大化集団(Dahua)のJV。
工場の建設に関して、疑惑が取りざたされている。

計画は2005年12月にNDRCの承認を得て、2009年5月に生産を開始した。しかし、環境部が環境インパクトの評価を行い、生産の許可を与えたのは2010年4月で、その1年近く前に生産を開始していたことになる。 

なお、同地では逸盛化学80%、大化集団20%のJVの逸盛大化石油化学が実質能力年産150万トンのPTAプラントを持っている。
同社は浙江省寧波市でPTA第3期の認可を取得、完成後は寧波で300万トン、大連を合わせ450万トンの能力となる。

2011/3/24 浙江逸盛石化、寧波でPTA第三期計画の認可を取得

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パラキシレンに関しては、2006年11月に台湾資本のDragon Group(騰龍グループ)は福建省厦門の海滄投資区で芳香族とPTAプラントの建設に着工した。PXはDragon Aromatics (Xiamen) Co.(騰龍アロマティックス)担当した

当初、コラムニストがPXプラントの危険性を問題とする記事を新聞に書いたが、市当局は関連記事の記載を禁止した。
ところが、「事故が起こると何千トンもの毒物が放出される」といった内容の記事がインターネットに次々掲載され、反対運動が広がった。

2007年12月、福建省と厦門市当局は騰龍アロマティックスの海滄投資区での芳香族計画を取り止め、これを福建省漳州市の古雷半島に移転させることを決定した。

2009年5月8日、古雷半島で2年遅れで建設が始まった。PTA(150万トン)の建設も同地で始まった。

2007/6/11 中国のインターネット反対運動が石化計画を止め 

 

中国のパラキシレンの能力及び新増設計画は以下の通り。

2009/9/30 中国でパラキシレン能力が需要を上回る 


大連福佳・大化石油化工の工場の安全対策がどうなっているのか不明だが、都市部から100km離れるのが国際的な基準などという誤ったコメントが新聞に載り、厦門市や大連市のように反対運動で当局が移転を決めたことが前例となり、他の工場にもこの動きが広がると大変なこととなる。


付記

コメントをいただいた、近くの北良港の穀物サイロです。

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コメント(2)

初めまして。いつも読ませていただいています。
今回の件ですが、グーグルアースで見ますとパラキシレン工場の西北約4㎞のところに大規模な穀物サイロ群があります。
ここまで大規模な穀物サイロは少なくとも私は中国国内では見たことがありません。
万が一そこが汚染されると、中国の食糧供給に支障が生じる可能性もあるのではないでしょうか。

パラキシレン工場の東北ですね。

調べてみますと、北良港のサイロで、世界最大の穀物積み出し,受け入れ能力(サイロ等で150万トンの貯蔵能力)ということです。
東北地区のとうもろこしを積み出し,外部から大豆と小麦を受け入れるもの。

日清オイリオ子会社の大連日清製油有限公司がそこから直接大豆を受け入れて、近くで大豆サラダ油、精製油、大豆ミールを生産しているそうです。

北良地区は、中国東北地方最大の食糧基地であり、国内輸送の重要な拠点であるだけでなく、パナマックス本船も複数接岸可能なアジアでも屈指の食糧輸出入・総合物流拠点として位置付けられているとのことです。

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