EU 金融危機

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2010年にギリシャ危機の原因とEU緊急首脳会議によるギリシャ(第一次)支援策について述べた。
EU・ユー口圏首脳会議では欧州金融安定化メカニズム(European Stabilization Mechanism)、欧州金融安定基金
European Financial Stability Facility:EFSF)の設立も決まった。

2010/5/10  統一通貨ユーロの危機

事態はその後、混迷を深めた。

ユーロ圏の債務危機リスクの再燃でアイルランド、ポルトガルなどの国債のデフォルト(債務不履行)保証コストが上昇、EFSFなどは2010年11月にはアイルランド、2011年5月にはポルトガルへの支援を行った。

2011年7月にはギリシャへ第二次金融支援が決まった。1090億ユーロの公的支援に加え、民間金融機関もギリシャの新旧の国債交換、国債の再投資を通じ、損失(21%)を負担した。

しかし、支援の条件となったギリシャの改革は国民の反対を受け、進まない。

10月に入り、2011年7月に欧州銀行ストレステスト(健全性審査)に合格したばかりのフランス・ベルギー系大手銀行 Dexia がギリシャやイタリアの国債を大量に保有することから、資金の調達が出来ず、あっけなく破綻、欧州ソブリン債への積極投資で痛手を受けた米国のMFGlobal HoldingsmもChapter 11を申請した。

2009/10 ギリシャの財政赤字粉飾が表面化
2010/5 ギリシャに対する支援策(2010~2012年で1,100億ユーロの協調融資)
欧州金融安定化メカニズム(European Stabilization Mechanism)創設
 EFSF 最大4400億ユーロ
 IMF 2500億ユーロ
 欧州委員会が発行する債券 600億ユーロ  「欧州金融安定化メカニズム」(EFSM)
 最大合計 7500億ユーロ
2010/11 アイルランド支援(850億ユーロ)
2011/5 ポルトガル支援(780億ユーロ)
2011/6 EFSF拡充決定(2011/10 最後のスロバキアが一旦反対した後、賛成し、成立)
2011/7 ギリシャ向け第二次金融支援
 公的支援 1090億ユーロ、民間金融機関による支援 370億ユーロ(21%の損失負担)
2011/10 フランス・ベルギー系大手銀行 Dexia 解体決定
米国 MF Global Holdings、Chapter 11申請

 

ギリシャの破綻が他のPIIGS諸国(ポルトガル、イタリア、アイルランド、スペイン)に波及してEU全体、更には世界の金融に悪影響を与えることが懸念された。

ギリシャの政府債務は過去にデフォルトしたロシアやアルゼンチンに比べ、はるかに大きく、両国はその後、資源価格の上昇で経済は回復したが、ギリシャの場合は資源も大きな産業もない。

ギリシャと同様に政府債務のGDP比率が高いイタリアの場合は更に影響が大きくなる。 

1998 ロシア デフォルト総額
   727億ドル
石油、天然ガス価格アップで回復
2001 アルゼンチン デフォルト総額
   823億ドル
穀物価格アップで回復
今回 ギリシャ 政府債務
  4,822億ドル 
うち国債残高   資源なし
 3,838億ドル
イタリア 政府債務
    3兆ドル
 
 

危機に対応するため、EUは6月にEFSFの拡充を決定した。これは加盟国全部の承認を得ることが必要だが、最後のスロバキアが10月に一旦は反対を決め、その後賛成し、成立した。
(自国よりも恵まれているギリシャ救済のために資金を出すことに抵抗を示した。)

2010年5月に設立されたEFSF はユーロ圏各国の政府保証を受けて4400億ユーロの債券発行が可能だが、最上級の格付けを維持するためには、そのうち格付けが最上級(AAA)の6か国の2550億ユーロしか貸し出すことができない。

今回、融資可能金額を引き上げることを目的に、ユーロ圏各国が政府保証をつける金額を7800 億ユーロに引き上げることとした。(結果、6か国の合計は4515億ユーロとなった。なお、総額から既に支援を受けているギリシャ、アイルランド、ポルトガル分を除外すると726,000百万ユーロとなる) 

各国が負担する保証負担額は以下のとおり。(100万ユーロ)

  保証負担額 拡大後
オーストリア 12,241    21,639
フィンランド 7,905 13,974
フランス 89,657 158,488
ドイツ 119,390 211,046
ルクセンブルグ 1,101 1,947
オランダ 25,144 44,446
AAA格付 6か国
  合計
255,439 451,540
その他 184,561 328,243
合計 440,000 779,783

フランスが自国の格付けダウンを恐れるのは、債券発行限度が減少するため。

10月に入り、上記のEFSF拡充が全加盟国で承認されたのを受け、EUは10月27日未明、欧州債務危機克服に向けた「包括戦略」で合意した。

「包括戦略」内容:

EFSF強化 一部損失補てんの債務保証
特別目的会社(SPC)活用

AAA格付け6か国分は4500億ユーロあるが、EFSFはすでに欧州の銀行の資本増強向けに最高1000億ユーロを、またギリシャ、アイルランド、ポルトガル向け支援に約1000億ユーロを充てることにしている。

残りのうち2000億ユーロ程度を元手に、IMFや政府系ファンド(SWF)、民間投資家などに投資要請し、実質1兆ユーロ規模に拡大 する。

資金ソースにより、低リスク低リターン、中リスク中リターン、高リスクに分けて使用する。

ギリシャ問題 民間銀行によるギリシャ債務の損失負担は7月時点の21%から50%に
(新旧の国債交換、国債の再投資を通じギリシャ国債の元本を削減)
ギリシャ債務残高は2020年にGDP比120%に削減へ
(当初案なら150%で高止まり)
ギリシャの財務状況を常時監視
ギリシャに下記の改革を求める。
 ・女性年金支給開始 60歳→65歳
 ・一定額以上の受給者への支給額減額
 ・公務員3万人の削減、給与カットも
 ・民間企業の賃下げのための規制緩和
 ・保有不動産からの利益に対する課税の導入
 ・付加価値税 21%→23%(実施済み)
 ・ガス(DEPA)、通信(OTE)など国営企業の民営化
 ・公共事業の凍結、削減(2011年度は前年比3.3%減)
 ・軍事費の大幅削減
欧州銀行の資本増強 民間銀行によるギリシャ債務の損失負担は7月時点の21%から50%に
銀行資産を狭義の中核的自己資本の比率で9%を基準に再評価、来年6月までに資本増強
試算では資本増強に1064億ユーロ(約11兆円)が必要
今後の危機対応 EUの基本条約「リスボン条約」の改正を検討、
財政・経済統合案を12月に中間報告、来年3月に最終報告
ユー口圏は(各国財政の点検のため)少なくとも年2回の首脳会議を開催
イタリアに対し財政健全化のための構造改革求める
同国は13年までに財政均衡、26年までに年金支給開始年齢引き上げを公約

 

しかし、ギリシャ国民は前提条件の改革案に反発、ストが相次いだ。

ギリシャのパパンドレウ首相は10月31日、ユーロ圏各国がまとめた支援策を受け入れるかについて、国民投票を行う意向を表明した。

国民投票で受け入れ反対が多数を占めれば、国家破綻(デフォルト)や、ユーロ圏からの離脱の可能性も出てくるため、ギリシャ国内外で大問題となった。

最終的にEUとの協議の後、首相は11月3日、緊急閣議を開き、国民投票を撤回する意向を明らかにし、ギリシャは「包括戦略」を受け入る方向となった。

 G20首脳会議は11月4日、以下の内容の首脳宣言を採択した。

欧州危機で金融市場の緊張が高まり、新興国経済に成長鈍化の兆し

・世界経済が直面する喫緊の課題に協調して行動

・EUが合意したギリシャの債務削減などの包括対策の速やかな実施を要請

・イタリアが財政健全化に向けてIMFの監視を受け入れたことを歓迎

・通貨安競争の回避に向け、市場で決定される為替制度への迅速な移行を確認

・IMFの資金基盤強化の検討を各国財務相に指示

・行動計画で、日本は2010年代半ばまでに消費税率を10%に引き上げると明記

ーーー

とりあえず前向きに進み出したが、ギリシャの改革案が予定通り行われる保証はなく、財政赤字の抑制が出来るかどうか、不明である。 (おそらく出来ないだろう。)

欧州の金融機関はギリシャ国債の50%カットの穴埋めとして資本増強が必要だが、貸しはがしなどで信用収縮が拡大、景気に悪影響を与える可能性がある。

EFSFの資本増強のため、EUは中国などに資金提供を求めているが、進展はない。 

中国は受諾するとしても、人民元切り上げ問題や市場経済国待遇問題を条件にすると思われる。
 (人民元切り上げ問題は米国が了承する筈がない。)

イタリアやスペインに飛び火した場合、EFSFも資金不足となる。 

ギリシャの次はイタリアとの見方が強く、イタリア国債は既に市場の狙い撃ちに遭っている。
4%台後半であった10年物国債の利回りは6%以上となっている。

IMFはイタリアに440億ユーロの支援を提案したが、首相が拒否、最終的に3か月ごとに財政状況を審査し、計画の遅れがあれば勧告するシステムを呑ませた。

イタリアの付加価値税は20%から21%に引き上げられたが、増税は一部にとどまり、年金受給開始時期のの67歳への引き上げも妥結しておらず、改革は進んでいない。

IMFの支援は拒否したが、IMFの監視を受け入れたことは、イタリアが危機に面していることを明確にしたこととなる。
 

そもそも、余りにも国力が違う国々が単一通貨ユーロを採用し、危機時に通貨切り下げも金利引下げも出来ないというのは無理がある。

欧州統合に懐疑的なチェコのクラウス大統領は、「ギリシャ危機は通貨を4割り引き下げれば解決する」と述べ、危機の原因は自国通貨の切り下げができないユーロの仕組みにあると指摘したとされる。

これまでに、単一通貨ユーロを、第一ユーロと第二ユーロに分けるという案や、弱い国を切り離すと案が取りざたされていた。(逆に、ドイツの離脱によるユーロ崩壊も市場でささやかれていた。)

しかし、仮にこの時点でギリシャがユーロから離脱したとしても、デフォルトは必至であり、問題解決にはならない。
ユーロ圏EUが抱え込んでいくしかない。
 

今後も世界的な金融危機に波及するおそれは続く。

 

 

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