韓国、韓米FTA批准案を強行可決

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韓国与党ハンナラ党は11月22日、国会で韓米FTA批准案を強行可決した。本会議場では、これを阻止しようとする野党の議員が催涙弾を投げるなど一時大混乱に陥った。

米国側は10月12日に議会が可決している

李明博大統領は29日にも批准案に署名する方針で、関係閣僚会議で来年1月1日の発効を目指す準備の徹底を指示した。
野党は強行採決に猛反発し、予算案の審議拒否など対決姿勢を強めている。

政府側は米韓FTAによる農業分野などの被害対策の再点検に乗り出し、反対派への配慮を示す。

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韓米FTA交渉は2007年4月2日に妥結した。最後まで争点となった牛肉を含む農業と自動車分野でも合意した。
なお、コメについては対象外となっている。(現在も)

2007/4/4 米韓FTA妥結 

しかし、自動車関連などで米国内の反対が強く、批准されないままとなっていた。

2010年7月の韓国・EUのFTA妥結を受け、米国でもムードが変わり、争点を話し合うための通産相会議が11月に行われたが、自動車と牛肉問題で合意に達せず、決裂した。

両国は
・米国の韓国産自動車関税撤廃期間の延長
・自動車セーフガード
・自動車部品関税払い戻し上限制の導入
・韓国の米国産自動車安全基準自己認証の拡大--などをめぐり、かけ引きを行ってきた。

また米国は、
米国産牛肉の輸入範囲を「生後30ヶ月以上」にも拡大すること、検疫条件を緩和することを要求した。

2010/11/12 米韓FTA協議、決裂 

李大統領は交渉は決裂していないと強調、オバマ大統領もと早期の最終決着を目指す意向を表明した。

最終的に、米国は牛肉問題はFTAと別の問題とする韓国の主張を受け入れ、その代わり、韓国は自動車で大きな妥協を行い、2010年12月3日に交渉が妥結した。

韓国は米国での韓国製自動車の関税撤廃ペースを遅らせ、非関税障壁とされた安全基準、燃費基準でも妥協した。
韓国内の反発に対応して、韓国政府は韓国側が得た成果を強調した。

2010/12/4 韓米自由貿易協定(FTA)追加交渉が妥結

米上下両院は2011年10月12日、韓国とのFTAの実施法案を賛成多数で可決した。

2011/10/14 米議会、韓米自由貿易協定を可決 

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韓国では農業団体などは当初から強硬に反対していたが、韓国野党は、追加交渉で利益の均衡が崩れたとして反対している

特に、野党や一部市民団体は「ISD条項」が、韓国の国益を著しく損ねるとして批判している。(末尾の付記参照)

ISD(Investor State Dispute Settlement:投資家対国家紛争仲裁制度)は、投資家が相手国政府の政策により被害を受けた際、当該政府を国際投資紛争センターに提訴できる制度。

野党などは、同センターが世界銀行のもとで設置され、米国の影響が強いなどとして「韓国には一方的に不利な条項」と批判している。

付記 本条項は最初から入っていた。

李明博大統領は11月15日、行事以外では就任以来初めて韓国の国会を訪問した。
与野党の代表との会談で大統領は、ISD条項について、「国会が米韓FTAを批准したら、3カ月以内に米政府にこの条項の改定について米国と交渉する」と約束した。

韓国紙は、問題は「米韓FTA」が政治問題化してしまったことだとしている。

韓国では2012年春に総選挙、12月に大統領選挙が実施される。
2つの選挙が同じ年に実施されるのは20年に1度のことで、与野党間の対立が激しくなっている。

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韓米FTAでは、市場開放による打撃を受けるのは農漁業と製薬業とされる。

農林水産食品部は、韓米FTAの発効により、農業被害が15年間で約8200億円、水産業への被害は約300億円と推定する。
農業で被害が最も大きいのは畜産業で、15年間に約4900億円で、韓牛(韓国在来種の肉牛)の生産が大きく減少する見通し。
コメについては対象外となっている。 

 

韓国政府は農漁業への被害を軽減するため、2010年8月に農漁業分野に約1兆4800億円を投入すると発表した。国会の韓米FTA批准案の審議の過程で、与野党が対策の強化で合意しており、関連予算はさらに膨らむ見通し。

韓国政府はまた、農漁業従事者に対する被害補填給付金の給付基準を緩和した。
今後は農作物価格が平均価格の85%程度に下落すれば、給付金を支給する。

畜産業を発展させるためには、10年間で約1700億円規模の畜産業発展基金を創設する。

製薬業界が懸念するのは「医薬品許可・特許連係制度」の導入で、多国籍製薬会社が韓国の製薬会社の後発医薬品や改良新薬をめぐり、特許侵害訴訟を起こせば、直ちに許可手続きを中断しなければならない。
このため、韓国の製薬会社は後発医薬品、改良新薬の製造が難しくなる。

逆に、自動車部品に対する関税(米国で最大4%)が即時撤廃され、米自動車メーカーに対する輸出が増えると期待される。
自動車と関連部品の輸出増大効果は年間約7億2000万ドル前後と予想される。

繊維業界は平均13.1%の米国側の輸入関税廃止で、中国、インドに比べ、価格競争力が大きく改善すると期待される。

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韓国はTPP交渉国のほとんどとFTAを締結済または交渉中で、現在のところ、TPPへの参加の意向はない。

  締結済み:EU、欧州自由貿易連合(EFTA)、ASEAN10ヵ国、シンガポール、インド、米国、チリ、ペルー

  交渉中:カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド、GCC(湾岸協力会議)、コロンビア、トルコ

なお、日本と韓国との交渉は7年前から中断している。 

韓国は中国とのFTA交渉を進める方針。

 

付記

11月25日付の河野太郎ブログはISD条項について述べている。

この条項は、海外に投資している日本企業の利益を守るのに役立つので、1978年の日本エジプト投資協定以降に結ばれた25本の投資協定では、日本フィリピンEPAを除き、全てにおいて投資家対国家の紛争手続(ISDS)規定が含まれている。

現実に、日本政府が訴えられたことはなく、日本企業が外国政府を訴えたことはある。

NAFTAでのメキシコ政府が訴えられた例は、メキシコ政府が外資企業を差別的に取り扱ったケースであり、カナダの例も、規制が外国企業に一方的に負担を強いるものであっただけでなく、カナダ連邦政府の規制そのものが国内の手続違反だとして連邦政府が州政府に訴えられて敗訴している。

ISDS条項は、日本がTPP交渉に参加することを妨げるものではまったくない。

 

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