オリンパス事件の怪

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10月14日のMichael Woodward社長解任、その後の同氏による問題指摘に端を発したオリンパス事件は、11月8日に会社側が事実を認め、過去の損失先送りの穴埋め策であったことが明らかになった。

事実関係は以下の通り。

1)Gyrus社買収   

買収額  935百万ポンド(約2,117億円)

ファイナンシャルアドバイザーへのフィー
 (日本の証券会社出身者が代表を務める米国のAXESとケイマン諸島のAXAMインベストメント)

基本報酬   500万ドル 2006/6
成功報酬
 買収金額の5%
現金15%
 (上限1200万ドル)
1200万ドル 2007/11
株式オプション85%   優先株発行
ワラント付与
 →買取

5000万ドル

2008/9
優先株買い取り
(再上場断念により
 買取請求を受ける)
オプション分 1億7700万ドル 2008/9
優先株値上り分 4億4300万ドル 2010/3
 「価値上昇」
 「第三者への売却阻止」
合計 6億2000万ドル  
総合計 6億8700万ドル  

Gyrusの元最高幹部は、「AXESやAXAMという名前は聞いたこともなく驚きだ。オリンパスのアドバイザーとは接触したことも、電話を受けたこともない」と証言している。

 

2)子会社買収

いずれも2006年に40%を買収し、2008年4月に追加買収で100%とした。
 (オリンパスと関係の深い経営コンサルタント会社から買収)
 

 半年後の2009年3月に減損処理した。

社名 事業 買収金額 減損処理
アルティス 環境ソリューション  28,812百万円  19,614百万円
NEWS CHEF フードキット 21,408百万円 17,699百万円
ヒューマラボ 健康食品・化粧品販売 23,199百万円 18,370百万円
合計   73,419百万円 55,683百万円

3) 含み損  1千数百億円とされる。 

バブル時の財テク失敗による金融商品の含み損は1990年代に1千数百億円あり、「飛ばし」で社外に移した。
2000年頃には相場の回復で含み損は500億円程度に減ったが、処理を先送りした結果、再び1千数百億円になった。

 

不思議なのは、Gyrus社買収での多額のフィーの支払いや国内3社の買収と直後の減損処理等について、全国紙が報道したのはWoodward社長の問題指摘(および同氏が英米の監督官庁に資料を渡したとの報道)があってからである。
 

しかし、この問題は元日本経済新聞の論説委員兼編集委員で、月刊誌「選択」編集長もしていた阿部重夫氏が発行する月刊誌FACTAが早くに取り上げている。

7月15日のFACTA Online「オリンパスへの公開質問状と宣戦布告」では、3子会社の買収金額と直後の減損処理、ジャイラスの買収での優先株などについてオリンパスに質問している。(同社への質問がゼロ回答のため、公開した。)

FACTAの8月号は「オリンパス 『無謀M&A』 巨額損失の怪」を掲載、詳細に問題点を示した。

問題の3子会社は「オリンパスと関係の深い経営コンサルタント会社が05年ごろに休眠会社を業態転換させて活動を再開させたり、新規に立ち上げたりして、08年にオリンパスに売却した」としている。

ジャイラスについては、「製造業でありながら、総資産の半分以上をのれん代(買収された企業の時価評価純資産と買収価額との差額)が占め」、「株式市場は『買収価格は株価に40%ものプレミアムを上乗せしていて割高な買収』と冷ややかな目で見ていた。にもかかわらず、10年3月期にはさらに599億円出して優先株まで買い取った。この優先株取得についても、いったい誰から取得したのか不明で、『情報開示の面で大きな問題』と指摘するアナリストもいる。」

更に「コンサル会社との怪しい関係」について説明している。

Woodward氏は次のように述べている。

すべては、雑誌「ファクタ」8月号に載った記事が始まりだ。あれがなければ、私は今でも何も知らないまま社長を続けていただろう。

今回明らかになった過去の損失先送りについては10月24日のFACTA Online 「野村の元オリンパス担当、S氏の独り言」が、「闇株新聞」なるブログを紹介し、次のように述べている。

S氏は、90年代にはじけたバブルの損失の後処理をオリンパスがしていなかったとしており、それが雪だるま式に膨らんで、この巨額の背任M&Aにいたったと書いていますが、これはFACTAの見立てとほぼ一致している。

バブル期の1980年代から延々と、トップ主導で、財務担当役員やごく一部の財務担当者の間でひそかに「処理」され続けてきた。
これらの「損失先送り」などの処理も、ごく少数の「長い付き合い」の外部の人間にだけ相談されていたのです。

* 10月23日のNew York Times はファイナンシャルアドバイザー2名の名前を挙げている。

ーーー

何よりも、損失隠しが20年間も続いていたのに、取締役会も監査法人も問題視しなかったのは不思議である。

また、3子会社の買収価格の異常さやGyrus買収の際のフィーの異常さについて問題視しなかったことも同様である。

アナリストや経済紙がこれまで問題視しなかったのも不思議だし、FACTAが取り上げて以降も最近まで、各紙がこれを取り上げなかったのも不思議である。

 

付記

朝日新聞によると、オリンパスはあずさ監査法人から不正があると指摘され、直後に解約していた。

あずさ監査法人は2009年に、オリンパスがジャイラスを買収したときに支払った助言会社への報酬の大きさを不審に思い、理由や決算への反映の仕方でオリンパス側と意見が対立した。

また、ベンチャー3社買収で、3社にはそれだけの価値はないと指摘し、買収額と実際の企業価値の差額を損失計上するよう要求、オリンパスは2009年3月期決算で、あずさ監査法人の指摘を反映する形で損失を計上した。

監査法人は2010年3月期からは新日本監査法人に変更された。 

(含み損失隠しについては監査法人は見抜けなかったのであろうか?)

 

付記

警視庁はオリンパスに経理資料の提出を求めるなど、捜査に向けた情報収集を開始した。
証券取引等監視委員会も、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)に当たる可能性があるため、すでに調査を始めている。
 

 

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