三菱商事、チリの銅鉱山・製錬所運営会社に出資

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三菱商事は11月10日、英国のAnglo American plc から同社が100%保有するチリの銅資産権益を保有するAnglo American Sur S.Aの株式24.5%を53.9億米ドルで買収すると発表した。 

Anglo American から打診を受けたものとされるが、Anglo American は別途、チリの国営資源大手チリ銅公団(CODELCO:Corporacion Nacional del Cobre de Chile)に株式の49%購入のオプションを与えており、三井物産がこの資金を供給する契約を締結している。今後、紛争を引き起こす可能性がある。(後述)

Anglo American Surは、チリ国内にLos Bronces銅鉱山、El Soldado銅鉱山、Chagres銅製錬所、並びに大型の未開発鉱区などの優良資産を保有する。
現在の銅の生産量は年間約26万トンで、Los Bronces銅鉱山の拡張後(2012年フル操業)は合計生産量は年間約44万トンとなる。

Los Bronces銅鉱山:現在生産量 22万トン2012年 40万トン
   近隣にLos Sulfatos鉱区及びSan Enrique Monolitoト鉱区の有望未開発鉱区が存在

El Soldado銅鉱山:生産量 4万トン

Chagres銅製錬所:年間約14万トンの銅アノードを生産

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チリ銅公団(CODELCO)によると、同公団はAnglo American Surの株式の49%を取得する権利を有しており、そのために三井物産との間で短期つなぎ融資の契約を締結した。

三井物産の発表(10月12日)によると、三井物産はCODELCOとの間で、CODELCOによるAnglo American Surの最大49%の株式取得資金に関し、67.5億米ドルを上限とする短期つなぎ融資契約を締結した。

また、CODELCOが取得したAnglo American Sur 株式の半分を譲渡することによって返済する権利を借主に与える契約も締結した。

さらに、両社の多面的な関係を構築する一環として、両社は下記の銅売買契約を締結した。

銅売買契約
(1)期間   10年間 (2012年~2021年)
(2)年間平均買取数量   銅精鉱 65,000 DMT
銅地金 12,000 MT
合計  30,000 MT(銅地金換算)
(3)買取価格   市場価格及び市場取引条件により決定


Anglo Americanは
今回の売却に当たり、CODELCOへの売却はAnglo Americanの持分の49%であり、三菱商事への売却部分は除かれるとしている。

これに対しCODELCOは株式取得の権利を確保するための法的措置を模索しているとし、「われわれの権利は明確だ。49%の株式を取得する」と主張した。
そのうえで、
CODELCOの株式取得権利を侵害しない限り、Anglo Americanが残りの株式を売却するのは自由だ、と語った。 

付記

サンティアゴの裁判所は11月15日、CODELCOの求めに応じ、Anglo American に対し、Anglo American Surの株式の追加売却を禁じる命令を下した。三菱商事が取得した株式には影響しない。 

2012年1月2日、CODELCOはAnglo American Surに対し、49%の株式を取得する権利を行使すると発表した。株式取得のため「あらゆる手段を講じる」としている。
Anglo Americanは月末までに回答する方針。

 

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三菱商事は他に、チリ国で以下の権益を保有している。

1)Escondida 銅鉱山プロジェクト(8.25%)   

チリ北部にある世界最大の銅鉱山で、2009年の年間銅生産量は約110万トン。
日本側3社は二回にわたりIFCから権利を取得した。

各社の権益比率は以下の通り。(%)

  当初 1988 2010/6
BHP Billiton 57.50 57.50 57.50
Rio Tinto 30.00 30.00 30.00
International Finance
 Corporation (IFC)
12.50 2.50 -
三菱商事 -  7.00 8.25
三菱マテリアル -  1.00 1.25
日鉱金属 -  2.00 3.00
合計 100.00 100.00 100.00

2)Los Pelambres銅鉱山プロジェクト(5%)

露天堀の銅鉱山としてはチリ国内最大級の生産規模を持つ銅鉱山。チリの首都Santiagの北約200kmの位置にある。銅の副産物としてモリブデンも採掘される。

英国Antofagasta PLC(事業はチリ主体)が所有しており、日本側は1997年5月に同社から取得した。
このプロジェクトには日本輸出入銀行が多額の融資を行っている。

2009年の生産量は銅量で323千トン。

各社の権益比率は以下の通り。(%)

Antofagasta PLC   60.00
Nippom LP
 Resources
日鉱金属 15.00
三井物産 1.25
丸紅 8.75
MMLP
 Holding
三菱マテリアル 10.00
三菱商事 5.00
合計 100.00

3)鉄鉱石生産販売会社 Compañía Minera del Pacifico(CMP)(25%)

チリに本社を置く同国内最大の鉄鉱石生産企業で、チリの年間鉄鉱石生産量のほとんどを占める。
チリの資源大手
CAP(旧Compañía de Acero del Pacífico S.A. de Inversiones)が所有していたが、2010年に三菱商事が株式の25%を取得した。

取引は2つに分かれる。
・三菱商事とチリの鉄鉱石生産会社
Compania Minera del PacificoのJVのCompañia Minera HuascoがLos Colorados鉄鉱山を運営していたが、JVの50%持分と交換にCMPの15.9%を取得
・三菱商事は401百万ドルの増資に応じ、合計25%とする。
・三菱商事の取得価額は合わせて924百万ドルとなる。

 

参考 最近、商社が相次いで資源への投資を行っている。 

2011/5/21 住友金属鉱山、チリの銅鉱山開発に参加 (住友金属鉱山と住友商事)

2011/11/3  丸紅と三菱商事、石炭事業を拡大  丸紅(カナダ)、三菱商事(豪州クイーンズランド州)

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2011/6 伊藤忠、コロンビアの炭鉱に出資

伊藤忠は米国Drummond Company との間で、同社グループが100%保有しているコロンビアで操業中の炭鉱及び輸送インフラ資産に20%出資する契約を締結したと発表した。

約15.235億米ドル(約1,265億円)で取得すると共に、同炭鉱から産出される一般炭の日本向け独占販売権を獲得する

炭鉱は露天掘りで埋蔵量は19億トン、生産数量は25百万トン/年。
インフラは40.96%出資の鉄道会社と100%保有の貨車及び専用積出港。

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