ミヨシ油脂は2月13日、同社のピペラジンジチオカルバミン酸系飛灰用重金属固定化処理剤で東ソーから提訴されていた特許権侵害訴訟に関し、最高裁への上告を取下げ、ミヨシ油脂側の特許権侵害を認めた2011年12月の知財高裁判決に従って対象製品の製造・販売停止や損害賠償などに応ずることを発表した。
同社は、ピペラジン系飛灰用重金属固定化処理剤を名古屋工場で製造し、商品名「エポルバ」シリーズとして、ごみ焼却灰に含まれる重金属処理向けに販売してきた。
自治体が建設したゴミ焼却施設で発生するダスト(飛灰)は、集塵機(バグフィルター)で集められるが、非常に細かく、このままでは処分できないので、 重金属を混練機で「高分子系液体キレート」のエポルバと練り込んで固定化し、処分する。
雨で重金属が溶け出さない効果に、高い評価を得ている。
東ソーは、2007年1月、ミヨシ油脂の製品が、自社の特許第3391173号「飛灰中の重金属固定化方法及び重金属固定化処理剤」を侵害しているとして、対象製品の製造差止めと約27億円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
ミヨシ油脂は、「同特許は出願時点での先行特許・技術と同じで、無効」などと主張したが、東京地裁は2010年11月18日、「先行特許・技術と同一とはいえず、特許は有効」と判断し、東ソー勝訴の判決を下した。
ミヨシ油脂による対象製品の製造販売の禁止
対象製品の廃棄
損害賠償金1,191百万円(+遅延利息)の支払い
これに対し、双方が控訴したが、知的財産高等裁判所は2011年12月22日、東ソー勝訴の判決を下した。
ミヨシ油脂による対象製品の製造販売の禁止
対象製品の廃棄
損害賠償金1,800百万円(+遅延利息)の支払い専門家によると、控訴審で損害賠償金が増額となるのは珍しいとのこと。
対象製品の製造販売の禁止、対象製品の廃棄も認められ、「近時にない、教科書的勝利」とされる。
ミヨシ油脂はこれを不服として、2011年12月26日、最高裁に上告したと発表した。
しかしミヨシ油脂は今回、訴訟継続による経営への影響を熟慮し、当該事業の一刻も早い立て直しが急務であるとの結論に達したとし、上告を取り下げ、対象製品の製造・販売停止や損害賠償などに応ずると発表した。
弁護士らと協議した結果これ以上正当性を主張することは難しいと判断した。
同社はまた、特許権侵害訴訟に対する経営責任の明確化と、新しい経営体制のもとでの業績回復と社業の発展のため、会長と社長の交代を発表した。
ミヨシ油脂は今後、同処理剤の事業化から手を引く。
但し、対象品目が「飛灰用処理剤」のため、水処理用など対象以外の商品は、引き続き製造販売していく方針。
同社は飛灰用のエボルバのほか、以下の製品を扱っている。
「エポラス」
水の浄化などに使われているイオン交換樹脂
水銀専用キレート樹脂、一般重金属用キレート樹脂など「エポフロック」
分子タイプの液体重金属捕集剤で、メッキ工場や金属加工工場などの排水に含まれる重金属類を捕捉「エポアース」
高性能な土壌用高分子重金属固定剤
東ソーは2月16日、業績予想の修正を発表した。損害賠償金18億円を特別利益に計上、純損益を11億円上方修正した。
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