欧州金融危機への今後の対応

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EU首脳会議は2012年3月2日、財政規律の強化に向けた新条約に各国が署名し、閉幕した。

欧州債務危機対策の一環としての金融安全網の再強化については、ドイツの慎重論に配慮し、3月末までに結論を出すことで合意した。

会議ではセルビアをEU加盟候補国にすることを承認した。

セルビアはコソボとの関係正常化交渉を再三中断してきたことなどから、ドイツが反対していた。
コソボとの間で国境管理措置などで合意したのを受け、承認した。

他のEU加盟候補は、トルコ、マケドニア、アイスランド、モンテネグロの4カ国。
正式加盟には、それぞれ問題を抱える。

なお、クロアチアが2013年7月にEUに加盟し、加盟国は28か国となる。

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(財政規律の強化に向けた新条約)

新条約は、各国に対し、景気の変動などの要因を除く財政赤字の大きさについて、GDP比で0.5%以下に抑えることを憲法や基本法などで定めるよう求める内容で、EU27か国のうち、英国とチェコを除く25か国が署名した。

英国は2011年12月のEU首脳会議で署名に拒否権を行使し、同条約に署名しない方針を示した。

チェコのネチャス首相は2012年1月のEU首脳会議で、財政統合を目指す新条約の調印に参加しない意向を明らかにした。(チェコの連立政権内にはこれに反対する意見があり、連立維持が危うくなっている。)

各国は今後、批准手続きに入り、2013年1月の新条約発効を目指す。ユーロ圏17か国のうち12か国の批准が発効の条件となる。

加盟国が新条約を批准しない場合、7月に欧州金融安定基金(EFSF)から引き継いで新設する欧州安定メカニズム(ESM)から支援を受けられない。

アイルランドでは、憲法を改正する必要があるため、国民投票を実施する。

付記

アイルランドの国民投票が6月1日開票され、賛成60.29%で批准が決まった。投票率は50.6%だった。

アイルランドは「財政再建の優等生」とされてきたものの、国民には増税や福祉手当のカットへの不満が強く、「反緊縮」ムードも漂っていた。

付記

独議会は6月29日、欧州の新たな財政ルールを定めた財政協定と共にESMを圧倒的多数で承認した。
ただ、その直後に反対する学者や議員、一般国民が憲法裁判所に不服を申し立てた。

ドイツの憲法裁判所は7月10日、この問題で、審理に応じることを決めた。しかし、判断を下す日程については明らかにしていない。
ガウク大統領は、憲法裁判所が承認するまで署名しない方針を示しており、批准が遅れている。

スペイン首相はこの日、EUの財政規律に反発する形で2012年の財政赤字目標を緩和し、先にEUと合意したGDP比4.4%ではなく、5.8%に設定したことを明らかにした。

ファンロンパイEU大統領は「信頼性の観点から財政目標は堅持されねばならない。そうでないなら、金融市場による懲罰が待っている」と指摘した。

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(金融安全網の再強化)

2011年7月の恒久的支援組織の欧州金融安定化メカニズム (ESM)発足を前に、金融安全網の再強化を行うもの。

基本構想は以下の通りで、IMF資金枠を合わせ、1兆9000億ドルを準備する。
本来、この会議で決定する予定であったが、ドイツの慎重論に配慮し、決定を3月末まで延ばした。 

  2012年7月ESM発足以降
当初案 目標
欧州基金 ESM   5000億ユーロ 統合、上限撤廃
    7500億ユーロ
     (約1兆ドル)
EFSF残 打ち切り 
    (2500億ユーロ)
IMF資金枠 現行   約 4000億ドル     +5000億ドル
 (うちEU 2600億ドル)
合計       1兆9000億ドル

 

これまでの経緯は以下の通り。

1)欧州基金

ユーロ圏16カ国は2010年5月、緊急支援の基金で3年間の時限措置の欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の設立と、これを引き継ぐ恒久的支援組織の欧州金融安定化メカニズム (ESM)の2013年7月設立を決めた。

EFSFは各国政府による保証を基に市場から資金を調達し、支援を必要とする国に融資を行う。

2011年6月にEFSFの拡充を決定(2011年10月に最後のスロバキアが一旦反対した後、賛成し、成立)

ユーロ圏各国の政府保証を受けて債券発行を行うが、最上級の格付けを維持するためには、そのうち格付けが最上級(AAA)の6か国の2550億ユーロしか貸し出すことができないため、拡充した。

各国が負担する保証負担額は以下のとおり。(百万ユーロ)

  保証負担額 拡大後
オーストリア 12,241    21,639
フィンランド 7,905 13,974
フランス 89,657 158,488
ドイツ 119,390 211,046
ルクセンブルグ 1,101 1,947
オランダ 25,144 44,446
AAA格付 6か国
  合計
255,439 451,540
その他 184,561 328,243
合計 440,000 779,783


その後1月13日に、S&Pはフランスとオーストリアの国債を格下げした。Moody'sは据え置いたが、両国について、見通しを格下げの可能性を示唆する「ネガティブ」とした。

2011年12月のEU首脳会議はESMを1年前倒しで2012年7月に設立することを決めた。

資金力の上限を5,000億ユーロに制限する。

EFSFが各国の政府保証を受けて債券発行を行うのに対し、ESMは800億ユーロの払込資本と6200億ユーロの請求払資本を保有し、銀行により近い形態を持つ 。
但し、銀行免許は付与しない。

2012年2月2日に欧州安定メカニズム(ESM)を創設する条約が署名された。2012年7月発効を目指す。

上記の財政協約を批准することを条件に金融支援を行う。

当初の最大融資能力は、7,000億ユーロの応募資本(800億ユーロの資本金と6,200億ユーロの請求払資本)によって得られる5,000億ユーロとする。

  出資比率
     %
Germany 27.1464
France 20.3859
Italy 17.9137
Spain 11.9037
Netherlands 5.7170
Belgium 3.4771
Greece 2.8167
Austria 2.7834
Portugal 2.5092
Finland 1.7974
Ireland 1.5922
Slovakia 0.8240
Slovenia 0.4276
Luxembourg 0.2504
Cyprus 0.1962
Estonia 0.1860
Malta 0.0731

 

当初の草案は「当初の融資能力規模は、最大5000億ユーロに設定される。これには現在のEFSFによる安定化支援も含まれる」としてい た。この場合、EFSFの残高は引き継がないこととなり、EFSFの拡充も意味がなくなる。

条約締結時には「欧州金融安定基金(EFSF)とESMの融資能力が十分か否か、2012年3月1日に再度検証する」とし ていた。

合わせて行うIMF資金枠増加に関し、 他の諸国から「まずEUが自らの安全網を強化すべきだ」と欧州の自助努力が強く求められた。

このため、ESMの融資能力5000億ユーロにEFSFの残り2500億ユーロを加え、7500億ユーロとする予定であった。
しかし、ドイツの反対意向を受け、今回の決定を延ばした。

ドイツではギリシャなどの放漫財政のつけを、ドイツ国民が事実上肩代わりすることに拒否反応が強く、メルケル首相らが「ギリシャの債務削減計画の状況を見極めるべきだ」などと主張した。

なお、800億ユーロの資本金は5回に分けて払い込まれる。当初は5年に分けて払い込む計画だったが、EU首脳はこれの加速方針でも合意した。
2回分は年内に行うことが決まっているが、残り3回をいつ行うかはEFSFの残高を繰り入れるかどうかと合わせ、3月中に決定する予定。

EUのユーロ圏17カ国は2月21日の財務相会合で、ギリシャへの総額1300億ユーロの第2次支援を決めた。

2012/2/23 ギリシャ第二次支援決定 

2)IMF

2011年11月のG20首脳会合で、IMFが十分な資金を持つ必要で一致した。
IMFは欧州への支援を念頭に最大5000億ドルの財源調達を目指している。
   このうちEUが2600億ドル規模を拠出する方針。

G20では、国際的な支援増強の前に「欧州の自助努力が必要」との条件が出されており、EUの対応待ちとなる。

 

 

 

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