韓国サムスン電子、公取委の立ち入り妨害で過料

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韓国公正取引委員会は3月18日、サムスン電子が調査官の立ち入りを妨害したとして、法律で定める最高額となる過料4億ウォン(約2,970万円)の処分を下したと発表した。
「サムスン電子はこれまでも常習的に調査妨害をしてきたが、今回は役員の指揮により、組織的に妨害が行われた点を考慮した」としている。

調査妨害の過料としてはこれまで食品大手のCJ第一製糖の3億4000万ウォンが最高であった。

詳細は以下の通り。

韓国公取委は3月15日、携帯電話端末メーカー3社と通信3社がグルになって携帯電話価格を膨らませ大幅な割引特典を付与するかのように消費者をだましてきた事実を明らかにし、是正命令と共に課徴金を賦課した。
アップルのiPhoneだけが唯一このような問題がないことが明らかになった。

摘発されたのは以下の6社。
 端末メーカー:サムスン電子、LG電子、パンテック
 通信会社:SKテレコム、KT、LGU+

端末メーカーと通信会社は2008年からの3年間にわたり携帯電話を代理店に渡す際に、価格を実際より高く策定し、差額分を「値引き」し、消費者に大きな恩恵を与えているように振る舞った。
価格を高くして'高価携帯電話イメージ'を作った。

公取委は2011年3月にこの情報を入手し、サムスン電子水原事業所に調査に入った。

しかし、調査官が正門に到着すると、警備員は「時間を稼げ」という内部指示に従い、「技術保安のために、事前の約束がなければ内部には入れない」とする社内規定を理由に阻止した。
サムスンの社員と調査官は約50分にわたり、言い分を主張し合った。調査官は112申告(日本の110番)までした。

その間、サムスン社内では調査対象の資料が廃棄され(机の引き出しを丸ごと交換)、担当職員のパソコン3台は新品に交換された。

サムスンはそうした工作を全て終えた後で、調査官の立ち入りを許したが、既に多くの資料が消えた後だった。

サムスンには、これに備えた'事前シナリオ'が出来ていた。

担当常務は水原事業場の某所に隠れ、公取委職員が撤収した後、隠しておいたコンピュータを取り出し、ファイル削除プログラムで該当資料を消した。

サムスン電子の情報保護グループ長は2日後の会議で警備会社を褒めた。

この他にも虚偽の資料を提出するなど幹部の指示で調査妨害が常習的に行われていたという。
2003年以降、サムスングループの公取委調査妨害は5回目(三星電子は3回目)で、サムスンが公権力を無力化する事例が相次いでいる。

公取委は1年余りの調査を経て、このようなサムスン電子の調査妨害行為を内部報告文書、防犯カメラ、役員間電子メール等を通して明らかにし、史上最高額である4億ウォンの過料を課した。

サムスン電子は今回、独禁法違反で総額142億8000万ウォン(約10億6100万円)の課徴金を課された。
このうち23億8000万ウォン(約1億7700万円)は調査妨害による加重分だった。
過料の4億ウォンと合わせると合計146億8000万ウォンで、うち調査妨害で27億8000万ウォン(約2億700万円)の支払いとなる。

6社の課徴金の総額は453億ウォンで、最高はSKテレコムの202億ウォン、次がサムスンで、3位がKTの51億ウォン。

さらに公取委は、各社が複雑な料金体系から利益を得ているとして、料金に関する情報を開示するよう各社に命じたほか、新たな割引を禁じている。

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公正取引法は6月16日に改正施行され、調査妨害行為には、過料だけでなく、刑事処罰も行える。
2月27日に国会を通過した公正取引法改正案では暴言、暴行、現場立ち入りの妨害などの調査妨害に3年以下の懲役または2億ウォン以下の罰金を課す条項が追加された。

 

 

付記

韓国政府の正当な調査を妨害するサムスンの行動が問題視されている。韓国中央日報が報じた。

サムスン電子の社内通信網には「子どもに恥ずかしい」「熱心に働いて積み上げたイメージが水の泡になった」という書き込みが相次いで上げられた。

これを受けサムスン電子の李健熙会長は3月21日、関係者を厳しく叱責した。
「昨年から順法教育を強化しているが実質的な行動変化につながってはいない。誤った認識と慣行が依然として残っているようだ」と話した。サムスンは公取委の調査を妨害したサムスン電子役員を重懲戒することにした。

李健熙会長は経営復帰2周年を迎える。サムスン電子はこの2年間好成績だが、会長の経営復帰後、サムスンテックウィン(光学機器や軍事機器などを生産)の不正、談合、公取委調査妨害まで、サムスンのイメージにダメージを与える事件が続けて起きている。

サムスンテックウィンの不正内容については公開していないが、K9自走砲などの部品を調達する際に納品メーカーから金品や過度な接待を受けたり、法人カードを個人的な用途に流用したなどの可能性がささやかれている。
この時も会長は、「サムスングループ全体に不正腐敗が横行している」と激怒した。

今年1月にはサムスン電子が洗濯機とテレビ価格をLG電子と談合して課徴金を賦課された。先月にはサムスンタレスが潜水艦装備開発事業で談合し課徴金59億9000万ウォンを課されている。

実績を重視するサムスン特有の文化が変わらなければ大きな成果を上げにくいという指摘が出ている。
財界関係者は、「サムスンは派閥や学閥と関連した弊害が少ない代わりに、経営陣が実績だけで評価される文化。会社全体では成果を出すのに有利な面があるが、経営陣は実績をまとめたり公取委の調査妨害を通じて不利な事実を隠そうとする誘惑に苦しめられるほかない」と話した。

公取委関係者は、「昨年のサムスン電子の調査妨害は偶発的な行動とみるのは難しいほどだった。公正社会という目標を達成するためには法秩序をしっかり守るという大企業オーナーの意志が最も重要だと考える」と話した。

 

 

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