米、2件目の原子力発電所新設を承認

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東芝は3月31日、同社グループ会社のWestinghouseによる新型加圧水型原子炉「AP1000®」の建設運転一括許可(Combined License=COL)を米国原子力規制委員会(NRC)が承認したと発表した。

 South Carolina Electric & GasのVirgil C. Summer原子力発電2・3号機で、米国における新規原子力発電所の建設は、本年2月にCOLを取得したボーグル(Vogtle)原子力発電所3・4号機に続くものとなる。


NRCは本年2月9日、Southern Nuclear Operating Companyのジョージア州オーガスタの南東26マイルのVogtle power plantの2機の建設・運転一括許可を承認した。

東芝傘下のWestinghouse Electricの新型加圧水型軽水炉(PWR)のAP1000を採用する。

1979年のスリーマイル島原発事故以来凍結されている米国の原発建設について、オバマ政権は再開する方針を示していた。
福島第1原発の事故後も、原子力を主要なエネルギーとして利用する政策を堅持している。
今回はその第1号である。

NRCは同日、5人の委員で採決し、4対1の賛成多数で承認した。

反対したのはGregoy Jaczko委員長で、福島第一原発のメルトダウンの例から原発建設のポテンシャルな危険を懸念すると発表した。「まるで福島の問題が起こらなかったかのように、承認を下すことを支持できない」「操業までに、福島で計画している改善策を実施するという確約が必要だ」と述べた。

NRCはWestinghouseの改良型のAP1000 そのものを2011年12月30日に承認している。
110万kW級の最新鋭リアクターで、安全システムが運転員の操作や電源を必要としない世界初の設計となっていて、圧縮ガスによる圧力や重力などの力で原子炉容器内に冷却水が注入され、自然循環によって熱を取り除くようになっている。

同型の原子炉は中国で4基が建設中だが、米国内では初めてとなる。

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米国の原子力規制委員会(NRC)は3月30日、米南部サウスカロライナ州で計画中の原発2基について建設運転を承認した。

米電力大手South Carolina Electric & Gas とサウスカロライナ州営電力会社Santee Cooperがサウスカロライナ州のコロンビアの北西約40キロにあるV.C. Summer Nuclear Stationが計画している2号機と3号機。

これも「AP1000」で、総工費は約110億ドルで、17~18年にかけて稼働させる予定。

今回もGregoy Jaczko委員長は反対した。
福島原発の事故を受けてNRCが現在検討しているすべての安全対策を会社側が実施することを求めた。
今回の承認に当たり、前回の
Vogtle原発承認以降に決めた安全対策の一つを実施することという条件がついた。


付記

Exelon は8月28日、テキサス州Victoria County Stationの原発申請を取り下げた。

同社はさきに、建設を長期間遅らせるため、combined construction and operating license (COL)の申請を取り下げていたが、今回、残していたearly site permit for land の申請も取り下げた。

天然ガスの値下がりで、予想しうる将来にわたって競争力がなくなったと判断した。

7月30日付の英 Financial Times は、"Nuclear 'hard to justify', says GE chief"のタイトルでGeneral ElectricのCEOのJeff Immeltのインタビュー記事を掲載した。

シェールガス革命で天然ガスが豊富に供給され、再生可能エネルギーの選択肢も増えたことから、原子力発電を正当化することは難しくなったというもの。

2012/7/31 原子力発電の正当化困難にーGE会長 

なお、NRG Energyも2011年4月、福島第1原発事故の影響で「規制動向など先行きが不透明になった」として、東芝との合弁会社でテキサス州で進めていた原発2基の新設計画への投資を打ち切った。同計画の認可申請は取り下げられていないが、事実上計画は宙に浮いている。

NRGは2008年にNuclear Innovation North America(NINA)を設立。同年に東芝が12%出資し、サウステキサスプロジェクト原子力発電所に改良型沸騰水型原子炉 (ABWR)2基(3号機、4号機)を増設する計画を進めていた。

米原子力規制委員会は2012年8月7日、最近の連邦控訴裁判所の判決で提起された使用済み核燃料の保管に関する規則を見直すまで原子力発電所建設の認可手続きを停止すると発表した。

連邦高裁は2012年6月、運転をやめた原発の敷地内で60年間、使用済み燃料の保管が認められていることについて、NRCの安全性評価は不十分だとして再検討を命令。原発敷地内ではなく、最終処分場の候補地を検討するよう求めている。

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米国では天然ガス価格が約10年ぶりの水準に下落しており、電力会社の間ではコストの安いガス火力発電への関心が高まっている。
このため、認可を受けた2件以外の新設計画の先行きについては不透明感もある。

米国の64カ所にある原発で運転中の原子炉は計104基で国内の電力需要の約20%を賄っている。

米国で計画中の原発は以下の通り。

  申請 機種 立地 基数 既存
稼働
 状況
NRG Energy 2007/9/20 ABWR South Texas Project 2 TX 取り止め
NuStart Energy 2007/10/30 AP1000 Bellefonte 2 AL 保留
UNISTAR 2008/3/13 EPR Calvert Cliffs 1 MD 審査中
Dominion 2007/11/27 USAPWR North Anna 1 VA 審査中
Duke 2007/12/13 AP1000 William Lee
 Nuclear Station
2 SC 審査中
Progress Energy 2008/2/19 ESBWR Harris 2 NC 審査中
NuStart Energy 2008/2/27 ESBWR Grand Gulf 1 MS 保留
Southern Nuclear
Operating Co.
2008/3/31 AP1000 Vogtle 2 GA 2012/2 承認
South Carolina
Electric & Gas
2008/3/31 AP1000 Summer 2 SC 2012/3 承認
Progress Energy 2008/7/30 AP1000 Levy County 2 FL 審査中
Exelon Nuclear
Texas Holdings
2008/9/3 ESBWR Victoria County
 Station
2 TX 申請取下げ
Detroit Edison 2008/9/18 ESBWR Fermi 1 MI 審査中
Luminant Power 2008/9/19 USAPWR Comanche Peak 2 TX 審査中
Entergy 2008/9/25 ESBWR River Bend 1 LA 保留
AmerenUE 2008/7/24 EPR Callaway 1 MO 保留
UNISTAR 2008/9/29 EPR Nine Mile Point 1 NY 保留
PPL Generation 2008/10/10 EPR Bell Bend 1 PA 審査中
Florida Power
 & Light
2009/6/30 AP1000 Turkey Point 2 FL 審査中
AP1000  Westinghouse Electric(東芝)
EPR  Framatome (Areva), Electricité de France, Siemens
US-APWR  三菱重工業
ESBWR  General Electric   

ソース:http://pbadupws.nrc.gov/docs/ML1200/ML12004A009.pdf

 

 

 

 

 

 

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