三菱商事と三井物産、米国産LNGを輸入へ

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三菱商事と三井物産は4月17日、それぞれが米国のSempra Energyの子会社であるCameron LNGとの間で、米国産天然ガスの液化を委託する交渉を行っていることを明らかにした。

Cameron LNGはルイジアナ州HackberryのLNG輸入基地の輸出基地への転用工事を2013年後半より開始し、総工費60億ドルで1系列年間400万トン能力の液化設備3系列(合計能力 1,200万トン)を建設し、2016年末より生産・輸出する計画を検討している。

現在、Cameron LNGは、自由貿易協定(FTA)締結国向けのLNG輸出許可を米国エネルギー省から取得しているが、日本を含むFTA未締結国向けの輸出許可は2011年12月に申請され、現在、承認待ちの状態となっている。

先行しているのはCheniere Energy が海外からのLNG受入基地に天然ガスのLNG化設備を建設してLNGを輸出する計画で、2010年9月に米国がFTAを締結している国(将来締結した国も含む)に限定して輸出許可が出された。

これに対し、同社は、多国間での自由貿易協定を目指すWTO加盟国へのガス輸出を禁止することが正当かどうかの判断を政府に求め、エネルギー省は2011年5月、同社に条件付きですべての貿易相手国への輸出を認めた。

Cheniereは2012年1月に建設着工、早くて2015年に稼働開始の予定で、既に売買契約を締結済である。

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米国ではシェールガスの生産増で天然ガス価格は暴落している。(4月には100万BTU当たり2ドルを割った)

しかし、天然ガスの輸出には反対も多く、特にFTA未締結の日本への輸出は簡単ではない。

米政府は「LNG輸出の国内ガス需給への影響」に係る調査実施を2012年第1四半期に完了させる予定。
米市場への適切なエネルギー供給を維持するために、LNG輸出に対しては何らかの条件が加えられる可能性がある。
 中国への輸出を避けるため、FTA未締結国への輸出を制限する可能性がある。

米国のエネルギー多消費型の産業界(発電業界、化学、アルミ、米国ガス協会等)から米国のLNG輸出に対する懸念が頻繁に提起されている。輸出により国内ガス価格が上昇するのを懸念し、一定の制限を設けるべきとの主張を展開している。

 

DowのAndrew Liveris CEOは「天然ガスを輸出する代わりに、液体形態ではなく、これを加工した固体形態で輸出するべきだ」と述べ、シェールガスからのLNGの輸出を制限するよう求めている。

付記

野田首相は4月30日のオバマ米大統領との首脳会談で、LNGの対日輸出拡大などエネルギー面での協力を求めた。

オバマ大統領は首相の輸出要請に対し、「日本のエネルギー安全保障は米国にとっても重要」と理解を示す一方、「(対日輸出は)政策決定プロセスにある」として、明言は避けた。日本政府内には「少なくとも11月の大統領選までは、オバマ大統領が輸出認可に動く可能性は低い」との見方が強い。

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三菱商事は、原料となる天然ガスを市場から調達のうえ、Cameron LNGに年間約400万トンの天然ガスの液化作業を委託して、生産されたLNGを需要家に販売する。

原料ガスについては、同社が34%保有する米独立系ガスマーケティング会社であるCIMA Energyなどを通じての調達も検討する。

三菱商事は2008年6月、米国でガスマーケティング事業を展開しているCIMA Energy Ltdの持分34%を同社の個人パートナーから取得した。

CIMA Energyは1996年設立で、米国内におけるガスおよび原油のマーケティング事業を行っており、年間のガス取扱高は約145百万MMBtu(LNG 換算280万t)となっている。

三菱商事は2009年1月より米国テキサス州のFreeport LNG 受入基地の使用を開始したが、同基地に持ち込むLNGを再気化した天然ガスについても、CIMA が米国内で販売を行う。

同社では、米国からも日本にLNGを輸入することで、調達先の多様化に繋げるのみならず、米国内の天然ガス市場も活用した柔軟性のある供給計画を実現させ、エネルギーの安定調達を目指すとしている。

なお、三菱商事はカナダでも天然ガス開発に参加しており、カナダで生産した天然ガスを原料に、液化天然ガス(LNG)として輸出する可能性についても検討を進めている。

三菱商事は2010年8月、カナダの大手エネルギー会社Penn West Energy Trustが所有するブリティッシュ・コロンビア州のCordova堆積盆地のシェールガスを中心とした天然ガス開発プロジェクトに参画する契約を締結した。

2010/8/26 三菱商事、カナダのシェールガス開発プロジェクトに参画

三菱商事とカナダの天然ガス最大手のEncana Corporationは2012年2月、British ColumbiaのCutbank Ridgeの未開発の土地でのシェールガス開発で提携したと発表した。

2012/2/21  三菱商事がカナダのシェールガス開発に参加

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三井物産はLNG輸出プロジェクトの準備費用の一部を負担し、1系列分に相当する年間400万トンのLNG輸出枠を確保する方向でSempra Energyと共同で検討を行う。

三井物産は米国ペンシルベニア州マーセラス・シェールエリアとテキサス州イーグルフォード・シェールエリアのシェールガス・オイル事業に参画しており、現在LNG換算で年間100万トンに相当する天然ガスを米国内で生産している。

Marcellus Shaleエリア 2010/2/18   三井物産、米国でシェールガス開発生産プロジェクトに参画  

Eagle Ford エリア     2011/7/4  三井物産、テキサス州のシェール開発に参加

これらのシェールガス・オイル事業では、今後も生産量の増加が見込まれることから、三井物産が権益を保有する天然ガスをLNG輸出に向けた原料ガスとして活用する可能性についても検討していく。

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2012年2月時点での米国のLNG輸出計画は下記の通り。  

プロジェクト 事業者 申請液化能力
万トン/年
       政府認可状況
エネルギー省 エネルギー規制委
Sabine Pass ルイジアナ Cheniere 1,600 認可済 審査中
Freeport テキサス Freeport LNG 900 審査中 審査中
Lake Charles ルイジアナ Southern Union 1,500 認可済 未申請
Cove Point メリーランド Dominion 800 未申請 未申請
Jordan Cove オレゴン Jordan Cove LNG 900 未申請 未申請
Cameron ルイジアナ Sempra 1,200 未申請 未申請
 米国計画 合計  6,900    

 

付記

住友商事と東京ガスは4月27日、米国のDominion Cove Point LNGと米国産LNG調達に関する協議を開始したと発表した。

Dominion がCove Point LNG受入基地にLNG 液化プラントを新たに建設し、米国内で生産されるシェールガスをはじめとした天然ガスを精製・液化する。
同社と液化加工契約締結をした事業者は、自らが調達した米国産天然ガスを本プロジェクトのLNG液化プラントで液化し、LNGを引き取ることができる。

Cove Point LNGプロジェクトの概要

  • 事業主体 : Dominion
  • 所在地     : 米国メリーランド州 
  • 液化能力: 約500万トン/年

住友商事が先行契約で取り決めた天然ガス液化加工契約の主要条件

  • 契約数量  : 約230万トン/年(LNG換算)
  • 契約期間  : LNG液化プラントの運転開始から20年間    

住友商事は本プロジェクト近郊で参画しているマーセラス・シェールガス開発プロジェクトなどからの調達を予定している。

住友商事は2010年9月1日、子会社Summit Discovery Resources II, LLCを通じ、米国の独立系石油ガス開発会社であるRex Energyが米国ペンシルベニア州マーセラス・シェール・フィールドで開発している天然ガス開発プロジェクトに参画する契約を締結したと発表した。

Rex社の既存資産プラス新規リース権の約30%を取得する。
取得資産の対価として契約締結時に約88百万ドル、2011年12月末までに追加で約 106百万ドル、合計194百万ドルを拠出する。

同社の持分ベースで総開発エリアは22,000エーカーで、生産量(ピーク) 46 bcf/年(原油換算 約8.4百万バレル)。
今後約10年間で累計1,100本以上の井戸を順次掘削していく計画で、総開発費用は約 1,200百万米ドルを見込む。

同社は又、米国の独立系開発会社であるCarrizo Oil & Gasが米国テキサス州Barnett Shale fieldに保有している天然ガスコアエリア開発プロジェクトに12.5%参画した。

また、100パーセント子会社であるPacific Summit Energyが米国内でガストレーディング・マーケティング事業も手掛けており、今回、本プロジェクトが最終合意に至れば、ガス上流開発から流通、液化、LNG輸出まで、米国における天然ガス・LNGのバリューチェーンの構築が可能になる。

 

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