アルゼンチン大統領、スペイン石油大手傘下を国有化へ、スペインは反発

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アルゼンチン政府は4月16日、スペインの石油会社Repsol-YPFのアルゼンチン子会社YPFを国有化する方針を明らかにした。

時価による買収ではなく、資産没収で、補償額は国家評価裁判所(National Appraisal Tribunal)が決定するとするだけで、詳細は明らかにされていない。

石油生産の低迷や投資をめぐり対立していたスペインの親会社Repsol-YPFから経営権を奪う。
Fernández大統領はYPFのCEOに Julio De Vido企画・公共投資相を起用した。近く、YPF株式の51%を取得できる法案を議会に提出する。残り49%についても同国の地方に分配する計画。

付記
アルゼンチン下院は5月3日、国有化法案を可決した。上院は可決済で、大統領の署名で施行される。

YPFはもともとアルゼンチンの国有石油会社だった。1999 年の民営化に伴う政府放出株式をRepsolが購入した。
アルゼンチン政府は0.2%の"golden-share"を持ち、買収拒否権などの重要事項についての権利を持つ。

Repsolは 1987 年に主に下流事業を営む石油会社としてスペイン政府により設立された国営石油会社であったが、1989 年以降、順次株式が公開され 1997 年に 100 %民間企業となった。
1999 年にYPF を買収し、社名をRepsol-YPFに変更した。

それまでのRepsolは石油下流、およびガス事業が主体の企業であったが、南米に豊富な炭化水素資産を持つ YPF の取得により、石油メジャー企業の一角を占める国際石油企業となった。

同社については 2006/8/5 Repsol YPFによるポルトガルの石油化学増強

RepsolはYPFの買収後、2008年にアルゼンチンの億万長者Eskenazi 一族に15%を売却、昨年には更に10%をEskenazi に売却した。現在、RepsolはYPFの57.4%を保有している。

Eskenazi一族は買収資金を銀行とRepsolからの借入金で賄った。

アルゼンチンは燃料輸入が昨年倍増し94億ドルに達したが、権はこの一因をYPFの生産低迷や投資不足にあるとして、批判を強めていた。

YPFはEskenazi の買収時の契約に従い、利益の90%を配当(年2回)として支払っている
政府は2011年に2回、本年に1回、取締役会でこれに反対した。

本年3月8日の取締役会では、政府は配当支払いではなく、石油開発と生産に使用することを要求した。

大統領は、「石油は極めて重要な資源だ。YPFは必要な投資を怠った。このままでは国の存続も危ぶまれる」とし、石油生産の落ち込みで同国が「発展できない国」にならないようYPFの経営権を取り戻す必要があると述べ た。

YPFは本年2月に、南アルゼンチンのVaca Muertaシェールオイル層に少なくとも230億バレルの油があることが分かったと発表した。そのうち、130億バレルがYPFに帰属する。

大統領は、「アルゼンチンは自国の石油をコントロールできない少数の国の一つであるが、今後、YPFの運営をうまくやる」と述べた。

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Fernández大統領(Cristina Fernández de Kirchner)は弁護士 出身で、Nestor Carlos Kirchner前大統領の妻。2007年10月の大統領選で勝利した。

大統領は2008年には、欧州の金融機関も参入していた240億ドルの年金基金と、スペイン企業傘下にあったアルゼンチン航空をそれぞれ国有化している。今回のYPFを巡っても国有化の噂が絶えなかった。

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これに対し、スペイン政府は「これはRepsolに対する敵対行為であり、即ち、スペインに対する敵対行為である。政府は対応策を協議しており、明確で断固たる措置を取る」と述べた。 

欧州委員会報道官は「強制的な国有化は投資家に悪い印象を与え、アルゼンチンの投資環境を傷つける」と警告。同じ中南米のメキシコのカルデロン大統領すら「残念ながら誰も利することのない政策だ」と突き放した。

アルゼンチンは昨年、EUに対し143億ドル(前年比28%増)の輸出を行っており、EUからの報復は大きなリスク要因となる。

フェルナンデス大統領は、「どんな脅しにも屈しない」とYPF国有化に向けた決意を強調した。

ベネズエラのチャベス政権は同日「我が国は欧州からのいかなる脅しも拒絶し、南米諸国にアルゼンチンへの連帯を呼び掛ける」との声明を発表。外交問題に発展した場合はアルゼンチン擁護に回る意思を明確にした。

アルゼンチンは2001年、823億ドルのデフォルト(債務不履行)に陥った。現在も日本などの Paris Club(主要債権国会議)関係の政府系金融機関が持つ債務については交渉を続けている。今回の方針が、国際金融界への復帰を一層難しくする可能性もある。

 

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アルゼンチン政府の国有化発表にもかかわらず、SinopecがRepsolからアルゼンチン子会社のYPFの買収で交渉しており、150億ドルで買収する非拘束の合意に達したという。4月17日付の中国の財新網Caixin.com)が伝えた。
買収にはアルゼンチン政府の承認が必要である。

スペイン語のEl Confidencial newspaper が4月10日に、Sinopecが91.6億ドル以上で買収する交渉を行っていると伝えていた。

Sinopec は既にアルゼンチンに進出している。2011年2月に Occidental Petroleum がアルゼンチンの資産をSinopecに25億ドルで売却している。

2010/12/17 Sinopec、Occidental からアルゼンチンの石油権益を買収



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コメント(4)

ブラジルのプレソルトでも、Chevronの原油流出事件(2回、但し量的には大惨事ではない)があり、政府はべらぼうな賠償金をシェブロンとトランスオーシャンに求める裁判を起こしていますが、今回の件といい、自国のエネルギーを有効活用したければ、西側の民間石油会社をうまく活用しなければ、かえって自分の首を絞めると言う理解がないようですね。
やっぱり南米って、まだまだ経済的利益よりも自己顕示欲が強いのでしょうかねえ。植民地被害者妄想が強いのでしょうか。

フォークランド諸島領有問題への牽制球と言う意味もあるのでしょうかねえ。

今回の件は英国も巻き込んで、欧州では騒ぎになりそうな気がします。

報道が正しければ、Repsolは政府の反対にもかかわらず、YPFの利益の90%を配当として支払い、投資を怠り、その結果としてアルゼンチンは石油がありながら、輸入に頼っています。

まるで旧植民地を食い物にしているような感もあります。

「西側の民間石油会社をうまく活用」できないという事情があったようです。

没収を擁護するわけではありませんが、Repsolも進出国と協力するという姿勢に欠けているように見えます。

突然の書き込みにて、失礼致します。BLOGOS編集部です。
http://blogos.com/

貴ブログを、是非BLOGOSに転載させていただきたいと思います。
もしよろしければ、ご連絡いただけないでしょうか。
ご検討のほど、よろしくお願いいたします。

大事なのは、誰の立場の視点でこれを見るかということ。(1)
そして、フェルナンデス大統領が誰の為に政治をしているのかを見ること。(2)
分かりやすい話だ。
(1)アルゼンチン国民の視点
(2)アルゼンチン国民の為に
ローカリゼーション(国民経済保護) VS グローバル金融資本だと言うことが分からないのか
繰り返すが、明らかに英断だ。アルゼンチンの国民にとっては、素晴らしい首脳と言えるだろう。
付け加えて言うと、日本人は忘れがちだが、
「国民の事を度外視してまで、国際社会の心象を良くする必要は全く無い」
という、国際政治の大原則があることを忘れてはならない。
「心象をよくする」事が行われるのは「国益」の為であって、
国益に叶わなければ、当然、考慮する必要は無いということ。最低限の配慮は必要だろうけど。

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