南鳥島沖にレアアース

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東京大学大学院の加藤泰浩教授(地球資源学)らの研究グループが、「レアアース」を豊富に含む泥を南鳥島周辺の海底で発見した。6月28日に資源地質学会で発表した。

加藤教授らは、国際共同研究などで採取された南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)内の海底堆積物のボーリング試料を分析した結果、南鳥島の南西約300キロメートル、水深約5600メートルの海底の泥に最大約1700ppm、平均約1100ppmの高濃度でレアアースが含まれることを突きとめた。

「レアアースを含む泥の厚さは、現在確認できるものとして10メートルほど」あり、濃度や層の厚みなどから推定されるレアアースの埋蔵量は約680万トンで、日本が1年間に消費するレアアース(約3万トン)の「約220年分が見込める」という。

「ジスプロシウム」や「テルビウム」などに富み、他のレアアースも含まれているという。

また、南鳥島の180キロメートル北方のEEZ内や、南方のEEZ外でも1000ppmを超える濃度の泥を見つけている。


レアアースが見つかったのは水深5600メートルの海底で、これまでに採掘の例はない。

しかし、加藤研究室 では下記の発表時に、「現在のテクノロジーをもってすれば、3,500~6,000メートルの深海から年間4,000万トンのレアアース資源泥を採掘・回収することは十分に可能と考えられ、さらに、回収したレアアース資源泥からは、薄い硫酸により短時間でレアアースを浸出(抽出)することが可能である」と述べている。

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加藤泰浩准教授(当時)らの研究グループは、南東太平洋や中央太平洋 の広い範囲にレアアースを高品位で含有する「レアアース資源泥」が分布していることを発見し、2011年7月4日付の英国科学誌 Nature Geoscience に発表した。

国際共同研究などで採取された太平洋海底のボーリング試料を分析し、ネオジムなどのレアアースを400ppm以上の濃度で含む泥が、水深3500~6000メートルの多くの地点に分布しているのを見つけた。

1968~1984 年に東大海洋研究所が古地磁気の研究のために太平洋全域から採取した27本のピストンコア試料と、深海掘削計画/国際深海掘削計画による掘削コア 51本から得られた試料について全岩化学組成分析を行った。

特に高濃度の泥はタヒチ付近の南東太平洋と、ハワイ付近の中央太平洋に集中し、泥の厚さはそれぞれ8メートル、23.6メートルで、両海域計約1100平方キロメートルの総レアアース量は、世界の陸埋蔵量約1億1千万トンの800倍に当たる約880億トンと分かった。

さらに、レアアース資源泥には、バナジウム、コバルト、ニッケル、モリブデンなどのレアメタルも高濃度に含有されていることも明らかとなった。

この新たなレアアース資源は、見た目は普通の泥であるにも拘らず高品位のレアアースを含有しており、"レアアース資源泥"と名付けられた。

この"レアアース資源泥"は、
(1)レアアース含有量が高いこと
(2)資源量が膨大(陸上埋蔵量の約1,000倍)かつ探査が容易なこと
(3)開発の障害となるウランやトリウムなどの放射性元素をほとんど含まないこと
(4)レアアースの回収が極めて容易なこと(薄い酸で容易に抽出可能)
などの特長を兼ね備えている。

このレアアース資源泥は大半が公海にあり、国際海底機構に申請すれば鉱区獲得は可能だが、資源としての採掘例がないため、国際的な合意形成に時間を要するとみられる。

今回、日本の排他的経済水域内の海底堆積物のボーリング試料を分析した。

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東京大学大学院 エネルギー・資源フロンティアセンターでは7月20日にレアアースのシンポジウムを開催する。

レアアースのすべてを語る
ー海底レアアース泥の探査・開発から削減技術、製錬、リサイクルまでー

詳細は http://www.frcer.t.u-tokyo.ac.jp/event/images/RareEarthSympo.pdf

 


 

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