東京地裁、東電賠償問題で「震災は異常に巨大な天災地変でない」

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福島第一の原発事故が「異常に巨大な天災地変」によるものかどうかを争う裁判の判決が7月20日、東京地裁であった。

東電の株主である弁護士が、国に対して東電の株価の下落で受けた損失150万円の損害賠償を求めた裁判。

「東日本大震災は『異常に巨大な天災地変』で原子力損害賠償法の免責規定にあたるのに、国が東京電力に賠償責任を負わせたことで株価が下落した」として訴えていた。

原子力損害賠償法には「異常に巨大な天災地変」で損害が生じた場合、原発事業者は免責されるとの規定がある。

第三条 (無過失責任、責任の集中等) 原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。
ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。

政府は、東日本大震災は異常な天災とはいえず、原発事故を起こした東京電力は事故による被害の賠償責任を免れないとしてきた。

これに対し原告は、「日本の歴史上最大の震災で、規定に該当するのは明らか」と訴えたもの。


地裁は、「国の判断には相当の根拠がある」として男性の訴えを棄却した。

判決はまず「免責が軽々と認められるようでは、被害者の保護が図れない」と基本的な考え方を示した。

続いて、今回の東日本大震災では東電は免責されないとした政府の見解が違法かどうかを検討した。

第三条のただし書きの解釈について、「関東大震災の3倍以上」などの表現がある国会審議や文献を踏まえ、「『異常に巨大な天災地変』の定義はさまざまな解釈があり、一義的に導くことは困難」と指摘した。

そのうえで地震の規模(マグニチュード 9.0)や津波被害を原賠法施行後に起きた過去の大地震と比較し、規模や津波の高さが1964年のアラスカ地震や2004年のスマトラ沖大地震を上回っていないと指摘 、「免責されるのは、人類がいまだかつて経験したことのない全く想像を絶するような事態に限られる」とした政府の見解には合理性があると結論づけた。




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