ヘリウムガス不足で東京ディズニーランドが風船販売を中止

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東京ディズニーランドは、ミッキーマウスなどのキャラクターをかたどったヘリウム風船の販売を中止した。
運営するオリエンタルランドが11月27日、ヘリウムガスの安定確保が困難になったために前週から風船販売を中止したことを明らかにした。

半導体の製造工程などに必要なヘリウムガスが世界的に不足しており、国内ガス各社が対応を急いでいる。100%を輸入する国内では価格も上がっている。

大陽日酸は来年から米国での合弁生産に踏み切り、岩谷産業は輸入元を中東カタールに広げる。

ヘリウムは不活性で熱伝導率が高く、あらゆるガスの中で最も沸点が低い極低温の性質を持ち、医療やハイテク産業では欠かせない希少なガスである。

                                岩谷産業の資料「ヘリウム産業」から

2009年の世界の需要は169百万m3で、内訳は以下の通り。
 
アメリカ   74百万m3   44%
欧州   35百万m3   21%
加・中南米   14百万m3   8%
環太平洋地域   38百万m3   24%
その他   5百万m3   3%
 

ヘリウムは、製造業の成長が目覚ましい中国を始めとするアジア地域で需要増大の一途をたどっており、2000~2007年で約2倍になった。
中国を始めとした新興国で医療用MRIの需要が増加しており、中国のMRI
台数は現在、2000台(日本は4000台)で、今後も増加すると見られている。

ヘリウムは工業的に生産出来ず、特定の天然ガス田のみで産出される。

現状の生産量は以下の通りで、約170百万m3だが、後記の通り、既存ソースは減る方向にある。

生産の大半は米国カンザス・テキサス・ワイオミング・オクラホマ州等中西部に頼っている。

米国政府は「ヘリウム条例1960修正条項」により、カンザス州の民間所有ガス精製工場から天然ガス中のヘリウム回収を始め、これをテキサス州アマリロ近郊のクリフサイドにある国家備蓄基地へ集約、ここで純度向上と貯蔵を行った。

1995年段階で、ヘリウム備蓄量は10億m3に達し、翌年に議会は貯蔵増の停止と 、2005年までに備蓄ヘリウムをすべて販売することを命じた。ただし、備蓄分の売り切りは2015年と予想される。

カンザス州・テキサス州の主力ガス田が枯渇し減産体制に入ったが、最大ガス田であるワイオミング州の稼動は安定している。

アルジェリアでは 1994 年にArzew、2007 年にSkikdaでヘリウム生産を開始した 。
スペインとの天然ガス供給パイプラインの完成により天然ガスの液化が行われなくなったため、大幅な減産体制となっている。

カタールでは2005年にRas LaffanのLNG プラントにヘリウム回収設備が加わり生産を開始した。
2013年には岩谷産業が20%の引取権を持つ第二期がスタートする。

その他、ロシアのOrenburg、ポーランドのOdolanówで 小規模生産が行われている。

2010年3月に豪州のダーウィンで、420万m3/年の生産が始まっ た。

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これまで、アメリカの供給停止で2度にわたり供給逼迫があり、産業界に激震が走った。

・2002年に米西海岸の湾岸スト(岩谷は空輸で緊急輸入した)

・2007年に米国はじめ各国の生産プラントでトラブルが発生

今回のヘリウム不足は米国のヘリウムプラントの不調が原因。

・米国土地管理局の粗ヘリウム貯蔵庫からヘリウム精製プラントに延びているパイプラインのトラブルで生産量が20%減。

・エクソンモービル社の持つ世界最大のヘリウムプラントが昨秋の定期修理が長引き、現在もフル稼働になっていない。

・このほか、上記のアルジェリアのヘリウムプラントの減産などが重なる。

世界のヘリウム供給力がヘリウムの需要増に追い付いていない状況は当面の間解消されず、2013年5月に予定されているカタールのヘリウム新プラント稼働まではこのような不安定な状況は続くと予想される。

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日本のガス会社は対策を急いでいる。

1)大陽日酸

大陽日酸の米子会社Matheson Tri-Gasは2010年10月、Air Products and Chemicalsとの合弁で米ワイオミングでヘリウム生産設備の建設に着手した。

生産能力は600万m3で、大陽日酸の引取枠は1/2の300万m3で、2012年末に稼働する。
2014年には生産量を倍増する。

大陽日酸は2006年に英国のBOCから米国、ロシア、ポーランドのヘリウム引き取り権と関連する事業資産を買収している。
 
工業ガスで世界第5位の独リンデが同第2位のBOCグループを買収する計画に伴い、独占禁止法上の問題で欧米の行政当局から譲渡事業に指定された。

2)岩谷産業

岩谷産業は2010年5月、「カタールヘリウム2プロジェクト」への入札に参加し、日本企業として初めてヘリウムを直接輸入する権益を取得した。

世界最大の能力を有するカタールのLNG生産工程の随伴ガスからラスラファン工業地区で液化ヘリウム生産を行うもので 、能力は約4,000万m3
岩谷は20%の800万m3の引取権を持ち、2013年初頭の生産開始時より輸入を開始する。契約期間は2032年まで。


 


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