住友化学のOlyset Net

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6月4日に日本経済研究センター50周年記念国際セミナー「持続可能な開発と企業の役割」が開催され、コロンビア大学のJeffrey Sachs 教授の基調講演と、パネラーの三井物産・木下専務と東大・澤田康幸教授の発表があった。
 (録画 http://www.ustream.tv/recorded/33797605

このなかで期せずしてSachs教授と澤田教授が企業の活動例として住友化学の名前を挙げた。

Sachs教授は温暖化問題を取り上げ、人類世(Anthropocene)では既に安全に活動できる領域(Planetary boundries)を超えたとし、MDGs (Millenium Development Goals)からSDGs(Sustainable Development Goals)に変えるべきだと主張した。

昨年の大統領選で気候変動について双方が一切言及しなかったことを挙げ、石油会社の宣伝によるものと批判、企業が政治を動かすロビー活動を禁止すべきだと主張したが、企業もSDGsに大きな役割を果たせるとした。

企業はいろいろな技術で貢献できるとし、アフリカでトヨタ、住友化学、ソニーなどと一緒に仕事を出来て誇りに思っている、もっと多くの企業に加わって欲しいと述べた。

三井物産・木下専務は同社の方針を説明、「YOI SHIGOTO」を世界中でキーワードとしているとし、モザンビークの天然ガス開発、エネルギー分野、水事業、 マレーシアのSmart City計画の4つの活動例を説明した。 

Sachs教授は特にSmart City計画に関心を示し、ODAの対象にしてはどうか、もしかするとアベノミクスの3本目の矢になるかもと述べた。

澤田教授は世界の重心がアジアとアフリカに移っているとし、ODAの役割を強調した。

その中で住友化学のOlyset Net (防虫蚊帳)のマダガスカルでのインパクト評価の結果を説明した。

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住友化学のOlyset Net はポリエチレンにピレスロイド系殺虫剤を練り込んだ長期残効型防虫蚊帳で、WHOからも使用を推奨されている。

マラリアは「ハマダラカ」という蚊が媒介する。毎年3.5~5億人がマラリアを発症し、100万人以上が死に至っている。(その90%がサハラ以南のアフリカで発生、犠牲者の多くは5歳以下の子供 。)

以前はハマダラカの駆除にDDTが使用され、効果を生んでいたが、DDTの生態系への影響 から1980年代に各国で使用禁止となった。

スリランカでは1948年から62年までDDTの定期散布を行ない、それまで年間250万人を数えたマラリア患者の数を31人にまで激減させることに成功していたが、DDT禁止後には僅か5年足らずで年間250万人に逆戻りし た。

WHO2006年9月にマラリア蔓延地区においてDDTの室内散布を推奨すると発表したが、これには賛否両論が出ている。

2006/10/23  WHO、マラリア防止にDDT使用を推奨

WHOは当初、マラリア対策として既存の蚊帳に薬を何回もしみこませて繰り返し使用するよう指導したが、再処理が面倒で、この方法はうまく機能しなかった。

住友化学は防虫網戸の技術に着目し、Olyset Net を開発した。蚊帳の糸に練りこんだ ピレスロイドが、洗濯等により表面の薬剤が落ちても中から徐々に染み出し、防虫効果が5年以上持続するもので、世界各地でテストを行った。

1998年にWHO、UNICEF、UNDP、World Bank 主導でRoll Back Malaria Partnership が始まり、2001年にWHOからOlysetがマラリア防止に有効との認定を受けた。

2005年1月のダボス会議で米倉弘昌社長(当時)がこの蚊帳を紹介した。
タンザニア大統領が各国にODAの増額を訴えたが、反応はあまりなかった。

ムカベ大統領やBill Gatesなどが壇上に並び、国連の貧困対策運動を率いるJeffrey Sachs 教授が話している最中に、女優のSharon Stoneが客席から突如立ち上がり、「私はシャロン・ストーンと申します。マラリアを運ぶ蚊からアフリカ人の子供を保護するために、ムカパ大統領に1万ドル寄付します。 私に賛同する人、立ってください」と叫んだ。
会場は騒然となり、5分間で100万ドルの寄付が集まった。英国のブレア首相は後日、8500万ドルを寄付することを発表した。

CBS News 録画  http://www.cbsnews.com/1606-500251_162-670124.html

現在、国連児童基金(UNICEF)などの国際機関を通じて、 50以上の国々に供給されている。

住友化学は2003年からタンザニアのA to Z Textile Mills社にこの生産技術を無償提供し、2003年から年間1,200万張の生産開始した。

2007年からは JBIC(国際協力銀行)の資金提供を受け、A to Z 社と合弁で Vector Health Internationalを設立、年間670万張の生産を始めた。

2008年に当時のブッシュ大統領夫妻がA to Z社を訪問した。

2010年8月現在、タンザニアでの生産能力は年間約2900万張りになり、タンザニアではこの生産だけで約7,000人の雇用機会を創出している。

同社はまた、オリセットネット事業で得た売上を役立てたいと考え、特定非営利活動法人「ワールド・ビジョン・ジャパン」の協力を得て、ケニア、ウガンダ、タンザニア、ザンビア、エチオピアの各国で小中学校の校舎・給食設備の建設・教材・先生の宿舎などに取り組んでいる。



 

 

 

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