Likonomics

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国際金融市場で「Likonomics」が話題になっている。

Barclays Capitalが6月27日付のレポート"China: Postcard from Beijing -- What to expect from Likonomics?" で、アベノミクスと対比して、中国の李克強首相が本年3月から主導する経済政策をこう呼んだ。中国紙は「李克强経済学」と訳している。

著者は北京大学経済学部教授のYiping Huang黄益平)とBarclay CapitalのエコノミストのJian Chang常健)とMs. Joey Chew楊霊修)。

報道によると、内容は以下の通り。

李首相は今後3年で成長率が3%まで下がる一時的なハードランディングを狙っている。
「Likonomicsは中国が持続可能な成長をするために必要であり、これにより次の10年で6~8%の成長が可能となる」

Likonomicsの三本の矢は、(1) No stimulus、(2) deleveraging(信用圧縮)、(3) structural reform である。

中国政府はこの3か月間、新しい刺激策の要請を拒否してきた。
「国主導の投資は最早持続可能ではないと信じているからである」

同時に政府は資産バブルを防ぐため、shadow-banking などを締め付けてきた。
今や政府は金融機関の規制に踏み切ると見られる。

(1) No stimulus、(2) deleveraging は苦痛を伴うが、(3) structural reform のためには不可欠なものである。

「アベノミクスがデフレを止め、成長を狙うのに対し、Likonomicsは成長を抑え、信用を圧縮して、成長の質を高めようとするものである。
両政策とも、成功するかどうかはそれぞれの国での構造改革が成功するかどうかにかかっている」

Yiping Huang教授は別のレポートで以下の通り解説している。
  http://www.eastasiaforum.org/2013/07/07/likonomics-policies-in-china/

前任の温家宝の政策は「強い成長、弱い改革」であった。

しかし現在、国民は、2008年の4兆元の刺激策について、インフラ面での過剰投資と、地方政府の無謀な借入・インフレ・資産バブル・不良債権の恐れなどによる著しい金融リスクを生んだとして否定的である。

今や、緩やかな成長と構造改革が必要だとのコンセンサスがあり、これはLikonomicsの三本の柱の基である。

李首相は経済刺激策や政府の直接投資に頼る余地は少ないと繰り返し述べており、これが一本目の 'no stimulus'である。
政府投資への依存は新しい問題やリスクを生むと述べており、実際、鉄鋼・セメント・アルミ精錬などでは深刻な能力過剰に悩んでいる。

政府主導のインフラ投資(エネルギー、水、輸送など)は続いているが、以前より抑えられている。失業率が上昇しない限り、成長のための政府の刺激策は考え難い。

李首相は最近、金融機関は既存の信用をうまく利用し、金融リスクを抑える努力をするべきだと述べた。
金融刺激策の導入により、中国の信用供与合計は2008年の9兆ドルが2013年に23兆ドルまで膨れ上がった。急速に信用が拡大した国は、常に苦しい調整を余儀なくされている。

中国人民銀行による銀行間市場での信用バブルを抑えるための最近の動きは、政府が信用を圧縮し、将来の金融リスクを下げることを望んでいることを示すもので、これが第二の柱である。

この動きは暫く続き、中小の金融機関や弱い金融機関に潰れるところが出てくると思われる。

李首相の三本目の柱は改革である。

以下の分野の改革が行われると見られている。
  金融自由化、金融制度、要素価格、土地利用、行政管理、独占、所得配分、戸籍制度、・・・。

Likonomics 政策は中国が持続可能な成長をするために必要である。

短期的には、経済成長と資産価値を引き下げるリスクがあり、一時的な'hard landing'となるが、その後すぐに急速に回復するだろう。

 

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本然第2四半期の中国のGDPは前年同期比7.5%となった。
2期連続の減で、中国政府の目標とする7.5%まで下がった。

中国税関当局が7月10日に発表した6月の貿易統計は、輸出が前年同月比3.1%減、輸入が同0.7%減となった。輸出が減少するのは2012年1月以来1年5カ月ぶり。

中国の7月金融危機説がささやかれている。

2013/7/6 中国金融危機説


中国政府はこれまで、基本的な問題をまず解決するのではなく、経済発展を最優先してきた。
その結果、いろいろな問題が発生するが、それについてはパッチ当てで解決、それにより派生する問題もまたパッチ当てで解決するという方式を繰り返している。

2010/12/28   中国経済とBeijing Consensus

これまでなら当然のように手を打っていたであろうが、今回は経済の一時的悪化を犠牲に抜本改革を図るかも分からない。

 


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