東京大学の調査委員会が分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授グループの論文について、改竄、捏造、もしくはその疑いがあると認定し、計43本は撤回が妥当と判断していることがわかった。7月25日に各紙が報じた。
加藤元教授は国内を代表する分子生物学者。改竄などが指摘された論文には20人以上の研究者が関わっており、こうした論文で得た博士号などの学位が取り消される可能性もある。
骨ができる仕組みやホルモンが作用する仕組みに関する研究など、これまで16年間に発表された計165本の論文を調べた結果、画像の合成や使い回しなどの不正が判明した。
朝日新聞によると問題例は以下の通り。
2012年1月、「データに加工の疑いがある」と学外から指摘があり、調査委員会で調べていた。
加藤元教授は「監督責任がある」として2012年3月末に辞職した。
今回、加藤元教授は、「不正があったのは間違いない。研究室のメンバーを信用していた。私の監督責任は重大だ。指摘された論文は撤回する。関係した皆さんに心からおわびしたい
」と述べた。
背景には、メンバーを複数の小グループに分け、有名科学誌への発表成果を競わせる研究室の運営手法にあったとされる。
「私自身は外部から指摘されるまで知らなかった。研究室のメンバーは熱心に実験をしており、疑っていなかった。指摘を受けて、論文の図をきれいに見せるために画像データをいじっていたことが分かった。ただ、してもいない実験をしたと偽るような捏造ではない」としている。
この問題は2012年1月にブログ名 JuuichiJigen氏(11次元)がYouTubeに次のタイトルで各論文の問題点を図示したことで判明した。
東京大学 分子細胞生物学研究所の核内情報研究分野の研究室での類似画像掲載論文について
捏造・改ざん・研究不正か? うっかりミスか? 偶然か?
日本語版 http://www.youtube.com/watch?v=on5lmd-pxiU&feature=youtu.be
英語版 http://www.youtube.com/watch?v=FXaOqwanWnU&feature=youtu.be問題点の図示の例
これを見て、Science誌が2012年1月25日にScienceInsiderで大々的に報じ、全世界に広まった。
http://news.sciencemag.org/people-events/2012/01/whistleblower-uses-youtube-assert-claims-scientific-misconduct
同誌はJuuichiJigen氏と電話インタビューし、背景を聴取した。
JuuichiJigen氏は私企業のライフサイエンス研究者。
2010年に獨協医科大学の研究者の研究結果を再現できなかったのが関心を持った最初。加藤元教授の論文に関心を持ったのは、2011年10月に2009年のNatureの論文の修正が出た時で、彼と同僚は加藤グループの論文のチェックを始めた。
JuuichiJigen氏は2012年1月に東大ほかに「類似画像掲載論文に関する申立書」を送付し、1月11日付で受理された。
東大はこれを受けて調査を開始した。
分子生物学会は本年6月12日に声明を発表、東大が本事件の調査結果の公表を要求しても公表しないとして、論文不正調査機関の設置等の提言をしている。
http://blog.goo.ne.jp/lemon-stoism/e/0885d64c69151190aff4108f47012214
実は東大は未だに本件について発表していない。
各紙が報道したのは、JuuichiJigen氏がツイッター上で、東大の分子細胞生物学研究所長からの7月5日付の通知「東京大学 加藤茂明 分子細胞生物学研究所(元)教授に係る論文の不正行為に関する予備調査の結果について」を発表したためである。
予備調査において、貴殿により指摘された加藤茂明氏の論文24編68箇所を精査した結果、別表の通り、21論文65箇所に関し貴殿の指摘を認めるとの結論に到った。
JuuichiJigen氏の調査が無ければ、今も改竄・捏造が続いていたかも分からない。
ーーー
研究の不正が相次いでいる。
2011年3月 名古屋市立大の准教授による19本の論文で、画像の不正使用を大学が認定
2012年2月 東京医科歯科大の助教が3本の論文でデータを捏造
2012年6月 日本麻酔科学会は元東邦大准教授の麻酔科医が発表した論文約170本が捏造だったと公表
2012年10月 iPS心筋移植が偽装と発覚
2012/10/15
iPS 心筋移植問題
2012/10/22
Massachusetts General Hospital
、森口氏の特許出願を撤回
2013年4月 京都府立医科大が元教授の動物実験などの論文14本で改竄などがあったと発表
コメントする