日本出資の中部ジャワ石炭火力発電所計画 難航

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インドネシアのジャワ島中部で日本が官民一体で進める石炭火力発電所計画が難航している。

事業資金の融資契約を10月6日までに締結することが認可の条件であるが、前提となる用地確保が出来ず、権利喪失が懸念されていたが、このたび、ユドヨノ大統領が融資契約期限の再延長を認める大統領令に署名し、最悪の事態は免れた。

当初は2012年10月6日が期限であったが、1年限りで延長が認められていた。

しかし、国軍や警察と連携した強権的な手法に対する住民の不信感は根強く、用地買収が完了するメドは立っていない。

事業会社は8割の買収を終えたとしているが、反対派を支援する環境保護団体は、売却された土地は予定地全体の3割に過ぎないとしており、反対派は徹底抗戦の構えを見せている。

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計画は中部ジャワ州に合計出力200万kWの石炭火力発電所を建設し、インドネシア国有電力会社(PLN)と25年間の長期売電契約(PPA)を締結するアジア最大規模のIPP事業。

2011年4月に行われた国際入札で、電源開発(Jパワー)と伊藤忠が現地のAdaro Energy Tbk.と組んで優先交渉権を獲得、10月に同JVが国営電力PLNと契約を結んだ。

日本政府が進めるパッケージ型インフラ輸出で、高効率石炭火力発電設備としては初の案件となる。

概要は以下の通り。

立地 :中部ジャワ州バタン県
 

発電所 :中部ジャワ発電所(CJPP)
発電方式 :超々臨界圧(USC:Ultra Super Critical)石炭火力発電
         
亜臨界圧石炭火力発電所と比べ、
          使用燃料を約1割削減
      容量100万kW当たり二酸化炭素排出量を年間約50万トン削減
出力 :200万kW(100万kW×2)
        ジャワ島の電力需要の約1割
燃料 :インドネシア産低品位炭(亜瀝青炭)
スキーム :BOT(Build-Operate-Transfer)方式
事業会社 :PT. Bhimasena Power Indonesia
  建設・保有・運営・保守を担当
出資
電源開発(Jパワー)  34%
  PT Adaro Energy Tbk.  34%
  伊藤忠商事   32%
電力販売先 :PLN(インドネシア国有電力会社)
    インドネシア財務省が国営インフラ保証会社を通じて、PLNの契約履行を保証
契約期間 :25年間
工程
   (2011/10)
:2012/10 着工
  2016/10  1号機運転開始(工期48か月)
  2017/4    2号機運転開始(工期54か月)
事業費 :約40億ドル
資金調達  :三井住友銀行、みずほコーポレート銀行、国際協力銀行 (JBIC)などで構成する銀行団が
  30億ドル程度を協調融資


Bhimasena Power Indonesiaでは計画の意義を次の通りとしている。

 ①電力の安定供給
 ②大型インフラ案件のモデルケース
 ③環境配慮型のプロジェクト

本計画の認可条件として、事業資金の融資契約を1年以内(2012年10月6日まで)に締結することとなっており、そのためにはそれまでに用地の買収を完了しておく必要があった。用地買収、住民対応等ほとんどを事業者側が負担する形になっている。

建設用地の買収は難航した。農地は年3回、コメの収穫が可能という肥沃な土壌で、田んぼを手放さないという農民と、予定地近くの漁場汚染を懸念する近隣の村の漁師、環境保護団体が猛反対した。

期限の2012年10月になっても、同計画に関する環境アセスメントや土地取得が終わっておらず、地元住民の反対運動も続いていた。
このため、インドネシア政府は資金調達契約の締結期限を1年間延長した。再延長はなしと決められた。

2012年9月に建設予定地のポノワレン村で、 視察に訪れた住友商事社員とインドネシア人運転手が発電所建設反対派住民に約5時間民家に連れ込まれ、警察が威嚇射撃や催涙弾を用いて救出するという事件が起こった。

事件以降、ポノワレン村には軍と警察が常駐している。

以下、新聞報道から。

 2013/6/25 産経  住民パワー 押し付け開発「No」

◆黄色い拒否の旗
◆軍常駐
でぴりぴり

ビマセナ側は「今年は3月までに座談会を約50回開き、理解を得ている。教育・医療支援など企業の社会的責任を果たす活動にも力を入れている」と説明するが、同村幹部は「説明会は1回きり。支援の具体策の説明もない」と食い違う。

 2013/6/28 毎日 火発計画、住民反対で頓挫 日本のインフラ輸出、成長戦略に冷や水

建設予定地は田畑で地権者は数百人。地元企業と警官、国軍兵士がチームを組んで、環境破壊などを懸念する建設反対派の農民に対し「強制的に土地を取り上げ更地にする」などと売却を強要するケースが頻発したため農民側が反発。

日本企業の関係者は、強権的な手法で買収を進めていたことを認め、「現状では10月着工は難しい」との見方を示した。

 2013/7/6  毎日  火発に1000人抗議デモ 計画書承認に反発

州都スマランの環境管理局前で5日、同州バタン県で日本が官民一体で進める中部ジャワの石炭火力発電所建設に反対する地元住民約1000人が抗議デモを行った。

要求は(1) 計画の即時取り消し (2) 環境影響評価発行差し止め (3) 国軍や事業会社社員による用地売却強要の中止−−の3点。

 2013/7/31 毎日 発電所予定地で住民と警官衝突

現場を目撃した住民によると、衝突はバタン県カラングヌン村で発生した。事業会社が掘削作業を行っていた現場に住民約500人が集まり、作業の中止を要求。警官など約150人ともみ合いとなった。

毎日新聞(8月4日)によると、インドネシアの独立調査機関「国家人権委員会」が政府などに対し、用地買収交渉からの地元警察と国軍の撤退を求める勧告書を提出したことが分かった。

計画について「正式承認前にもかかわらず、事業会社、政府、警察、国軍が脅迫や強権的手段で用地買収を進めている」と指摘し、「建設の影響で失業する(農民ら)数千人の住民のための綿密な計画が準備されていない」と批判した。

その上で
(1)計画の公式承認まで用地買収交渉中止
(2)建設で農地や漁場を失う失業者向けの雇用・福祉対策の明確化
(3)人権侵害の監視強化
(4)売却強要につながる警官、国軍兵士の交渉からの撤退−−などを求めた。

このままでは日本企業が出資する事業会社は建設の権利を喪失し、莫大な損失が出る恐れがあったため、日本政府はインドネシア政府に対し、協力を要請した。

インドネシアを訪問中の西村康稔副内閣相は7月15日、ハッタ・ラジャサ調整相(経済担当)と会談し、「中部ジャワ発電所計画」への協力を要請した。

9月のロシアのサンクトペテルブルクでの主要20カ国・地域(G20)首脳会議の際、安倍首相が直接ユドヨノ大統領に協力を要請した。

これを受けて、今回の再延長の承認となった。

 

このままでは、反日感情が高まる恐れがある。


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