水素エネルギーフロンティア国家戦略特区

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安倍首相は10月24日の参議院予算委員会の基本的質疑で「国家戦略特区」について、「日本の経済社会の風景を変えるような大胆な規制改革によって成長戦略を実現するものだ」と述べ、国家戦略特区を地方全体の発展につなげたいという考えを示した。

産業競争力会議において、これまでとは次元の違う国家戦略特区の創設が提案された。
日本経済の再生に向けた第三の矢である日本再興戦略の要として、従来の取組の単なる延長線にある焼き直しや寄せ集めでなく、国家戦略としてふさわしいプロジェクトを推進することにより、「民間投資の喚起により日本経済を停滞から再生へ」導くことを目的としてい る。


2013年8月12~9月11日の期間で提案を募集し、62件の提案があった。
  http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/teian_hearing.html

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この中に、川崎市と千代田化工建設が提案した「水素エネルギーフロンティア国家戦略特区」がある。
   http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/pdf/38-kawasaki.pdf

世界初となる水素の輸入・供給基地を川崎市に建設し、輸入した水素を使う世界初の商用水素発電所を建設するもの。

提案は3つのステップに分かれる。

① 水素社会を支えるインフラの構築
 
 (1) 世界初の水素供給グリッドの整備
  海外の原油随伴ガスなどから製造する水素を、「新たな水素の大量貯蔵・輸送技術」(有機ケミカルハイドライド法)を活用し、常温常圧で川崎臨海部に輸送するとともに、臨海部「水素供給グリッド」を企業間連携により 2015年を目途に新たに整備し、コンビナートにおける水素の産業利用を推進
  水素利用量 年間約 7億N㎥(予定)
     
 (2) 世界初の商用水素発電所の建設
  「世界初の商用水素発電所」(9万kW=90MW 級)を川崎臨海部に 2015年を目途に建設し、CO2 を排出しない発電事業を開始するとともに、水素混焼データの収集と燃焼ノウハウを蓄積
  水素利用量 年間約 6.3億N㎥(予定)
     
 (3) 水素発電所で発生する排熱の有効活用
  水素発電所で発生する排熱を水素供給グリッドにおいて有効活用することで、脱水素反応プロセスにおける省エネルギー化・高効率化を推進
     
② 水素供給モデルの全国展開と他分野への拡大展開
     
 (1)水素モデルの全国展開
  国内他地域のコンビナートや工業地帯において、脱水素プラントを整備し、新たな水素需要を創出するとともに、石油コンビナートにおける事業の再構築を支援
  水素発電所の燃焼実績、ノウハウ等を活用し、国内他地域の既存 LNG火力発電所への水素混焼の展開を図ることで CO2 の大幅削減と水素需要を拡大
     
 (2)民生部門(市⺠生活・交通分野)への展開とグリーン水素との連携
  市民生活分野(定置型燃料電池)や交通分野(燃料電池自動車(FCV)、燃料電池バス、水素ステーションへの供給)などへ展開するとともに、市街地への安全かつ効率的な水素供給輸送システムを構築
  再生可能エネルギーの発電余剰電力により水素を製造・貯蔵し、必要な時に電力として活用するエネルギーシステムの構築
     
③ 水素供給モデルの海外展開
  官民が連携して水素供給グリッド・水素発電等をシステムも含めた統合パッケージ化し、海外に展開することにより、水素エネルギー分野において国際競争力を得るとともに、関連産業のビジネス機会を創出


このベースになるのは、千代田化工の「大規模水素貯蔵・輸送システム」である。
海外の油田等で出る水素をトルエンに反応させてメチルシクロヘキサンとし、常温で日本に輸送し、日本でこれから水素を取り出すもの。これまでメチルシクロヘキサンから水素を取り出すのは不可能とされていたが、同社が開発した触媒がこれを可能にした。

同社は2013年5月31日、子安オフィス・リサーチパークにて実施していた有機ケミカルハイドライド法による「大規模水素貯蔵・輸送システム」の実証試験で所期の性能を確認することができた と発表した。

トルエンに水素を固定(水素化反応)させ、メチルシクロヘキサン(常温常圧の液体)に変換して貯蔵・輸送し、同社が開発した脱水素触媒を用いて、このメチルシクロヘキサンから再び水素として取り出し(脱水素反応)、供給するシステムを対象としたもの。

 (海外油田等) 3H2+C6H5CH3→ C6H11CH3
   
↓ (常温輸送)

 
(川崎)     C6H11CH33H2+C6H5CH3  

メチルシクロヘキサンの場合、LNGや液化水素などのような極低温技術を必要とせず、通常の石油タンクやタンカーを利用できる 。

一連の工程を「大規模水素貯蔵・輸送システム」として確立することで、これまで困難とされてきた水素の大量輸送や長期貯蔵が、商業ベースで可能であることを実証できた。

同社は「SPERA水素」(ラテン語で「希望せよ」という意味)の愛称で水素供給事業実現を目指す。

水素エネルギーフロンティア国家戦略特区では川崎に世界初の水素供給グリッド を整備する。

首都圏の水素ステーションを中心に圧縮、あるいは液化して専用車で配送する。
水素は石油精製に使われるため製油所にも供給する。

さらに、「世界初の商用水素発電所」(9万kW=90MW 級)を川崎臨海部に 2015年を目途に建設する。

水素発電は既存のLNG火力発電所の設備を基本的に利用できる。
発電所では水素をガスに混ぜて燃やすが、千代田化工の発電所では水素の比率は最大7割。

水素発電所で発生する排熱を水素供給グリッドにおいて有効活用することで、脱水素反応プロセスにおける省エネルギー化・高効率化を推進 する。

第二段階ではこれを全国展開し、第三段階では海外展開を図る。

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水素に関しては、川崎重工が6月21日にロシアのカムチャツカ半島に近いマガダン州に本拠を置く電力大手RusHydro(ルスギドロ )とその子会社RAO Energy Systems of the Eastとの間でロシアで液化水素製造工場を建設する予備契約に調印した。

割安な余剰電力を使って水を電気分解し、水素を大量生産するもので、ロシア側が電力を供給、川崎重工が液化水素の製造・貯蔵・輸送の技術を供給、生産した液化水素は全量日本に輸送する。

川崎重工では2017年にも現地で液化水素生産の実証実験を開始し、その後に200億~300億円を投資し大型工場(年産9万トン規模)を建設したい考えで、世界初の液化水素の専用船も開発し、各地に輸送する。




 

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