小泉元首相の「脱原発」論

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小泉元首相が各地で「脱原発」の発言を続けている。

10月16日の木更津市での講演の発言概要は以下の通り。(2013/10/30 毎日新聞)

首相の時は「原子力はCO2を出さない、安全だ、コストも安い」という専門家の話を信じていた。
しかし福島の原発事故を考えると、日本で原発を推進するのは無理だなと。
政治が決断すれぱ原発ゼロでもやっていけると考えた。
8月にフィンランドの核廃棄物の最終処分場「オンカロ」を視察し、改めて確信した。

放射性廃棄物、核のゴミをきちんと危険のないよう保管する場所が、日本にはどこにもない。
地震国で津波もある。原発事故の後でコストが一番安いと信じる人はほとんどいない。
原発立地にどれだけ税金を投入したか。そして福島の事故の賠償責任、汚染水処理、廃炉。東電だけでできるわけがない。
今や原発のコストは一番高い。

日本は原発ゼロで十分経済成長できる。日本企業は力がある。
今すでに原発ゼロだ。原発は新増設できず、安全対策をして稼働させてもせいぜい数基だ。
それなら太陽、風力、地熱、地域全体でCO2を出さない自然エネルギー改革をする。
代替エネルギーの参入を増やし電気料金で競争させれぱいい。

10月29日には「世論を変えることで政府も脱原発に向け政治決断ができる」と述べ、今後も発言を続ける意向を示した。


付記 小泉純一郎元首相は11月12日、日本記者クラブで講演した。

講演ビデオ  

講演概要 

小泉元首相は脱反原発論について、毎日新聞の8月26日の記事以来、取り上げられているが、311以降、ずっと言い続けてきたとしている。

 記念の記帳に書いたのは「百考は一行に如かず」

小泉氏は、「百聞は一見に如かず」の続きが、「百見は一考に如かず」で、その後が、「百考は一行に如かず」で、百の考えも一つの行動に及ばないの意味だと解説した。

安倍首相への言葉であろう。


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「オンカロ」は、フィンランドのオルキルオト島で建設中の、世界で唯一の高レベル放射性廃棄物の最終処分場である。

地下およそ520メートルの深さまでトンネルを掘り、そこから横穴を広げ放射性廃棄物を処分する。2020年までに運用を開始し、その後2120年頃までの100年間にわたり埋設処分に利用、100年後に施設が満杯になった後は、道を埋めて完全に封鎖する。

プルトニウムの半減期は2万4000年で、生物にとって安全なレベルまで放射能が下がるにはおよそ10万年の月日を要するため、10万年にわたって封鎖され続ける。

ドキュメンタリー映画 『100,000年後の安全』

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小泉発言について、安倍首相は以下の通り反論している。

原発停止の影響で火力発電向け燃料の輸入コストがかさみ、原発ゼロを続けるのは現状では難しい。
1年間で4兆円近い国の富が海外に出ていっている。ずっと続いていくと大変だ。今の段階で原発ゼロを約束することは無責任。

原子力比率は可能な限り引き下げていかなければならない。
高レベルの放射性廃棄物の最終処分については、現在も処分地選定調査に着手できていないという現状を真摯に受けとめなければならない。
国として、処分地選定に向けた取り組みの強化を、責任を持って検討していきたい。

高レベル放射性廃棄物の最終処分方法として、地層処分については、20年以上の調査研究の結果、我が国においても技術的に実現可能であると評価されている。一方で、地層処分について専門家間でさまざまな議論が存在するのも事実。
今後、これまで以上に専門家での丁寧な議論を実施し、同時に、安全性、信頼性の一層の向上に向けた研究開発を進めていくなど、日本学術会議の提言も踏まえて、国として、最終処分へ向けた取り組みの強化を責任を持って検討していく。

菅官房長官は「責任あるエネルギー政策を進めていくのは政府の役割だ」と述べた。

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使用済み核燃料の再処理で生じる高レベル放射性廃棄物の地層処分については、2000年に原子力委員会が実現可能と評価し、受け入れ先の選定に向けた特定放射性廃棄物最終処分法が成立した。

特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針の作成と公表、精密調査地区及び最終処分施設建設地の選定、最終処分の実施、「原子力発電環境整備機構」の設置について規定

しかし、安全性や原子力政策への批判などから、最終処分施設建設地の選定は全く進展していない。

アメリカでは、1987 年に NWPA (核廃棄物政策法) を制定。候補地の中から、Yucca Mountain 絞り込んで処分場を作ることを決め、2009 年までに 150億ドルの投資を行って建設の準備を行ってきた。

しかし、決定後に地元住民やネバダ州議会の反対が強くなり政治問題化した。

オバマ大統領は 2008 年の大統領選挙において、Yucca Mountaiへの建設計画中止を公約に上げて当選、オバマ政権は代替手段を用意しないまま、Yucca Mountaiでの処分場建設計画を中止、これまでの数十年にわたる取り組みを無効化した。

建設中の「オンカロ」が世界で唯一の高レベル放射性廃棄物の最終処分場である。

 

日本学術会議は昨年9月、以下の内容の政策の抜本的な見直しを原子力委に提言した。

(1) 高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策の抜本的見直し

各地で反対に遭い、行き詰まっているのは、説明の仕方の不十分さというレベルの要因に由来するのではなく、より根源的な次元の問題に由来することをしっかりと認識する必要がある。

従来の政策枠組みをいったん白紙に戻すくらいの覚悟を持って、見直しをすることが必要である。

(2) 科学・技術的能力の限界の認識と科学的自律性の確保

地層処分の政策枠組みが行き詰まりを示している第一の理由は、超長期にわたる安全性と危険性の問題に対処するに当たっての、現時点での科学的知見の限界である。
自律性のある科学者集団による、専門的で独立性を備え、疑問や批判の提出に対して開かれた討論の場を確保する必要がある。

(3) 暫定保管および総量管理を柱とした政策枠組みの再構築

行き詰まりの第二の理由は、原子力政策に関する大局的方針についての国民的合意が欠如したまま、最終処分地選定という個別的な問題が先行して扱われてきたことである。
広範な国民が納得する原子力政策の大局的方針を示すことが不可欠であり、高レベル放射性廃棄物の暫定保管と総量管理の2つを柱に政策枠組みを再構築することが不可欠である。

(4) 負担の公平性に対する説得力ある政策決定手続きの必要性

行き詰まりの第三の理由は、従来の廃棄物処分方式では、受益圏と受苦圏が分離するという不公平な状況をもたらすことにある。
これへの対処として、
金銭的便益提供を中心的な政策手段とするのは適切でない。
金銭的手段による誘導を主要な手段にしない形での立地選定手続きの改善が必要であり、負担の公平/不公平問題への説得力ある対処と、科学的な知見の反映を優先させる検討とを可能にする政策決定手続きが必要である。

(5) 討論の場の設置による多段階合意形成の手続きの必要性

(6) 問題解決には長期的な粘り強い取組みが必要であることへの認識

 

経済産業省の総合資源エネルギー調査会は9月28日、原発の高レベル放射性廃棄物を地中深くに埋める地層処分の技術的課題を検討する作業部会の初会合を開いた。技術面での本格的な再検証を始める。

杤山委員長は会合後、記者団に「できるかどうかをゼロに戻って判断したい」と強調、議論の結果次第では地層処分を取りやめる可能性もあるとの認識を示した。
 

地層処分方法を研究する日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センターは10月28日、北海道の宗谷管内幌延町の調査坑道を報道機関に公開した。

調査坑道は2012年3月に掘削を開始した。

地下350メートルの地点に高さ3m、幅4mの馬蹄形の坑道を「8の字」形に掘っており、本年度中に坑道につながる試験用の横穴がすべて完成すると、総延長は約760mになる。

来年度から放射性廃棄物に見立てた100度程度の熱源入りの実物大の鋼鉄製容器の埋設試験を行い、本格的な処分技術の研究を始める。
水分を通しにくい特殊な粘土で覆い、地下水の浸透や容器の腐食の程度を数年かけて調べる。

機構と北海道、幌延町は実際に放射性廃棄物を持ち込むことと、処分場転用を禁じる三者協定を結んでおり、約20年の研究期間終了後は地下施設全体を埋め戻す。

 

付記 国内では既に2万5千本相当の使用済み核燃料がたまっており、東京ドーム約80個分の広さが必要という。
    オンカロもフィンランドに4基ある原発の2基分を貯蔵しうるだけで、あと2基分の処分場が必要。


 

読売新聞は10月8日の社説で以下の通り述べている。

使用済み核燃料や、それを処理した際に出る放射性廃棄物の処分法は技術的に決着している。
専門家は地盤の安定した地層に埋めれば、安全に処分できると説明している。日本を含め各国がこの方法の採用を決めており、フィンランドでは建設も始まった。
放射能は、時間を経ると減り、1000年で99.95%が消滅する。有害性が消えない水銀など重金属の廃棄物とは事情が違う。


これは事実ではなく、高レベル放射性廃棄物を地下に埋設するための基礎実験をこれから始める段階で、技術面での本格的な再検証の結果次第では地層処分を取りやめる可能性もある。

更に、最終処分を引き受けるところがないことから近い将来の実現はあり得ない。

実現するまでに廃棄物の保管能力が限界に達し、原発を止めざるを得なくなるのは必至である。





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