2013年 回顧と展望

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2012年6月に三菱化学が鹿島事業所の基礎石油化学事業の構造改革を発表したが、本年に入り、住友化学が2月に千葉のエチレン停止を発表、8月には旭化成ケミカルズと三菱化学が水島地区の両社のエチレンセンターの集約について合意したと発表、日本の石油化学業界もようやく動き出した。

1) 三菱化学(鹿島) 第1エチレン及び第1ベンゼンの停止(2014年5月の定期修理時に実施)

三菱化学は2012年6月11日、鹿島事業所の基礎石油化学事業の構造改革を発表した。

生産能力(非定修年、千トン/年)
    現 在 停止後 増減
エチレン 1E 390 0 -390
2E 490 540 +50
880 540 -340
ベンゼン 1Bz 90 0 -90
2Bz 180 180 0
270 180 -90


なお、日本ポリエチレンと日本ポリプロは、川崎(旧 東燃化学)の1系列ずつを2014年4月に停止すると発表した。

日本ポリエチレン HDPE 5.2万トン/年
日本ポリプロ    PP      8.9万トン/年

2012/6/27 三菱化学、鹿島事業所における基礎石油化学事業の構造改革

2) 住友化学(千葉) エチレン停止と京葉エチレン改組(2015年9月)、日本オキシラン停止(2015年5月)

住友化学は2月1日、国内石油化学事業の拠点の千葉工場の競争力強化のため、2015年9月(次の定修時期 )までに、エチレン製造設備を停止すると発表した。

    現状
  千トン
2015年
  千トン
 

住友化学

千葉

415 0 合計能力607→( 384+α)
京葉エチレン 住友化学 千葉 192 384+α
三井化学 192 0 三井離脱
丸善石化 384 384-α  

丸善石油化学

千葉

525 525  

丸善石化は、エチレンの引き取り枠については「当社分(50%)が減り、住友化学の引き取り枠(25%)が増えることで、より稼働率が改善する体制を目指すのが基本姿勢」との認識を示した。

2013/2/4 住友化学、エチレン国内生産から撤退 

住友化学は、2015年9月のエチレン停止までに千葉の不採算事業の縮小も進めるとしたが、11月27日に、日本オキシランのSM(年産425千トン)、PO(181千トン)、PG(100千トン)を2015年5月をめどに停止すると発表した。

2013/11/29  住友化学、エチレン停止に合わせ日本オキシランのSM、PO、PGを2015年に停止 

3) 水島のエチレン集約

旭化成ケミカルズと三菱化学は8月2日、西日本エチレン有限責任事業組合として運営している水島地区の両社のエチレンセンター(いずれもエチレン能力 50万トン/年:非定期修理年)の集約について合意したと発表した。

2014年2月に正式発表する予定で、2016年春からスタートする。

いずれかのエチレンを止めるが、誘導品については両社ともかなりの処理をすると思われる。

2013/8/5   水島地区エチレンセンター集約へ 

以上の結果、エチレンとスチレンモノマーの状況は以下の通りとなる。

 エチレン 

工場別能力一覧表 定修スキップ年   単位:千トン/年
会社名 工場 2001年 2012/12/末 変更後  

三菱化学

鹿島1

410 390 0 2014年停止

鹿島2

491 490 540  
四日市 270 - - 2001/1 停止
水島 496 494 494
 -250

西日本エチレン
  有限責任事業組合

2016年春
 いずれかを全停止
 

(1,667) (1,374) (1,034)
旭化成 水島 504 504 504
*   -250
三井化学 500 500 500  
千葉 612 612 612

千葉ケミカル製造
有限責任事業組合
 

(京葉) (192) (192) (  0)
(1,304) (1,304) (1,112)
出光興産 千葉 413 413 413
徳山 498 688 688  
(911) (1,101) (1,101)  

住友化学

千葉

415 415 0 2015年停止
(京葉) (192) (192) (384)  
(再計) (607) (607) (384)  

丸善石油化学

千葉

525 525 525  
(京葉) (384) (384) (384)
(再計) (909) (909) (909)

京葉エチレン

丸善石化

千葉

384 384 384  
住友化学 192 192 384
三井離脱
三井化学 192 192 0
合計 (768) (768) (768)  

東燃化学

川崎

515 540 540 Exxon 少数株主に
日本ユニカー100%化

JX日鉱日石エネルギー

川崎

443 443 443  

東ソー

四日市

527 527 527  

昭和電工

大分

635 691 691  

合計

8,022 8,000 6,745  


西日本エチレン有限責任事業組合の集約は、どちらを止めるか未定のため、三菱化学・旭化成各250千トンの減で表示した。

 SM 

2011年3月に三菱化学(鹿島)、2012年に電気化学(千葉)が停止、千葉スチレンモノマーが改組している。

会社名 工場 2012/12   変更後 備考

旭化成

水島 

678

678

2004/2 330千トンプラント稼動
2007 125千トン停止

出光興産

千葉

210

210

徳山

340

340

合計

(550)

(550)

(新日鐵化学)

大分

0 0

2011/8 SM事業をNSスチレンモノマーに移管

NSスチレンモノマー 大分 422 422 新日鉄化学51%/昭和電工49%

(電気化学工業)

千葉

0

0

2012 停止 240千トン

千葉スチレンモノマー

千葉

270

270

電気化学60%/住友化学40%
2012/4 住友化学離脱

日本オキシラン

千葉

412

 0

住友化学60%/ライオンデル・ケミカル40%
PO併産  2015年停止

太陽石油化学

宇部

335

335

04/1/1 三井化学から譲受け

(三菱化学)

鹿島

0

0

2011/3 停止 371,000トン

合計

 2,667

 2,255

 


ーーー

エチレン能力は現状の800万トンが675万トンに、SMは一時の340万トンが225万トンに減少する。

これはグラフで見られるように、エチレン製品(エチレン換算)とSMの内輸込みの数量である。

輸出は多くの場合、操業度維持のための赤字輸出である。また、サウジなどでは今後、高加価値製品の生産が始まり、米国では安価なシェールガスを利用した生産も始まるため、日本からの輸出は減少する。

日本の石油化学が生き残るためには更なる設備廃棄が必要であるが、出来るであろうか。


水島の三菱化学と旭化成の西日本エチレン有限責任事業組合はエチレンプラントの集約を決めるが、千葉の三井化学と出光興産の千葉ケミカル製造有限責任事業組合の場合は、エチレン集約を行わないと思われる。
三井化学が京葉エチレンから脱退し、これまでの引取義務 192千トンを住友化学に譲り、実能力が減るためである。

あまり報じられていないが、週間ダイヤモンド(2013年2月14日)によると、三井化学は住友化学と丸善石油化学に対し、 千葉地区の4社(3社プラス出光興産)のエチレンの大統合の提案をしていたという。最新鋭プラントである京葉エチレンを停止するのが条件で、これが通らなければ京葉エチレンから離脱するとした。

住友化学と丸善石油化学がこれを断り、現在の形になったとしている。

その他の企業についてもなかなか難しい。

これまで何度も述べてきたが、日本で設備処理が柔軟に出来ないのは雇用問題があるからである。
日本では他国のように人員整理が簡単には出来ない。

東洋酸素事件の東京高裁判決(1979)では整理解雇の要件は以下の通り。
  ・事業部門を閉鎖することが企業の合理的運営上やむを得ない場合であること
  ・従業員を他の事業部門の同一又は類似職種に充当する余地がないこと
  ・具体的な解雇対象者の選定が客観的、合理的な基準に基づくものであること
  その後の判例では「労働組合との協議」が条件に加えられた。

具体的には、このままでは倒産もありうるというような状況でないと、解雇が認められない。

新規事業で多人数を使う事業は少なく、停止するエチレンと誘導品の人員を、他の業務に回すのは容易ではない。

過去にエチレンを止めたのは三菱化学の四日市だけであり、今回も 他部門にひろく展開する三菱化学と住友化学及び旭化成である。

住友化学の場合、千葉工場の従業員約1000人のうちの4分の1程度を他工場に配置転換するが、他社ではなかなか難しい。
石油会社の場合は、本業の石油精製設備のスクラップも進める必要があり、こちらでの人員吸収は難しい。


住友化学の場合は、今後、バルク製品はサウジで展開し、シンガポールを高付加価値製品の供給拠点とし、千葉工場はマザー工場として、生産技術・製品・ノウハウの発信拠点としても活用していく という絵を描いており、不採算の誘導品は大胆に停止する。

三菱化学も同様に、不採算の誘導品の処理を進め、高付加価値化を進めている。

他社も早く手を打たないと、ジリ貧になる可能性がある。



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