Dow Chemical、LNG輸出問題で声明

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米国エネルギー省は11月15日、Freeport LNGに対しFTA非締結国向けの輸出量の増量を認めた。


2013年5月に1.4 Bcf/d(年間900万トン)までの輸出を認めたが、今回、1.8 Bcf/d 
(年間1200万トン)への増量を認めた。

これを受け、Dow Chemicalは11月15日に以下の声明を発表した。

Dowは今回のエネルギー省の決定をチェックしている。
Dowは
FTA非締結国向けのLNG輸出承認について、慎重な、計画的な、バランスの取れたやり方を提唱する。
今回の承認で、合計承認量は約
6.7 bcf / dayにもなった。
これは現在の米国の消費量の10%にもなり、多くの米国の製造業者が適正輸出量の上限と考える。

Dowの Andrew Liveris会長兼CEOによれば、「世界中の企業が安い天然ガスを利用するため米国に投資しており、米国経済の成長と雇用創出に役立っている。米国はこの戦略資源について、今後もこれまで同様に非常に注意深く扱う必要がある。最近のデータが示すように、米国の天然ガスを大量に海外に輸出すると、消費者のエネルギー価格が上昇し、製造への投資が抑えられ、経済成長と雇用創出を妨げる」。

JP Morgan は最近、天然ガス価格は2016年までに3倍になると予想、ConocoPhillips は天然ガス価格は次の4年で30%上昇するというエネルギー省の予測をはるかに上回るだろうと予測している。
適正輸出量の上限 7.0 bcf / day に近づいた今、米国経済の利益を最大にし、悪影響を最小にするべく、エネルギー省のデータを再検討することが必要である。

FTA非締結国向けのLNG輸出について、これまでエネルギー省が承認したものと承認待ちのものは以下の通り。 
天然ガス液化設備の建設が必要なため、実際の輸出開始は2016年以降となる。

会社名 立地 概要 輸出契約
Cheniere Energy

 

Sabine Pass
(Cameron Parish, LA)
承認:2011/5
数量:2.2 Bcf/d(年間1600万トン)
期間:20年間
BG Group、Gas Natural (スペイン)、Gail(インド)、
Kogas(韓国)
承認時は韓国はFTA未発効
 
2012/2/24 米国からのLNG輸入問題 
Freeport LNG

 

Freeport
(Quintana Island, TX)
承認:2013/5
数量:1.4 Bcf/d(年間900万トン)
  
→1.8 Bcf/d (年間1200万トン)
              (2013/11承認)
期間:20年間
大阪ガス、中部電力、 BP Energy
2013/5/20 米エネルギー省、日本へのLNG輸出を許可
Lake Charles Exports Lake Charles
(Lake Charles, LA)
承認:2013/8
数量:2.0 Bcf/d(年間1500万トン)
期間:20年間
BG Group
2013/8/12 米エネルギー省、非FTA締結国向けLNG輸出で3件目の承認
Dominion Energy Dominion Cove Point
(Chesapeake Bay
 in Lusby, Md.)
承認:2013/9
数量:
0.77Bcf/d 年間525万トン
期間:20年間
住友商事(東京ガス・関西電力)、
Gail(インド)
2013/9/13 米、日本向けLNG輸出 2件目を承認
(以下 認可待ち)
Cameron LNG Hackberry, LA 数量:1.7 Bcf/d(年間1200万トン) 三井物産、三菱商事、GDF Suez
Jordan Cove LNG Port of Coos Bay, Oregon 数量:1.0 Bcf/d(年間 600万トン) 未定


米国ではNatural Gas Act of 1938 により、天然ガス輸出入にはエネルギー省の許可 が必要とされており、輸出許可の判断基準には公共の利益に反するか否か、輸出先国で内国民待遇が与えられるかどうかがある。
米国は輸出承認で米国とFTAを締結している国とそれ以外で差をつけており、FTAを結んでいない日本はガス輸入のハードルが高い。

米エネルギー省は2012年12月5日、LNGに関する報告書を発表、LNG輸出の米国経済への影響を、輸出の量、グローバルな市場状況、天然ガスコスト等々、いろいろな前提で検討したが、全てのシナリオで、LNG輸出は輸出をしない場合と比べ、ネットで経済的メリットがあるとしている。

Dow Chmicalはこれに強く反発、逆にExxonMobil等は賛成に回り、論戦が行われている。

2012/12/7 米エネルギー省、LNG輸出に向けての報告書を発表
2012/12/12 Dow、エネルギー省のLNG輸出に関する報告に反論
2013/1/30 米国の天然ガス輸出論争、激化
2013/2/5 米国のLNG輸出規制はGATT違反?

Dow Chemical は、本年に入り3件が承認され、そのうちの1件については増量が認められたため、
今後更に承認が続くことを懸念し、牽制したとみられる。

ーーー

米国の天然ガスの価格推移は以下の通り。

 ソース:http://ecodb.net/pcp/imf_usd_pngasus.html

現在、100万BTU当たり4ドル弱である。
これをLNGにして日本に送る場合、液化費用が約3ドル、輸送費が約3ドルかかり、10ドル程度になる。
(輸送費は豪州やカナダの西海岸の場合は、1.2ドル前後となる)

現在の低価格の理由は以下の通り。

1) 天然ガスは都市ガス、発電その他に使われるが、発電所建設(石炭火力からの代替)には時間がかかる。
     輸出についても、液化設備の建設が必要で、すぐには輸出できない。

2) シェールガス採掘に当たり井戸を掘る権利を土地所有者から得ているが、この権利が高騰している。
   天然ガス価格が安いからといって掘るのをやめる訳にいかない。掘るのをやめれば権利を失うことにもなる。

この結果、一時的に需要と供給がアンバランスとなり、価格が低下している。
上記の価格は十数本のパイプラインが集積するルイジアナ州のHenry Hubの価格だが、消費が少ない北部では価格ははるかに安い。

現在の価格では、ほとんどの業者は赤字とされており、GMX ResourcesはChapter 11の申請を行った。

2013/4/5  米国のシェールガス開発会社が破産法申請 

採掘により、シェールガスとシェールオイル及び天然ガス液(NGL)が出るが、土地によりガスとオイルの比率が大きく異なる。
シェールオイルが多く出るところはシェールオイル(原油価格スライド)の利益でシェールガスの赤字をカバーできるが、GMXの場合はシェールオイルが少なく、破綻した。

一般的に天然ガス価格は7ドル程度まで上昇すると予想されている。Dowは輸出を制限することで、これを抑えようとしているもの。
(この場合、日本向けのLNG価格は13ドル程度となる。現状は16ドル弱)

ーーー

現在、シェールブームで米国で石油化学計画が林立しているが、これはシェールオイル・ガスに副生する天然ガス液(NGL)から得られるエタン(及びプロパン)を利用するものである。

NGLは採掘現場のガス処理設備で天然ガスと分離され、全国で10箇所ほどあるNGL Fractionation (分別)設備に送られ、エタン、プロパン等に分離される。

エタン価格は天然ガス価格とは別に需給で決定されており、天然ガス価格の変動には関係ない。
(エタン価格も現在非常に低い水準にある。)

DowがLNG輸出に反対するのは燃料価格の高騰を恐れているものと思われる。

 

なお、Dowは以下の理由で天然ガス輸出に反対している。

製造業は米国で最大の天然ガスのユーザーであり、天然ガスを使って、他のどのセクターよりも多くの雇用を生み、より多くの価値を生み出している。
製造業で使われたエネルギーの価値は、バリューチェーンを通じて多くの高付加価値の製品をつくることにより、20倍にも拡大される。

これに対して、LNGとしてエネルギーを輸出すれば、その価値分しか得られない。

米国の新聞にこれを皮肉る意見が投稿されていた。

Dowが天然ガスの輸出に反対するのなら、米国で製造した製品は中国などに輸出せず、米国で販売して最終製品にまで加工すべきだ。
同社はレジンなどを安く中国に輸出し、中国はそれを使った安い製品を米国に輸出して米国メーカーを淘汰しているではないか。

最終製品まで米国で製造してこそ、「製造業で使われたエネルギーの価値は、バリューチェーンを通じて多くの高付加価値の製品をつくることにより、20倍にも拡大される」。

 

 

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