大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス、iPS細胞由来医薬品を共同開発

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大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス(旧称 日本網膜研究所)は12月2日、再生・細胞医薬事業に関する提携を発表した。

加齢黄斑変性等の眼疾患を対象としたiPS細胞由来網膜色素上皮細胞(RPE細胞)を用いるもので、世界初のiPS細胞技術を用いた再生・細胞医薬事業に向けたもの。

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RPE細胞は、網膜の外側にある一層の細胞で、主な機能は、血液網膜バリア、貪食能、栄養因子の分泌など。
これの異常が加齢黄斑変性(
age-related macular degeneration:AMD)である。

貪食能は隣接する視細胞から出る老廃物を貪食し、メンテナンスを行う機能で、これがうまく働かないと視細胞が損なわれ、視力低下につなが る。
またRPE細胞には、PEDF とVEGFという栄養因子を分泌して網膜を保護したり、外側から余計な血液成分などが入り込んでくるのを防ぐバリアとしての機能がある。

加齢黄斑変性は、欧米では失明原因の第1位、日本では失明原因の第4位となっている。 日本では50歳以上の人の約1%がかかり、高齢になるほど多い。

加齢黄斑変性には萎縮型(ドライ型)と日本に多い滲出型(ウェット型)がある。
ウェット型は、脈絡膜から異常な脈絡膜新生血管を生じ、網膜面に進展する。新生血管は脆弱であり
そのため出血、滲出物の貯留を認め、黄斑部の機能障害をきたし、偏視、視力低下などを来す。

現在、ドライ型には治療法がなく、ウェット型の現在の治療法(抗VEGF抗体薬)も根本治療でない。

ヘリオスはiPS細胞から生体内のRPE細胞と同じ形態と機能を持つRPE細胞を分化誘導することに成功している。

これを拡大培養し、RPEの懸濁液及びシートを作成し、それぞれドライ型、ウェット型の治療に使用しようというもの。



理化学研究所と先端医療振興財団は2013年7月30日、iPS細胞を使い、滲出型加齢黄斑変性の患者6人を対象に、目の網膜を再生する世界初の臨床研究を8月1日に開始すると発表した。2月に厚生労働省に計画を申請、7月19日に了承された。

理研の高橋政代プロジェクトリーダーは「新しい治療をつくるための第一歩。これからが長い道のりで、慎重に進めないといけないし、責任をひしひしと感じる」と決意を述べた。

ヘリオスがシートの作成を担当する。

網膜下の脈絡膜新生血管や傷害を受けたRPEを取り除いた後、iPS細胞から作製したRPEシートを移植用器具を用いて網膜下へ移植する。

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ヘリオス(Healios)は旧称 日本網膜研究所で、2013年9月に改称した。

Healiosは、Helios(ギリシャ神話の太陽の神)とHeal(癒す、治す)の二つの言葉から構成され、難治性疾患治療の新たな希望の光と、疾患に侵された患者様を癒していきたいという願いが込められている。

ヘリオスは理化学研究所認定ベンチャーで、理化学研究所が発明した日本発の技術に係る特許の実施許諾に基づいて、加齢黄斑変性の新たな治療法を開発することを目指しており、さらにこの治療開発を端緒として、視細胞移植、網膜再生薬、検査法開発などにより、現代の難治性網膜疾患を治療可能な疾患にすることを目指す。

大日本住友製薬は、第三期中期経営計画において、細胞医薬/再生医療の事業化に向けて取り組みを本格化することを掲げており、ヘリオスとの提携が、将来の細胞医薬・再生医療領域での事業基盤の構築に寄与することを期待している。

京都大学iPS細胞研究所と大日本住友製薬は2011年4月、難治性希少疾患の治療法創成を目的とする5年間の共同研究を行うことについて合意し、共同研究契約を締結した。
研究期間は2011年3月〜2016年3月(5年間)で、両者は疾患特異的人工多能性幹細胞(iPS 細胞)を用いて、病気が進行するメカニズムを解明し、疾患特有の疾患関連シグナルを同定してその経路を阻害する治療薬を探索する。
大日本住友製薬は、両者の共同研究で探索した化合物の評価・最適化・合成展開を行う。

大日本住友製薬は11月29日、兵庫県神戸市のポートアイランドにある「神戸医療産業都市」にiPS細胞等を用いた再生医療及び細胞医薬の研究拠点を開設すると発表した。
再生・細胞医薬事業推進室の研究活動の本拠地として、最先端で高度な医療クラスターを形成しつつある神戸医療産業都市の4施設(神戸バイオメディカル創造センター、神戸キメックセンタービル、神戸臨床研究情報センター、先端医療センター)内に研究室を開設する。

日本網膜研究所と大日本住友製薬は2013年3月28日、大日本住友製薬が日本網膜研究所に15億円の出資をし、日本網膜研究所との間でiPS 細胞技術の実用化に関する連携に向け独占的協議を行うことについて、基本合意書に調印した。
その後の協議の結果、今回の共同開発契約を締結した。

今回の共同開発契約に基づき、両社は、iPS細胞由来RPE細胞を細胞医薬品として、国内での早期の使用を可能にすべく、早期の臨床試験着手および新薬事法下での加齢黄斑変性等の疾患を適応症とする製造販売承認取得を目指す。
ヘリオスは、実施許諾契約に基づき、大日本住友製薬より契約一時金として5億円、開発時マイルストンとして最大11億円を受け取る。

大日本住友製薬が提供する最大52億円の開発費用を基に、国内におけるiPS細胞由来RPE細胞による細胞医薬品の開発を共同で行い、ヘリオスが製造販売承認の取得および販売を行う 。

また、両社は、将来的に本共同開発によって製品化されるRPE細胞医薬品に関して、その製造や販売促進を両社で共同して行うため、合弁契約を締結した。
2014年2月を目途として、合弁会社を設立する。

共同開発契約の対象:

(1) 製品 : iPS 細胞由来RPE 細胞
(2) 適応症 : 眼疾患(滲出型加齢黄斑変性など)
(3) 地域 : 日本

合弁会社の概要:

(1) 会社名 : 未定
(2) 事業内容 :眼疾患領域における医薬品・医療機器及び再生医療等製品の製造販売等
(3) 株主構成 : ヘリオス 50%、大日本住友製薬 50%

*合弁会社は、共同開発で得られた成果をヘリオスと大日本住友製薬からライセンスを受ける。
  成果に伴う対価を合弁会社から両社へ均等に配分する。




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