ヘリオスとテラ、癌の免疫療法共同開発で基本合意

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世界初のiPS細胞を用いた再生医療の実用化を目指すヘリオスと、日本初の免疫細胞医薬品(がん治療用の再生医療等製品)の承認を目指すテラは、12月5日、業務提携に関する基本合意書を締結、iPS細胞を用いた癌免疫細胞療法の開発に向けた検討を開始する。

ヘリオスは理化学研究所認定のベンチャー企業で、加齢黄斑変性等の失明疾患に対して、iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞(RPE細胞)移植による新たな治療法の研究・開発を推進している。

2013/12/4  大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス、iPS細胞由来医薬品を共同開発

テラは、高品質で安定的な細胞培養技術を有しており、樹状細胞ワクチン療法等のがん免疫細胞療法の技術・ノウハウを、大学病院をはじめとした全国32ヶ所の医療機関に提供している。

社名のテラ(tella)は、「tera: 兆」、「tell: 伝える(発信する)」、「terra: 地球(グローバル)」の三つの言葉がその語源となっており、「人体を構成する60兆個の細胞を科学する企業」、「世界に向けて発信するグローバルなヘルスケア企業」という意味が込められている。

テラは、 日本初の免疫細胞医薬品として、樹状細胞ワクチン『バクセル®(Vaccell)』の承認を得るための取り組みを推進している。

改正薬事法が11月20日に参院本会議で可決、成立した。
公布から1年以内に施行、薬事法は改称し、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(「医薬品医療機器等法」)になる。
iPS細胞など細胞を使った治療を規制する再生医療安全性確保法と、細胞シートなどの再生医療製品や医療機器の承認手続きを簡素化する。

従来は、治療のために細胞を培養することは医師の治療行為の範囲で、企業が受託するのは禁止されていたが、今後は企業が承認を得て、培養することが可能となる。
テラは、承認を得られれば
『バクセル』を量産する。

テラの樹状細胞ワクチン療法の仕組みは下記の通り。

癌細胞は、正常な細胞が変異したもので、正常な細胞とは異なる目印(抗原)を持つ。

免疫細胞の一つである樹状細胞(dendritic cell)は抗原提示細胞で、癌細胞を異物として認識し、癌細胞を食べることで癌の目印を手に入れ、異物を攻撃するリンパ球(ナチュラルキラー細胞:NK細胞)に癌細胞の目印を伝達する。
この情報をもとに、リンパ球は癌細胞を狙って攻撃する。

樹状細胞ワクチン療法は、本来、血液中に数少ない樹状細胞を体外で大量に培養し、患者の癌組織や人工的に作製した癌抗原の特徴を認識させて体内に戻すことで、樹状細胞からリンパ球に癌の特徴を伝達し、そのリンパ球に癌細胞のみを狙って攻撃させる新しいがん免疫細胞療法。

テラは九州大学と共同で、単純かつ工業生産での取り扱いが可能と考えられる末梢血単核球から、一定品質および生物活性を示す樹状細胞を大量に増幅培養する方法を開発、九州大学と共同で特許出願を行っている。(特願2010-112588)

バクセル®(Vaccell)は、テラの登録商標で、「vaccine(ワクチン) + cell(細胞)」を語源とし、「細胞によるがんワクチン」を意味する。

人間が本来持っている免疫の力を高めて癌細胞だけを攻撃するため、正常な細胞までも攻撃してしまう抗癌剤などに比べて副作用が少なく、また、ワクチンは基本的に外来で注射するだけで、通院で治療できるといった利便性もある。

樹状細胞ワクチンはその製造が複雑かつ高価であることから、臨床試験の実施が容易ではなく、現在は保険外診療(自由診療)として提供されている。テラは「バクセル」の保険適用を目指している。


両社は、ヘリオスが有するiPS細胞を臨床応用するための技術・ノウハウと、テラが有する癌免疫細胞療法に関する技術・ノウハウを融合することで、最先端医療への貢献を目指す。

テラでは現在、癌患者本人の血液を採取し、2週間かけて樹上細胞を作製しているが、これをiPS細胞から作製できれば、血液採取が不要になり、治療を始めるまでの期間の短縮につながる。

両社はiPS細胞を用いた癌免疫細胞療法の開発に向けた検討を開始する。

テラは2013年4月にヘリオスに1億円を出資している。


 

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