イタイイタイ病被害者救済で被害者団体と三井金属鉱業が合意

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富山県神通川流域で発生したカドミウム汚染による公害病・イタイイタイ病で、原因企業の三井金属鉱業と地元の被害者住民団体の神通川流域カドミウム被害団体連絡協議会は12月17日、これまで賠償対象でなかった腎臓障害「カドミウム腎症」発症者の救済を盛り込んだ合意書を交わした。

三井金属鉱業発表:

今回の全面解決におきましては、
神通川流域における汚染田復元工事が完了したこと、
現在および将来の認定患者・要観察者に対する賠償を継続すること、
公害防止対策の継続により神通川の現在の水質レベルを維持していくこと、
認定患者・要観察者程度ではないもののカドミウムにより腎機能に一定の影響がある方を対象とした健康管理支援制度を当社が実施すること、
全面解決に当たり当社が被団協に解決金をお支払いすること
を確認しております。

二度とこのような問題を発生させないため、被団協の皆様との「緊張感ある信頼関係」をもって、公害防止対策のさらなる充実を図ってまいる所存であります。

神岡鉱山は2001年に亜鉛、鉛鉱石の採掘を中止、排水処理を徹底し、2012年3月にカドミウムで汚染された農地の復元が完了している。

ーーー

イタイイタイ病は、富山県の神通川流域で1911年ごろ(厚生省推定)から発生した。
神岡鉱山は1905年に亜鉛鉱石の採掘を始めている。

1961年6月に萩野昇医師らがカドミウム原因説を学会で発表した。
体のあちこちが骨折し、患者が「痛い、痛い」と泣き叫んだことから名付けられた。海外でもItai-itai diseaseと呼ばれる。

水俣病、新潟水俣病、四日市ぜんそくと並んで日本の四大公害病の一つ。

患者らは三井金属鉱業を相手取って訴訟を行った。

第一次訴訟では、患者と遺族が、加害責任を明らかにするため提訴し、患者1人につき400万円、死者1人につき500万円の慰謝料を求めた。

1971年6月30日に富山地裁は原告勝訴の判決を出した。

神岡鉱業所からの廃水が神通川上流の高原川に長期間、放流されたことによって起きた、イタイイタイ病の主因はカドミウム、被告側は鉱業法109条により損害賠償責任を有する とし、近年の死者には500万円、それ以前の死者および生存患者には400万円の支払いを命じた。
因果関係の立証には必ずしも科学的な証明が必要ないとした。

控訴審で名古屋高裁は1972年8月9日、慰謝料として死亡患者全員に1000万円、生存患者には800万円の支払いを命じた。

三井金属鉱業は上告を断念、原告勝訴が確定し、8月10日に、イタイイタイ病の賠償に関する誓約書、土壌汚染問題に関する誓約書、公害防止協定が締結された。

第2次~第7次訴訟は併合されたが、会社側は第1次訴訟と同じ損害賠償の支払を約束したため、原告側の取下げによって終結した。

三井金属鉱業は医療補償協定に基づき、下記の支払いを行う。

  賠償金 治療費・
入通院交通費
介護手当(寝たきり)
月額
温泉療養費
(年額)
認定患者 1000万円 全額 86千円(90千円) 90千円
要観察者(下記) 200万円 全額 56千円(90千円) 90千円

また、患者に認定されると公害医療手帳が支給され、国から医療費・障害補償費・療養手当などが給付される。
(1971年2月からは「公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法」が施行され、1974年9月からは「公害健康被害補償法」による医療救済等の措置が実施されている。 )

認定患者は2009年3月までに195名となっている。

しかし、問題が残った。

イタイイタイ病の患者の認定は環境省より委託されて富山県が行っているが、認定条件は環境庁の「公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法によるイタイイタイ病の認定について」(1972年6月に制定) で下記の通り定められた。

次の1)~4)のすべての項目に該当する場合には、イタイイタイ病と認定する。    

 1)カドミウム濃厚汚染地に居住し、カドミウムに対する暴露歴があったこと。
 2)次のⅢおよびⅣの状態が先天性のものではなく、成年期以降に発現したこと。
 3)尿細管障害が認められること。
 4)X線検査あるいは骨生検によって骨粗鬆症を伴う骨軟化症の所見が認められること。

なお、4)に至らないが、将来イタイイタイ病に発展する可能性を否定できないので経過を観察する必要のあるものを「要観察者」とする。

体内に入ったカドミウムは、腎臓の尿細管機能を低下させ、骨の維持に必要なリン、カルシウムなどが尿から体外に排出される。

カドミウムの蓄積で尿細管障害が起きた状態が「カドミウム腎症」と呼ばれ、重度になると、骨軟化症を起こしイタイイタイ病に至る。

カドミウム腎症だが、骨軟化症に至らない場合は、日常生活に支障がなくただちに健康被害にあたるとは言えないとされ、認定されない。
(三井金属鉱業は上記の通り、要観察者に対しては補償を行っているが、それ以外の患者には行っていない。)

しかし、尿細管障害者の死亡危険度は、障害のない人たちに比べて高いとする研究結果もあ り、研究者からは「国の消極的な立場が救済を妨げてきた」との批判が繰り返されてきた。

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カドミウム腎症の救済を含めた全面解決に動き出したのは、汚染土壌の復元にめどがつき始めた2009年7月で、神通川流域カドミウム被害団体連絡協議会から申し入れをしたという。交渉は12回に及んだ。

三井金属鉱業は、1975年以前に汚染地域に20年以上住んだことがある人のうち、腎機能悪化の指標であるたんぱく質「β 2ミクログロブリン」の尿中濃度が一定値以上の人を対象に、「健康管理支援」の名目で、1人あたり一時金60万円を支払う。

「補償」という言葉を避け、「健康管理支援」としたのは、国が健康被害として認めていない症状に補償するのは、株主への説明がつかない、との懸念。
腎臓に一定の影響が出た人が保健指導を受けたり、将来イタイイタイ病に発展したりしないよう、健康管理を支援するための一時金なら「株主への説明ができる」としている。

居住歴を満たすのは約8千人で、対象者は数百人程度が見込まれる。来年4月から申請を受け付ける。


 

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