米債務上限上げ法案可決 デフォルト回避確定

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米議会上院は2月12日、連邦債務上限を引き上げる法案を賛成多数で可決した。下院では11日に可決済みで、オバマ大統領の署名を経て成立する。

案は、歳出削減などに関する条件を設けずに、債務上限の適用を2015年3月まで凍結するもので、その間は自由に国債を発行できる。
これにより2月末にも懸念されていたデフォルト(債務不履行)は回避された。

下院多数派の野党共和党は、退役軍人に対する年金削減の見直しを前提に上限を引き上げる法案を検討していた。
しかし、もっと厳しい条件を求めるTea Partyなど党内保守派などを抑えられず法案提出を断念し、「無条件の引き上げ」を求める与党民主党と協力して、超党派で法案を通す方針に転換した。

共和党はこれまで、Tea Partyなど党内保守派の主張を入れて厳しい条件抗争を続けてきたが、デフォルトを「人質」に取って譲歩を引き出す強硬姿勢が世論の批判を招いたため、2014年11月の中間選挙を考え、方針を転換した。

ベイナー議長は、自身を含め共和党は法案可決に必要な「最低限の支持票」しか投じないとし、民主党が大半の賛成票を確保する必要があると言明した。

下院の結果は下記の通りで、民主党系からは2名の反対と5名の棄権が出た。共和党からは28名が賛成した。

  賛成 反対 棄権 合計
民主党系 193 2 5 200
共和党 28 199 5 232
合計 221 201 10 432


米議会では党議拘束がなく、多数を押さえていても法案が通せるとは限らない。

日本のような「賛成多数、可決」などはなく、全ての法案への各議員の投票結果が新聞に開示される。
議員が公約に反する投票をすると、次期選挙で負ける恐れがある。

このため、各議員はそれぞれの判断で投票する。
特に共和党内のTea Partyグループは増税には絶対反対であり、Defaultになっても構わないとしている。

上院では共和党保守派のTea Party系の一部議員がフィリバスター(審議妨害)を画策したが、共和党指導部の協力で審議打ち切り動議が可決された。

上院審議打ち切り動議:

  賛成 反対 棄権 合計
民主系 55 0 0 55
共和 12 31 2 45
合計 67 31 2 100


上院にはフィリバスターの制度があり、長時間演説を続けて審議を妨害できる。
これを避けるには、上院の3/5以上(60人以上)による打ち切り決議が必要で、共和党の一部の賛成が必要となる。

上院の採決の結果は以下の通りで、党勢をそのまま表している。

  賛成 反対 棄権 合計
民主系 55     55
共和   43 2 45
合計 55 43 2 100

ーーーーーーーーーー

連邦政府の債務については、 1917年成立の公債法(Second Liberty Bond Act)で上限が定められている。
その後、順次引き上げられている。

最近の動きは以下の通り。

2011/5 14.29兆ドルの上限に達する
 以降、つなぎの資金繰りで対応
 (8月2日までに引き上げないとデフォルトに)
2011/7/31 債務上限を16.4兆ドル引き上げ
 条件として今後10年間で2.5兆ドルの財政赤字を削減(達成できないと自動予算カット)
  2011/8/3  米国、債務上限引き上げ、デフォルト回避 
2012年末 16.4兆ドルの債務上限に達する
 政府支出の強制削減
+大型減税期限切れ(「財政の崖Fiscal Cliff)」
2012/12/31 「財政の崖」、当面の回避案で合意
     
2013/1/4   米国、「財政の崖」問題を当面回避
2013/2/4 法定上限を暫定的に引き上げる法案成立
 2013年5月18日まで
2013/3/1 政府予算の強制削減措置 発効
2013/3/21 暫定予算案を承認
 850億ドルの歳出強制削減を維持、削減に一定の裁量
    2013/3/25 米議会が暫定予算可決
2013/5 約16兆7000億ドルの債務上限に達する
   
2013/8/29 米国債、再びデフォルト懸念
2013/10/1 予算成立せず、政府機関の一部閉鎖開始
    2013/10/1   米国、予算成立せず、政府機関を一部閉鎖
2013/10/16 債務上限を来年2月7日まで引き上げ 、政府の一部閉鎖も解消
    2013/10/17 速報 米国、政府デフォルトを直前に回避 
2013/12/18 2014、2015会計年度(2013/10~2015/9)の2年分の予算案成立
 
2013/12/18  米国、予算案成立の見込み → 成立
2014/2/7 債務上限  期限到来(約17兆2010億ドル)
 やりくり期限は2月27日
2014/2/12 債務上限の適用を2015年3月まで凍結する法案を可決


米国の政治の混乱の理由は上下両院のねじれにある。

上院議員の定数は、各州2名ずつ、合計100名で、任期は6年、2年ごとに約3分の1ずつ改選となる。
下院議員の定数は435で、10年に一度、国勢調査の人口比率で各州に配分する。任期は2年。

最近の状況は以下の通り。(当選時)

  上院   下院  
民主系  共和系  民主系 共和系
Bush
 第一期
'00/11 50 50 214 221 上院均等、下院与党
'02/11 49 51 206 229 上下院 与党
Bush
 第二期
'04/11 45 55 203 232
'06/11 51 49 233 202 上下院 野党(イラク戦争への批判など)
 
Obama
 第一期
'08/11 59 41   257 178 上下院 与党 2010/3 医療保険改革法案 成立
'10/11 54 46 196 239 上下院ねじれ
Obama
 第二期
'12/11 55 45 202 233
'14/1現在 55 45 200 232
'14/11          


Obama政権では、当初は与党民主党が上下院を押さえており、2010年3月には医療保険改革法案を成立させた。

しかし、2010年11月の中間選挙では下院で共和党が勝ち、上下院のねじれが発生した。

これまでも「ねじれ」はあったが、妥協が成立しており、今回のように混乱が継続することはあまりなかった。

Bob Woodwardの近著 The Price of Politics によれば、Obamaは大統領就任直後、共和党首脳に対し、話し合いで決めていきたいと述べた。
しかし、実際は民主党が上下院を押さえていることから、全て押し切った。

政権の初期、2009年から2010年まで大統領首席補佐官を務め たRahm Emanuel の口癖は、"We have the votes. Fuck 'em" (こっちが多数だ。やっちまえ!)であった。

中間選挙で下院を共和党が押さえると、状況は一転した。予算が通らず、政府機関が一時閉鎖されたのも、数度にわたりデフォルト寸前までいったのも、 当初の民主党のやり方に対する反発の影響が大きい。また、共和党内で Tea Party系の議員が急増し、増税絶対反対の強硬姿勢を取ったことも影響している。

共和党の上院院内総務 Mitch McConnell は「我々のやりたい最重要事はObama大統領を一期限りの大統領にすることだ」と述べた。
(「大統領が妥協するなら協力する。大統領が失敗するのを望んでいるのではなく、変わって欲しいのだ」と付け加えている。)

共和党は福祉予算を初めとする支出のカットと金持ち増税反対を終始、主張し続けている。
特に共和党内のTea Partyグループは増税には絶対反対であり、Defaultになっても構わないとし、強硬姿勢を貫いている。

Bush減税は当初、2010年末に期限切れとなったが、Obama大統領は11月の中間選挙の敗北を受け、公約に反し、「2年限り」として減税継続を認めた。

2012年末の「財政の崖」危機では、大統領が、
年収40万ドル超(夫婦合算申告では45万ドル超)の個人の所得税減税措置の打ち切りを勝ち取ったが、共和党は次は民主党が降りる番であるとして、強硬姿勢を続けている。


今回、下院多数派の野党共和党首脳は、2014年11月の中間選挙のことを考え、方針を転換した。



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