Roche、米バイオ医薬品 InterMune を83億ドルで買収へ

| コメント(0) | トラックバック(0)



スイス製薬大手Roshe Holding AGは8月24日、米バイオ医薬品のInterMune Inc.を現金83億ドルで買収することで合意したと発表した。

両社の取締役会はすでに買収合意を推奨しており、Roche は1株74ドルでTOBを行う。

この価格は8月22日の終値の38%増であるが、実はInterMuneが身売りを含めた経営戦略上の選択肢を金融機関と協議しているとの関係筋情報が8月13日に報じられ、株価が上昇していた。報道直前の8月12日の株価に対しては 63%のプレミアムとなる。

実際に RocheがSanofi、GlaxoSmithKline、スイスの研究開発型製薬企業 Actelion などとの価格競争に勝った結果だとされている。

InterMuneは米カリフォルニア州に本社を置き、患者数の少ない希少疾患に強みを持つ。

肺の細胞壁が硬く厚くなり、呼吸困難に陥る難病の特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis)の治療薬Pirfenidone(製品名 Esbriet)を開発してきた。
2011年2月に欧州で承認を取得、2012年12月にカナダでも承認を得た。米国では現在、FDAが審査中。

Pirfenidoneは塩野義製薬が商品名ピレスパ(Pirespa)として、日本で2008年から、韓国で2012年から販売している。

塩野義製薬は2012年7月、InterMuneに対して、ロイヤリティーの支払いを求める訴訟を連邦地方裁判所に提起した。
EU においてInterMuneが申請資料の一部として塩野義の臨床データを用いて承認を取得したが、臨床試験データの交換に関する契約に基くロイヤリティーの支払いを拒絶していることから、契約の履行を求めるもの。

2013年2月に両社は下記により和解した。
1. InterMuneは、2013 年1 月から2021 年2 月までのEU におけるESBRIET®の売上高の4.25%に相当するロイヤリティーを塩野義製薬に支払う。
2. InterMuneが米国およびその他の地域(EU を除く)における新薬承認申請に、塩野義のある一定の臨床試験データを使用しない限り、当該国におけるロイヤリティーの支払いは発生しない。
3. 係属中の訴訟を速やかに取り下げる。

Rocheでは、この買収でRocheは肺疾患治療薬をグローバルに拡大・強化できるとしている。

アナリストはEsbrietは2019年までに全世界で10億ドルの売上高になると予想している。


Rocheにとっては、2009年にGenentechの未保有の44.2%を468億ドルで取得して以来、最大規模の買収となる。

Roche は2009年312日、Genentech を完全子会社とすることで友好的に合意したと発表した。
Roche
Genentech 55.8%を保有しているが、残り全株を1株当たり US$95.00、合計468億ドルで買収し、完全子会社化する。

2009/3/16 RocheGenentech を完全子会社化

 ーーー

Bloombergは8月16日、関係者の話として、Rocheが中外製薬に100億ドルを追加出資して完全子会社化する方向で交渉していると報じた。

両社は2001年12月10日、アライアンスにかかわる基本契約に調印した。

・ 中外製薬と日本ロシュの合併 
・ Rocheによる中外製薬株式の50.1%取得(日本ロシュとの合併、第三者割当、TOBによる)
・ 中外製薬の日本における独占的地位とロシュ製品に対する第一選択権
・ Rocheの中外製薬製品に対する第一選択権
・ 中外製薬の診断薬事業の中核のジェン・プローブのスピンオフ(スピンオフ後、米証券取引所に上場)

その後、Rocheは出資比率を引き上げ、6月30日現在の持株率は59.89%。

これに対し、中外製薬は同日、「現在、当社内でのロシュによる完全子会社化についての検討や、ロシュと当社の間でこのような協議が行われているという事実はありません」との発表を行った。

Roche のCEOは今回、InterMune買収によって、中外製薬の完全子会社化に乗り出す可能性が低下するかどうかについては、コメントを差し控え、Rocheは引き続き事業の拡充を目的とするボルト・オン買収を進める方針と述べた。

Bolt-on は、自動車や機械などに、溶接や切断などの大幅な加工を必要とせず、ボルト留めで搭載や交換が出来ると言う意味合いから来た言葉で、買収企業の既存業務の拡充・強化を目的とした小規模なシナジー効果がある買収のこと

Rocheは欧米の大手間の再編からは距離を置きつつ、本年6月以降、数百億円規模の買収を3件決めている。

6月2日、Genia Technologiesの買収を発表
 (nanopore technologyを使ったDNA sequencing platformを開発)

7月2日、子会社のGenentechが米国のSeragon Pharmaceuticalsを買収すると発表
 (oral selective estrogen receptor degradersを開発)

8月4日、デンマークのSantaris Pharmaの買収を発表
 (Locked Nucleic Acid を開発)

Bloombergは8月25日、Rocheが中外製薬の未保有株の取得を見送ることを決めたと報じた。中外製薬の経営陣が完全子会社化に反対する姿勢を示したためという。


 


トラックバック(0)

トラックバックURL: https://blog.knak.jp/knak-mt/mt-tb.cgi/2618

コメントする

月別 アーカイブ