日本カーボン、炭化ケイ素連続繊維の生産能力を大幅増強

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日本カーボンは9月4日、 米GE、仏Safran S.A との3社のJVのNGS アドバンストファイバー」が、炭化ケイ素連続繊維「ニカロン®」(Nicalon) の生産能力増強のため、新工場の建設を決定したと発表した。航空機エンジン部材向けの需要拡大に対応する。

既設の富山の工場隣接地に新たに第二工場を建設するもので、最新の製造技術の導入により、原材料から紡糸、不融化(電子線照射)、焼成に至る一連の製造ラインを増設する。
能力は年産10トンで、特に高機能グレード製品の「ハイニカロン®」「ハイニカロン®タイプS」の生産能力を現状の10倍に拡大する。
2017年に操業開始の予定。

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この炭化ケイ素連続繊維は、千数百度の高温大気中においても耐熱性、耐酸化性に優れた繊維である。

炭素繊維は、軽量で高強度という特長があり、航空機の機体などに広く利用されているが、炭素は高温大気中では燃えてなくなるため、この環境下では使用できない。

一方、炭化ケイ素は軽量で高強度に加え、高温大気中でも高い耐熱性を有している。
炭化ケイ素繊維強化セラミックス材料は、ジェットエンジンや火力発電機のタービンなど高温部品への適用が考えられ、燃費の改善やエネルギー効率の向上が期待されている。


炭化ケイ素繊維(SiC 繊維)は1975年に
東北大学の矢島聖使教授などにより開発された。

ケイ素を含むポリカルボシランを高温で蒸し焼き(熱酸化)することにより不融化処理し、その後、1200~1500℃で焼成する。

普通に熱酸化するだけでは強度が高温で低下するが、その原因が、不純物として混入する酸素により繊維が部分的に熱分解することであることが分かった。

東北大学と日本原子力研究所では、不融化処理に当たり、電子線などの放射線を使い、繊維内への酸素の混入を減少させた。

日本カーボンでは、新技術開発事業団の助成を受け、原研との共同研究の後、1983年に「ニカロン」、1995年に「ハイニカロン」の生産に成功した。

  Nicalon Hi-Nicalon Hi-Nicalon Type S
酸素含有率(Wt%) 12.0 1.0 0.8


別途、宇部興産では、ケイ素にチタン(又はジルコニウム)を加えたセラミック連続繊維、チラノ(Tyranno)繊維を開発した。

開発当時の炭化ケイ素系繊維は、非晶質構造から成る繊維であったが、繊維の結晶化を抑制するため、東北大と宇部興産の共同研究で、チタン等の第二金属を添加した。

半導体グレードと耐熱グレードを扱っており、耐熱グレードでは二次加工品(各種織物の他、チョップ状繊維、フェルト、セラミックペーパー等)も提供する。

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GEとフランスのSafran は、1974年に50/50 JV のCFM International を設立、小型機向けとしてはこれまでにない革新的なテクノロジーが採用された航空機エンジン「LEAP」の共同開発を進めてきた。

「LEAP」は  小型機向けとしては、 下記のテクノロジーを採用している。
    ・ 軽量で耐久性の高い素材
    ・ 最先端の航空力学に基づく設計技術
    ・ 業界最高水準の環境技術など

日本カーボンは「ニカロン」の供給に向け、高圧タービン用のセラミック・マトリックス複合材(CMC )のテストに協力し、採用された
LEAP エンジンは、高熱部にCMC 部品を使用する世界で初めての民間航空機エンジンとなる。

LEAPエンジンは 2016~2017年に運行開始予定の下記に搭載される。
    LEAP-1A:エアバスA320 neo向け
    LEAP-1B:ボーイング737 MAX (独占提供)
        LEAP-1C:COMACの新型C919(独占提供)

ニカロンの需要は今後10年間で約10倍以上の急拡大が見込まれている。

日本カーボンとGE/Safran は、今後見込まれる需要増加に対応する形でニカロンの安定供給を確保し更に事業を拡大するためには、JVを設立して3社共同で事業を行なうことが最善であるとの結論に達し 、2012年4月に NGS アドバンストファイバーを設立した。

社名 NGSアドバンストファイバー株式会社
資本構成
日本カーボン  50%
GE  25%
Safran  25%
設立 2012年4月
工場 富山市
日本カーボンから新会社にニカロン事業を事業譲渡


今回、生産能力増強のため、第二工場の建設を決定したもの。


 


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