住友商事は9月29日、米国のタイトオイル開発などで2700億円の大幅な損失を計上すると発表した。
本年度の株主帰属損益は当初予想の2500億円が100億円と、2400億円の悪化となる。
内訳は下記の通り。
計上損失 米 タイトオイル -1700億円 保有資産譲渡に伴う減損
豪 石炭 -300億円 石炭価格下落に伴う減損 ブラジル 鉄鉱石 -500億円 今後の市況、事業の動向 米 タイヤ事業 -200億円 今後の市況、事業の動向 (合 計) -2700億円 税効果等 300億円 株主帰属損益 -2400億円
それぞれの状況は下記の通り。
1)米国のタイトオイル
タイトオイル開発
タイトオイルはシェールオイルとも呼ばれる。
シェールガス開発と同じ水平掘削・水圧破砕技術を用いて頁岩層(シェール層)、石灰岩層(ライム層)、浸透率の低い砂岩層等から原油を抽出する事業で、副産物としてNGL、天然ガスが生産される。
住友商事は2012年8月、米国の独立系石油ガス開発会社であるDevon Energyがテキサス州Permian Basinで進めているタイトオイル開発プロジェクトに参画する契約を締結した。
プロジェクトの概要 ・オペレーター : Devon Energy ・開発対象地域 : 米国テキサス州の13郡に跨る地域 ・開発計画 : プロジェクトライフは2012年より30年超を見込む ・生産物の割合 : 原油 6割、NGL 2割、天然ガス 2割 住友商事の参画 ・参画比率 : 30パーセント ・取得対象資産 : Devon社の既存資産(リース権、生産中の原油生産井、付帯中流設備) ・取得リース権 : 195,000エーカー(約790平方キロメートル) ・権益取得対価 : 約1,365百万米ドル ・住友商事はDevon向けに油井管を約20年間供給してきた実績がある。
住友商事は、ケーブルテレビ、スーパー、ドラッグストアなど「非資源」分野に強く、「資源」分野は弱かった。
このため、事業バランスを考え、資源分野の資産を現在の15%から2019年度(創立100周年)までに20%に引き上げる計画で、シェールへの投資を決めた。今までに約19億ドルを投資している。
今後、「中期計画で見直す必要がある」としており、資源分野の縮小もありうる。
今回の処理
北部地域(約172千エーカー)については、投下資金を回収するほどの生産量が見込めないと判断、Devonと共同で売却する。
売却先、売却額等 詳細は未定だが、資産価値を見直し、固定資産評価損 約1700億円を計上する。南部地域(約47千エーカー)は現時点では保有継続の予定。
2)豪州の石炭
石炭価格下落による減損 300億円
うち、Isaac Plains炭鉱については2015年1月末をもって操業停止し、休山することを決定した。
簿価 100億円を減損する。住友商事は2012年7月、豪州資源会社 Aquila Resources Limited の子会社が保有するQueensland州のIsaac Plains炭鉱権益の全て(権益全体の50パーセント)を、総額4億3千万豪ドル(約335億円)で取得した。残り50%はVale Australia が保有している。住友商事はAquila社が同じくQueensland州に保有する探鉱権益(合計:最大21鉱区)に20~50パーセント参画する権利を取得することについても、合意した。
Isaac Plains炭鉱は2006年に生産を開始し、年間生産能力280万トン(内、約70パーセントが鉄鋼用の原料炭、約30パーセントが電力用の一般炭)の露天掘りの炭鉱で、日本を含めアジアの需要家に石炭を供給してい る。
3) ブラジルの鉄鉱石
今後の市況、事業の動向によっては減損の可能性あり。今回 500億円の減損を想定(金額は未確定)住友商事は2010年9月28日、ブラジル鉄鋼大手Usinas Siderurgicas de Minas Gerais S.A. (Usiminas) が設立する鉄鉱山会社 Mineração Usiminas S.A. (MUSA) の第三者割当増資を引き受け、30%出資することにつき、最終合意した。
2010/10/4 住友商事、ウジミナスの鉄鉱山子会社に出資
4) 米国タイヤ事業
今後の市況、事業の動向によっては減損の可能性あり。今回 200億円の減損を想定(金額は未確定)
住友商事の子会社で交換用タイヤ販売および自動車修理・メンテナンス事業会社のTBC Corporationは2012年5月、 自動車修理・メンテナンス事業会社の Midas Inc.を総額約3億1千万ドルで買収した。TBC Corporationは米国内に56カ所の倉庫と、直営とフランチャイズを合わせて約1200店舗を有する が、Midasは米国、カナダの1500店舗を含め、14カ国で2250店舗以上を展開する世界でも最大級の自動車修理・メンテナンス事業会社。
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シェール関連では他社も減損損失を計上している。
1)伊藤忠
伊藤忠はSamsonのシェール事業で2013年3月期に300億円弱の減損損失を計上、2014年3月期にも290億円を計上した。
Samsonでは開発資金の効果的使用のため、安定生産が見込まれる既開発地域に集中、選択と集中の観点から未開発地域の再評価を行っている。伊藤忠は2011年11月、Kohlberg Kravis Roberts(KKR)などとともに、米エネルギーグループのSamson Investment Co. を買収すると発表した。
買収後、Samson Resourcesに改称した。KKRが60%、伊藤忠が25%、NGP Energy Capital ManagementとCrestview Partnersが残り15%を出資する。
伊藤忠の購入金額は10.4億米ドル(約780億円)。2011/11/28 KKRと伊藤忠など、米Samsonを72億ドルで買収へ
2) 大阪ガス
大阪ガスは2014年3月期において、同社が参加している米国テキサス州のPearsall Shale ガス・オイル開発プロジェクトが経済性に見合った油・ガスを取り出せず、現時点では生産性の大幅な改善が見込めないとして、減損損失290億円の計上を発表した。
2013/12/23 大阪ガス、米のシェールガス開発で減損損失計上
このほか、三井物産、丸紅も金額不詳だがシェール関連で減損損失を計上している。
また、米国のシェールガス開発会社GMX Resourcesは2013年4月にChapter 11の申請を行ったと発表した。
2013/4/5 米国のシェールガス開発会社が破産法申請
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