コスモ石油は11月6日、コスモ子会社のコスモエネルギー開発が保有するアブダビ石油の株式を新設分割により設立する会社に承継させ、新設会社の一部持分をスペインの総合石油会社のCEPSAに譲渡すると発表した。

新設JVに直接アブダビ石油の株式を譲渡すると、評価額と簿価との差額が課税されるため、アブダビ石油株式を持つ部分を分割して子会社を新設し、その子会社の株式の一部をCEPSAに売却する形をとる。

コスモ石油とCEPSAは共にアブダビ国営の投資会社 International Petroleum Investment Company(IPIC)グループの一員同士である。

IPICは2007年にコスモ石油に20%出資し、筆頭株主となった。
IPICはCEPSAの株式を順次取得し、2009年8月にTotal から48.83% を買収、最終的に100%をおさえた。

IPICについては、2009/2/24 アブダビのIPIC、カナダのNOVA Chemicals を買収

コスモ石油とCEPSAは2014年1月21日、IPICグループの一員同士として、相互の事業機会の発掘と事業化に向けた検討を実施するために提携し、中でも石油ガス開発事業において共同で新鉱区獲得や事業拡大に注力していくことで合意し、石油関連事業に関する戦略的包括提携合意契約を締結した。

両社は以下の作業部会を発足させ、それぞれのテーマに沿った検討を実施し、事業化を目指す。

(1)石油ガス開発作業部会   石油ガス開発事業分野での共同事業検討、技術ノウハウ共有
(2)戦略作業部会  石油ガス開発事業を除く石油関連事業分野での共同事業検討
             (石油化学、石油精製、マーケティング、その他)

このような戦略的提携関係の中、今回の決定に至った。

コスモ石油はコスモエネルギー開発を通じて、アブダビ石油、カタール石油開発、合同石油開発、コスモアシュモア石油の4社の株式を保有し、前3社では中東地域で石油開発事業に従事している。

中でもアブダビ石油における事業は最大規模であり、1969年に試掘1号井で出油に成功し、1973年から商業生産を開始した。
現在、ムバラス油田、ウム・アル・アンバー油田、ニーワット・アル・ギャラン油田の3油田から生産される原油をブレンドし、ムバラスブレンド原油として、全量をコスモ石油とJX日鉱日石エネルギーが引き取っている。

アブダビ石油は2012年に45年間の期限を迎えたが、2011年2月に30年更新の新利権協定を締結した。
既存のムバラスなど3油田の24千バレルに加え、同程度の生産量が見込めるヘイル油田の権益も取得した。

2009/1/23 アブダビ石油の油田権益 20年延長へ

新しく権益を取得したヘイル油田は、既存3油田と同程度の生産量を見込む大規模プロジェクトで、2016年度の生産開始を目指す。
このプロジェクトを成功裡に完了させ、アブダビでのビジネスを一層拡大させるため、CEPSAを資本面でもパートナーとして迎え入れることを決めた。

 
新設されるコスモエネルギー開発子会社の価値は、原油埋蔵量、生産計画及び利益計画等を元に両社がそれぞれDCF分析を実施し、1,086百万米ドルとした。

この結果、CEPSAへの20%持分の譲渡価格は217百万ドルとなる。

コスモ石油では関係会社株式売却益として現段階で 約140億円の特別利益を計上する見込み。