丸紅、原油価格下落等で1600億円の減損損失を計上

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丸紅は1月26日、1600億円の特別損失を計上すると発表した。

内訳は次の通り。

  減損損失 主な理由 損益
資源 北海の油ガス 5鉱区群 原油価格下落、開発コスト増加 -600億円
メキシコ湾沿岸(1鉱区) 原油価格下落 -175億円
米シェールオイル -175億円
チリ銅事業の減損損失 銅価格下落 -100億円
豪州石炭事業の減損損失 石炭価格下落 -50億円
非資源 Gavilon社「のれん」の減損損失 計画未達による計画見直し -500億円
合計 -1,600億円
税効果 400億円
損益合計 -1,200億円

豪州鉄鉱石事業については、高いコスト競争力があり、高品質の鉱石が期待できるため、減損不要と判断。


同社では、原油価格は45ドルを割ることは想定外で、社内見通しと大きく違ったとしている。

北海の原油開発では原油価格の下落に加え、現在進めている開発プラットフォームの改修コストが大幅に上昇することが分かった 。

同社の北海での原油開発は下記の通り。

2001 英領北海 Larch 油田  
2003/3 英領北海Sycamore油田 生産開始 丸紅 35.5%、残り Venture Production plc
2004/9 英領北海で操業するEnergy North Sea Holdings を買収
2009/11 英領北海 Shaw 油田 探鉱に成功 丸紅 41.03%、Talisman Energy(加)  58.97%
2010/9 ノルウェー領北海  権益取得 Norwegian Energy CompanyからOselvar鉱区15%、Enoch鉱区4.4%

メキシコ湾沿岸では、2003年3月にアラバマ州沖合のFairway Field の権益 35.7% をBPから買収した。残り64.3%はShellが保有し、操業を担当している。

また、2006年2月にPioneer Natural Resources からメキシコ湾の生産・開発・探鉱鉱区群の権益を取得した。

 

BPは2010年10月25日、Devon Energy から2010年3月に買収したメキシコ湾の深海で操業中のの4つの原油・ガス田の権益を、丸紅に650百万ドルで売却することで合意したと発表した。 (WTI原油の2010年の平均価格は80$/bbl)

2010/10/25 BP、メキシコ湾の4油田の権益を丸紅に売却 


シェールオイルについては、丸紅は下記に参加している。

Niobrara     2011/4/13 丸紅、米国のシェールオイル開発計画に参加

Eagle Ford  2012/1/9   丸紅、イーグルフォード・シェールオイル・ガス開発事業に参画

 

2013年に買収した米穀物大手Gavilonについては、見込んでいた買収後のシナジー効果が出なかったことが原因としている。

丸紅は2012年5月29日、北米で穀物・肥料・エネルギーのトレーディング事業を展開するGavilon Holdings の持分すべてを取得すると発表した。
買収価額は36億ドルだが借入金が20億ドル程度あり、合計で56億ドル程度となる。

丸紅は北・南米に穀物供給ソースを確保し、アジアを中心に販売力を強化してきたが、Gavilonが全米に持つ140を超える穀物集荷関連拠点を取り込み巨大な穀物集荷流通網を確保し、更に、Gavilonのブラジル、豪州、ウクライナなどの拠点を丸紅の持つ資産と組み合わせ、活用するとしていた。

中国商務部は2013年4月22日、丸紅による米穀物大手Gavilonの買収を厳しい条件付きで承認した。

2社の合併は「中国の大豆輸入市場への支配力を強め、競争を排除あるいは抑制する」可能性があるとし、
(1)中国向け輸出・販売業務を分離独立すること
(2)例外を除き、丸紅はGavilonから大豆を買い付けてはならない
(3)市場情報を交換してはならない――といった義務を課した。


本ブログでは、「買収の狙いは主に中国向け輸出のためと思われ、高額での買収の意義が失われることにもなる」とした。

2013/4/26    中国、丸紅の米穀物大手Gavilon買収を条件付きで承認

油価格に連動するように、銅、鉄鉱石などの金属や穀物などの国際商品相場が下落している。

丸紅経済研究所の調査によると、豪州産鉄鉱石の1月の中国向け船積み価格は1トン当たり71ドル。
2011年1月の184ドルから4割以下の水準で、2014年10月の81ドルから1割以上下落した。

銅も、ロンドン市場の1月の取引価格が1トン当たり6000ドル前後で、2014年10月から700ドル近く下げ、アルミも1月価格が同1788ドルと2014年10月より1割以上安い。

ーーー

2014年9月には、住友商事が米国のタイトオイル開発などで2700億円の大幅な損失を計上すると発表している。

 

損失

 
米 タイトオイル -1700億円

保有資産譲渡に伴う減損

豪 石炭 -300億円 石炭価格下落に伴う減損
ブラジル 鉄鉱石 -500億円 今後の市況、事業の動向
米 タイヤ事業 -200億円 今後の市況、事業の動向
(合 計) -2700億円  
税効果等 300億円  
株主帰属損益 -2400億円  


2014/10/1 住友商事、米国のタイトオイル開発などで大幅な損失計上

住友商事はアフリカで世界最大級のニッケル鉱山開発を進めているが、操業開始が大幅に遅れたほか、市況急落もあり、損失を計上する可能性がある。

 

この数年、中国の国営企業が猛烈な勢いで海外の資源に投資をしており、採算を度外視したものも多い。

そのなかで日本企業も資源への投資を拡大してきたが、高騰した製品価格を前提にした割高な投資が多い。

価格の下落が続けば、ほかにも減損損失の計上が行われると思われる。



 

 

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