アルゼンチンのYPF、中国のSinopecとエネルギー分野で提携

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アルゼンチンのYPF
SAは1月28日、Sinopecとの間でアルゼンチンでの石油とガス開発のJVを設立するMOUを締結した。

石油とガスの上流部門と恐らくは下流部門をもカバーするJVを設立するというもので、北京で調印された。
石油・ガス開発は在来型とシェールの両方をターゲットとする。

Sinopec は既にアルゼンチンに進出しており、同国で4番目の地位にある。

2011年2月に Occidental Petroleum からアルゼンチンの資産を25億ドルで買収している。
              
2010/12/17 Sinopec、Occidental からアルゼンチンの石油権益を買収

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アルゼンチン政府は2012年4月16日、スペインの石油会社Repsol-YPFのアルゼンチン子会社YPFを国有化する方針を明らかにした。
アルゼンチン下院は5月3日、国有化法案を可決した。上院は可決済で、大統領の署名で施行された。

YPFはもともとアルゼンチンの国有石油会社だった。1999 年の民営化に伴う政府放出株式をRepsolが購入した。
アルゼンチン政府は0.2%の"golden-share"を持ち、買収拒否権などの重要事項についての権利を持つ。

RepsolはYPFの買収後、アルゼンチンの億万長者Eskenazi 一族のPetersen Groupに25.5%を売却するなどで、Repsolは当時、YPFの57.4%を保有していた。
アルゼンチン政府はRepsolの持ち株57.4%のうち、51%分を接収した。

時価による買収ではなく、資産没収で、石油生産の低迷や投資をめぐり対立していたスペインの親会社Repsol-YPFから経営権を奪った。

2012/4/19  アルゼンチン大統領、スペイン石油大手傘下を国有化へ、スペインは反発

Repsolは2012年5月にニューヨークの裁判所に105億米ドルの損害賠償を求めて民事訴訟を起こし、2012年12月3日にアルゼンチン政府を相手取り、世界銀行傘下の投資紛争解決国際センターに仲裁を提訴したが、Repsolは2014年2月25日、アルゼンチン政府との間の合意書を取締役会が承認したと発表した。

合意書は、YPF の51%持分の接収の補償として50億米ドルを支払うとしている。

接収の結果、出資比率は政府が26.01%、州政府が24.99%、Petersenが25.5%、Repsol 6.4%、その他 17.1%となったが、その後、Petersenが破綻して債権者が取り上げ、債権者の1社のRepsolの持株は12%となった。

2014/3/3  アルゼンチン政府、YPF の接収で補償

なお、アルゼンチン政府の国有化発表直後に、SinopecがRepsolからYPFの買収で交渉しており、150億ドルで買収する非拘束の合意に達したと の報道があった。

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アルゼンチンには大量のシェールガス、シェールオイルがある。

2013年6月のEIA発表では、技術的回収可能量は下記の通りとなっている。

  シェールガス(単位:Tcf ) シェールオイル(単位:億バレル)
1 中国 1,115 ロシア 750
2 アルゼンチン 802 米国 581
3 アルジェリア 707 中国 322
4 米国 665 アルゼンチン 265
5 カナダ 573 リビア 261
6 メキシコ 545 豪州 175
7 豪州 437 ベネズエラ 134
8 南ア 390 メキシコ 131
9 ロシア 285 パキスタン 91
10 ブラジル 245 カナダ 88
世界合計 7,299 世界合計 3,450

アルゼンチンのシェールガスの70%以上はNeuquen Basinにある。
Vaca Muerta というジュラ紀と白亜紀の地層がシェールオイル、シェールガスを含んでいる。

YPFは2012年2月に、南アルゼンチンのVaca Muertaシェールオイル層に少なくとも230億バレルの油があることが分かったと発表した。そのうち、130億バレルがYPFに帰属する。

アルゼンチンはYPFの持つVaca Muerta油田の開発に外資を必要とするが、Repsol からの訴訟を恐れ、外資は参入をためらっていた。

Repsolとアルゼンチン政府の紛争解決により、開発が進んでいる。

現在の開発状況は下記の通り。

         http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/4/4960/1308_out_l_ar_ypf.pdf



鉱区 状況
YPF Chevron Loma La Lata/
Loma Campana
2013/7   鉱区開発契約
2014年中に16億ドルで170抗掘削
Chihuido de la Sierra Negra シェール探鉱を計画
Dow El Orejano 2013/9 シェールガス生産の契約
Dow Chemicalが1億2000万ドル、YPFが6800万ドルを投資
Petrolera Pampa
(同国)
Rincon del Mangrullo 2013/11  開発契約
第1フェーズでは、各 8150万ドル投資、第2フェーズではPetrolera Pampaが7000万ドルを投資
Petronas La Amarega Chica 2014/2 共同開発でMOU
 - Puesto Hernández 2014/2    PetrobrasよりPuesto Hernández鉱区の権益の38.5%を4070 万ドルで取得。
 -   2014年2月Apacheのアルゼンチンの全ての資産を買収(8億ドルの現金、借入金 5200万ドル肩代わり)

Apacheは2006年にPioneer Natural ResourcesのNeuquén、Rio Negro、Tierra del Fuego州の33鉱区の権益を 買収。
このうち1200エーカー(10鉱区)はVaca Muertaシェールに位置している。

GyP(同国)
Wintershall (BASF)
Aguada Federal 2014/1 Wintershallが50%権益取得
第1フェーズに1億900万ドルを投資
Americas Petrogas
ExxonMobil
Los Toldos I 2013年6月に坑井をパイプラインにつなぎ込み、ガスの販売を開始
Total La Escalonada、
Rincón La Ceniza等
2010年以降、権益取得

2014年2月以降、La Escalonada 鉱区とRincón La Ceniza鉱区はTotal 42.5%、Shell 42.5%、GyP 15%
Shell Sierras Blancas 出油、出ガスに成功。
投資額を2013年の1億70 0 0万ドルから、2 0 1 4年には3倍の5億ドルに増やす。
 
La Escalonada、
Rincón La Ceniza
2014年2月、Totalの鉱区に参加(42.5%)
Petrobras Puesto Hernández 2014年中にアルゼンチンに3 9億40 0 0万ドルを投じる計画で、うち32%はVaca Muertaシェールの探鉱・開発に充てる 。

2 01 4年2月、YPFにPuesto Hernández鉱区の権益の38.5%を4 0 7 0 万ドルで売却。
Pan American Energy
 
Lindero Astravesado、
Aguada Pichana、
San Roque

他に
Golfo San Jorge、Noroeste、
Austral Basin

株主はBridas 100%(当初はBridas 40%、BP 60%)
BridasはCNOOCが50%出資する。
 
2010/12/1 BP、アルゼンチンのPan American Energy の持株をBridas Corporationに売却 


CNOOCは2010年にBridasの株式50%を31億ドルで取得したが、Bridas株式売却を検討している 。


アルゼンチン政府は、シェールオイル・ガスの生産が本格化するのは2018年、ガス輸入の必要がなくなるのは2023~24年としている。

そのためには500~1000億ドルの投資が必要とされる。


 

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