日本IBMの課税処分取消請求訴訟、2審も取り消し命じる

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東京国税局が日本IBMグループに行った1197億円の課税処分が1審で取り消された裁判で、2審の東京高等裁判所は3月25日、国税側の主張を全面的に退けた。

本件の事態は下記の通り。

1) 米IBMは2002年にアイ・ビー・エム・エイ・ピー・ホールディングス(IBM APH)という持ち株会社を設置し、米IBMが持つすべての日本IBM株をこの持株会社に売却した。

2) 日本IBMは2002年から2005年にかけて、IBM APHから自己株を3回に分けて安値で購入した。
 IBM APH は計約3995億円の巨額損失を計上した。

3) 2008年から連結納税制度を導入し、日本IBMの黒字とIBM APHの赤字を相殺した。

4) 国税局はこれを租税回避行為とみなし、1197億円を追徴課税した。  

今回のケースは課税処分がおこなわれた時点では合法であるが、国税当局は「税の負担を不当に減少させる結果」となる場合に租税回避行為として認めない法人税法上の規定を適用して課税した。

5) 日本IBM側は「日本の税法上要求されている税金はすべて納付している」とし、処分取り消しを求めて訴えた。

1審の東京地裁は2014年5月9日、「税逃れの意図があったとは認められない」としてIBM側の主張を認め、処分を取り消した。

国側は「IBM APHはペーパーカンパニーで、株売買の条件も経済合理性がない」などとして、こうした取引が税逃れ目的だったと主張した。

他方、IBM側は「法的に問題ない」と主張した。

裁判長は判決理由で「IBM APHはグループ内で資金を柔軟に移動させるなど、持ち株会社としての一定の機能があった」として、ペーパーカンパニーだったとの国側主張を退けた。

株の売買条件などについても「不合理、不自然とは言えず、事業目的のない行為をしたとは認められない」と判断し、こうした手法を明確に禁じた当時の法規定も見当たらないとして「制度を乱用して税逃れを図ったとまではいえない」と結論付けた。

2審の東京高裁も今回、国税側の主張を全面的に退けた。

国側は「株取引は経済的合理性を欠く。損失は見せかけだ」と主張した。

裁判長は、「損失が発生したのは法人税法の規定を適用した結果であり、見せかけの損失という国側の主張は根拠を欠き、採用の余地はない」と述べた。

(国内法人での同種訴訟では「制度の乱用で租税回避行為」と判断された例もある。)

東京国税局は「上告するかどうかを検討中」としている。

 付記  国は4月7日、最高裁に上告受理を申し立てた。

 

素朴な疑問だが、IBM APH は米IBMから買った日本IBM 株を日本IBMに売っているが、売値が買値よりもはるかに安いために多額の損失が発生した。
直前の買値よりもはるかに安い株価での譲渡を寄付金として損金算入を認めないという手は取れなかったのだろうか。

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なお、現在はこの仕組みは利用できない。

2010年度税制改正により、100%グループ内の法人間取引について税務上の取扱いが整備された。

100%グループ内の資産の移転による譲渡損益は、移転を受けた方がその資産をグループ外に売却した時点で計上される。

このため、現在のルールでは、外部への譲渡が行われるまでは、IBM APHの譲渡損失はゼロのままであり、租税の回避は出来ない。

 

 

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