ドキュメンタリー映像 『穹頂之下』

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2月28日、中国の主要ニュースサイトなどで突然、中国のPM2.5問題を告発するドキュメンタリー映像『穹頂之下』("Under the Dome")が公表され、2日間で1億回を超えるとも言われる再生回数を記録し、中国全土を震撼させた。

ニュースの特集番組仕立てで、103分の動画をつくったのは、国営中央テレビの有名記者・キャスターだった柴静(Chai Jing:39歳)で、これまでは公害について意識したことはなかったが、1年前に出産した長女の健康を考え、中国を覆う PM2.5の原因と背景を探った。 (娘は先天性の腫瘍があり、出産直後に手術を受けた。)


複数の協力者と共に1年かけて製作した。

       https://www.youtube.com/watch?v=T6X2uwlQGQM


Al Gore元副大統領の映画「不都合な真実」(An Inconvenient Truth)と同様、大きなスクリーンの前で柴静が大勢の聴衆に説明する形を取っている。


このドキュメンタリーフィルムの総制作費は100万元(1900万円)で、柴静はそれを自腹で支払った。

柴静はニュースやドキュメンタリー番組での果敢な報道ぶりが人気を集めた。
2012年に発表した著書「看見」(邦訳「中国メディアの現場は何を伝えようとしているか」)は、10年におよぶ取材生活でSARSや四川大地震などに遭遇した体験を、個人の感想を交えながら率直に語ったもの で、中国では150万部を超える大ベストセラーとなっている。

ドキュメンターで中国各地で1年の半分程度が雾霾(Haze、PM2.5) に覆われている状況を示し、柴静は昔見たテレビ映画『穹頂之下』("Under the Dome" :Stephen Kingの同名の小説を原作とした米のCBSのテレビドラマシリーズ)を思い出す。
ドームに覆われ
、外界から隔離された町の話で、このままでは、娘は締め切った部屋から一歩も出られなくなるかも知れないと懸念した。

娘が大きくなったときに答えられるよう、「雾霾(PM2.5)とは何か」「どこから来るのか」「我々はどうすればいいか」という3つについて、現地取材や専門家へのインタビューによって、明らかにする。

「雾霾(PM2.5)とは何か」では、漫画を使い、いかに人体に悪影響を与えるかを説明する。中国衛生部の元長官によれば中国で毎年50万人が死亡している。 最大の被害者は赤ん坊である。

「どこから来るのか」では、中国ではPM2.5の60%は石炭と石油から来るとし、1960年代のロンドンのスモッグ被害の後、各国は石炭使用を制限し始めたが、中国(とインド)はその時から経済発展が始まり、石炭使用が増加し始めたと説明。

違法操業をする鉄鋼工場などへの突撃取材のほか、科学者や政府、企業関係者にインタビュー。中国が国を挙げて経済成長を追い求めた結果、様々な環境規制が企業の利益や雇用の維持を理由に守られてこなかった実態を指摘した。

北京だけをとると、PM2.5の源泉は、自動車が最大で31.1%、暖房が22.4%、工業生産が18.1%となっている。自動車の排気ガス公害を詳しく説明、対比として東京の地下鉄網を示す。

中国のガソリンの品質が米国や日本と比較し、劣っていることを示し、市場を独占し巨額の利益を上げながら、ガソリンなどの品質の向上を怠ってきた国有石油大手を手厳しく批判。社会的責任を問いただされたSinopecの元幹部は「我々は肥え太ったが、企業としての体質は脆弱なのだ」などと苦しい釈明を重ねている。

柴静は米国に飛び、カリフォルニア州の状況を調べ、中国と対比する。

世界は天然ガスの時代になったのに、中国は依然として石炭中心であると嘆く。


「我々はどうすればいいか」については、環境保護部門が正しく法律や規制を執行し、1人1人の「公民」は問題を発見したら通報し、環境保護につながるエネルギー消費行動を取るべきだと提言している。


挙げられた例の一部:

バスや自転車、大勢での自動車利用 環境保護告発ホットライン 12369
   
写真を当局へ送付 汚染企業の製品の不買

 

3月3日に北京で開幕する全国人民代表大会と全国政治協商会議を目前に控えた時期に同作品が配信されたこともあり、全国政治協商会議の報道官は、「私も同作品を見た。科学的な観点で論じられている点が重要」とし、「微小粒子状物質『PM2.5』の成分は何なのか、人の脳や血管、心臓、肺、胃にどのような影響があるのかなどの調査が時間をかけて行われている」と評価した。

中国の環境保護部長(環境大臣)に就任したばかりの陳吉寧は、このドキュメンタリーをRachel Carson の "Silent Spring" になぞらえ、柴静に感謝のメッセージを携帯メールで送ったとも言われる。


 

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Richard Muller はその著書の"Energy for future presidents" で、温暖化問題のキイは中国の石炭使用であり、豊富な天然ガス埋蔵量(シェールガス中心)に切り替えるのが最善の解決策であり、中国の技術者に米国でシェールガス開発の訓練をしてはどうかとしている。PM2.5の解決にもつながる。

化石燃料エネルギーの埋蔵量(単位: 石油換算 10億バレル)

 Richard Muller  "Energy for future presidents"


 

 

 


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