IMF、「人民元はもはや過小評価でない」 ----- 対日報告も

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国際通貨基金(IMF)は5月26日に公表した中国経済に対する年次審査報告書で、中国の人民元はもはや過小評価されていない、と指摘した。

「人民元の過小評価がこれまで大きな不均衡の要因だったが、実効為替レートの過去1年間の大幅上昇により、もはや過小評価されているとは言えない水準になった。」

しかし、人民元の上昇にもかかわらず中国の貿易収支が引き続き高水準の黒字を記録しており、改革の必要性を示していると指摘、過度の貯蓄を減らし、持続可能な対外バランスの達成に向けて改革を実行することが当局の課題 であるとしている。

中国は、より柔軟な人民元相場などの改革を加速させるべきで、2-3年以内に変動相場制を実現させることを目指すべきだとした。

中国政府は人民元をSDR(IMFの特別引出権)に含めることに関心を示したが、IMFとしてはこれを歓迎し、実現に向け中国政府と密接に協力するとしている。
このためには、人民元が貿易規模、取引の自由度などで国際通貨にふさわしい条件を満たす必要がある。

 

IMFの発表を受け、米財務省の高官は同日、人民元相場について「著しく過小評価された状況にとどまっている」と述べた。
中国経済を巡っては「多額の貿易黒字を計上し、経済には数多くの不均衡がある」と強調し、人民元が大幅な過小評価の状態にあるとの認識を改めて示した。


人民元は、ドル以外の大半の通貨に対して、大幅に上昇している。(グラフは週間平均の買レート)

しかし、 米ドルに対しては、あまり上昇していない。

米ドルに対する元高の程度が他の通貨に対するものより少ないのは、ドル高の影響が大きい。
米ドルはユーロや円に対しても上昇している。
その米ドルに対し、元は少しは上昇している。

人民元は、米ドルに対しては2014年前半に大きく下落、その後上昇に転じたが、2014年11月頃から再度下落、本年2-3月頃には2%の変動幅の下限一杯まで下落した。



中央銀行が毎日定める中央値も本年3月頃までの1年間はほぼ同水準であったが(政府の方針)、2014年11月頃から毎日の取引価格は下限ぎりぎりまで下落したのは、昨年後半から中国からの資金流出が続いていることが指摘される。米国の利上げをにらんだ投機的な資金の引き揚げや、中国企業による海外進出の増加などが要因。

中国銀行は、3月ごろにはこれまでとは逆にドル売り・元買いの介入を行って、人民元の価値が下がらないように買い支えに動いたとされる。


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IMFは5月22日、日本に関する報告も発表した。

低迷していた日本経済はアベノミクスにより浮上したが、「またとない」制度の転換を果たすという約束を果たすために、改革プログラムの矢を早急に強化する必要がある。

経済見通しは改善しているが、脆弱性が残っている...

インフレ率は徐々に上昇する見込み、中期的には約 1.5%まで徐々に上昇
緩和的な金融政策を継続する...

追加緩和
市場を誘導するために、コミュニケーションを強化
日銀が2%の インフレ目標を安定的に達成するというコミットメントを再確認

経済見通しにかかるリスクは下振れ方向に傾いている。

一層の構造改革が求められる
より効果の大きい改革が、堅調な長期的見通しをもたらし短期的に需要を支えるだろう。

労働市場改革
コーポレート・ガバナンス改革
規制緩和
金融改革

堅調な賃金動向が下支えとなる...

具体的かつ信頼のおける財政健全化...

財政健全化の信頼性を高めるため、財政制度の強化が必要である。
財政再建には、歳出・歳入両面の措置が必要
 

 


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