米上院、TPA法案審議入りを否決 → 翌日一転可決

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米上院は5月12日、大統領に強力な通商交渉権限を与える貿易促進権限(TPA) 法案の審議入りを否決した。

下院も審議入りをしておらず、5月中の法案可決は極めて難しくなり、TPP交渉の大筋合意は6月以降に遅れる公算が大きい。

早期可決を目指す共和党は、改めて動議の採択を求める。  末尾の付記参照

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米超党派議員は4月16日、TPA法案で合意し、議会に提出した。

法案名は、Bipartisan Congressional Trade Priorities and Accountability Act of 2015 (TPA-2015 ) となっている。

民主、共和両党の議員が法案の最終的な細部をめぐって半年間議論を進めてきた。

4月22日に上院財政委員会で可決(多くの修正案が出されたが原案で可決)、4月23日に下院歳入委員会で可決(為替操作への報復措置を盛り込む修正案は否決)した。

しかし、与党・民主党内での反対論が根強く、審議が順調に進むかは見通せない。

2015/4/18 米超党派の議員、TPA法案を議会に提出  


上院は5月12日にTPA法案について、本会議での審議開始に必要な動議を採決したが、結果は次の通り。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 51 1   52
反対 1 42 2 45
棄権 2 1   3
合計 54 44 2 100

野党の共和党は51名が賛成したが、与党民主党からは賛成は1名だけで、52対45で否決された。

米国の上院では規則により上院の5分の3以上の議員(60人以上)の賛成がないと可決されない。

一つはフィリバスター制度で、演説を長時間続けて議事妨害することが出来る。
上院規則22条によりフィリバスターを宣言するだけでフィリバスターが有効となる。
上院の5分の3以上の議員(60人以上)が打ち切りに賛成した場合は、1時間以内に演説者は演説をやめなければならない。

更に、審議を終わらせて採決に進むには、全会一致の賛成が必要となり、上院議員が1人でも反対すると、採決に進むには再び5分の3の賛成票が必要となる。5分の3の賛成が得られない場合は、その法案は廃案とみなされる。

結局のところ、過半数の賛成を得ても、60人以上の賛成がないと、否決となる。

民主党は、為替操作に関する措置などを含む他の通商関連法案とTPA法案を一緒に扱うことを要求していた。
しかし
オバマ大統領や下院が為替条項に反対しているため、審議開始の対象から外し、民主党が反発した。

民主党が求める関連法案には、交渉参加国が「自国の為替政策を制約する」と懸念する条項が含まれ、米政府高官は「TPP交渉を頓挫させかねない」としている。


これを受け、日本の鶴岡首席交渉官は、「これは交渉をまとめるための必須の条件が整わないということになり、その中で交渉を進展させることは、なかなか難しいだろうと思う」と懸念を示した。



付記

上院は5月14日、再度投票を行い、民主党から13名が賛成し、65対33で本会議での審議入りが決まった。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 52 13   65
反対   31 2 33
棄権 2     2
合計 54 44 2 100


オバマ大統領の身内の民主党議員に対する説得活動が功を奏した。

米メディアは「前日の否決がオバマ大統領の優先政策を阻害したと受け止められ、民主党が軟化した」との見方を伝えた。

今回の合意で、上院ではTPA法案が通過する公算が大きくなったが、下院では依然、民主党を中心に反対論が根強い。

 

 

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