米国、19年ぶり原発稼働認可 

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米原子力規制委員会(NRC)は10月22日、テネシー州のWatts Bar 原発2号機の稼働を認可したと発表した。

米国では1996年の同原発1号機以来の稼働認可で、NRCは「2011年の東京電力福島第1原発事故を受けて策定した新安全指針を満たす初の原発」と説明している。当面は試験運転を続け、2016年に本格稼動させる。

テネシー渓谷開発公社(TVA)の
Watts Bar 原発2号機は、東芝傘下の米Westinghouse製の加圧水型原子炉で、出力は約110万kw。1973年に建設認可を得たが、79年のスリーマイル島原発事故の影響で85年に建設を中断、2007年に建設再開に乗り出し、完成にこぎ着けた。

2号機は出力120万KWで、既存の1号機と合わせ、230万KWを発電、TVA管内の130万所帯に電力を供給する。

Watts Bar Unit 2 Issued Operating License

The U.S. Nuclear Regulatory Commission has granted the operating license for Watts Bar Nuclear Plant Unit 2.

The Commission issued the license Oct. 22, clearing the way for initial fuel load followed by further testing and inspections to put the nation's first new nuclear unit of the 21st century in service.

Receipt of the operating license marks the end of construction on Watts Bar Unit 2. The Watts Bar team will now focus on preparing for initial fuel load and readying all the key components and systems for operation. The unit is on schedule for operation in 2016.

This achievement signifies more than a stage in construction for TVA. It demonstrates that TVA has taken every step possible to deliver low-cost, carbon-free electricity safely and with the highest quality.

Watts Bar Unit 2 is essential to diversifying TVA's power sources to ensure that the more than 9 million people served by TVA and their local power companies have affordable and reliable electricity generated in an environmentally friendly manner

Completing Watts Bar Unit 2 and successfully licensing one of the nation's largest new nuclear generation projects is a historic milestone for TVA and the nuclear industry. With the delivery of this unit, TVA is further positioning nuclear power as a key player in TVA's - and the nation's - energy portfolio and instilling confidence in TVA and the nuclear industry.

Together, Unit 2 and Watts Bar's already operating Unit 1, will produce nearly 2,300 megawatts of carbon-free energy. That's enough to power 1.3 million homes in the TVA service territory.

- See more at: https://www.tva.gov/Newsroom/Watts-Bar-2-Project#sthash.q7VeviMO.dpuf

米国ではシェール革命などの影響で安価な天然ガス火力発電所の稼働が増え、原発は採算が合わず撤退が相次いでいる。

1)電力大手Dominion は2013年5月、ウイスコンシン州のKewaunee原発(556メガワット)を永久停止した。純粋に経済性の観点としている。

同社は中西部地域で原発投資の橋頭堡を築く目論見だったが、中西部で適当な他の原発を買収することに失敗し、この原発を維持する経済合理的根拠を失い、売却を決めたが、買い手はみつからなかった。
同原発はすでに20年間の延長許可を取得しており、2033年まで操業できるはずだった。

2012/10/26 米の発電会社、不採算を理由に原発を閉鎖

2)Exelon は2010年に、ニュージャージー州のOyster Creek原発を認可の期限の2019年末までに停止すると発表した。

1969年稼働の米国最初の大規模商業用原発で、645メガワットのBWR型原発。
温排水による環境への影響の懸念で州環境保護局から冷却塔の追加を要求され、高コストを理由に廃炉を決めた。

3)フロリダ州のCrystal River原発は能力860メガワットで、原子炉の格納容器にひびが入ったため、2009年9月から停止していた。Duke Energyが2012年7月に同原発を所有するProgress Energyを買収したが、その後の調査の結果、修理費が15億ドル、最悪シナリオでは34億ドルかかることが分かり、現在の電力料では回収できないと判断、Duke Energy は2013年2月、同原発を永久停止すると発表した。

Duke Energyは又、本年8月1日に、フロリダ州のWilliam Lee 原発の新設計画を断念すると発表した。
東芝子会社のWesting Houseが原子炉2基を納入する予定だった。

4) 三菱重工業製の蒸気発生器の配管破損で2012年から停止中の米カリフォルニア州南部のSan Onofre原発について、運営するSouthern California Edison は2013年6月、全2基を廃炉にすると発表した。

2号機は1983年、3号機は1984年にスタートした。
三菱重工業は2号機、3号機の取替用の蒸気発生器を各2基 納入した。

San Onofre原発は2012年1月31日、3号機の蒸気発生器の配管から水が漏れて緊急停止、微量の放射性物質が漏れた可能性もある。定期点検中の2号機でも配管摩耗が見つかり、NRCはすべての稼働を禁じた。

Southern California Edisonは2013年10月16日、米国で仲裁を申し立てた。本件契約の保証義務違反等に基づき、三菱重工に対し40億米ドル以上の損害賠償を求めている。

これに対し、三菱重工では、契約上の同社の責任上限は約1億3,700万米ドルであり、代替燃料コストを含め間接損害は排除されているとしている。


5)アメリカの電力大手、Entergy Corporationは2013年8月、バーモント州南部にあるYankee 原子力発電所の稼働を2014年の末に停止し、廃炉にすることを決めたと発表した。

Yankee原発は、1972年に運転を開始したGE製の沸騰水型(BWR)の原子力発電所で、フル稼働時の能力は620メガワット。

廃炉を決めた理由について、シェールガスの生産増加の影響で天然ガス価格が低くとどまり、発電コストの競争力が低下したことや安全性や信頼性向上のために多額の費用がかかることなどを挙げている。

2013/9/2 米・電力大手Entergy、Vermont Yankee原発の廃炉を決定 

この結果、2007年には計104基あり、10,606万kW を発電していたが、2015年までに4原発5基が停止し、米国で稼働中の原発は99基となった。

6)Entergy は2015年10月、米マサチューセッツ州のPilgrim原発(68万KW)を2019年6月までに停止させ、廃炉にすると発表した。

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2012年7月30日付の英 Financial Times は、"Nuclear 'hard to justify', says GE chief" のタイトルでGeneral ElectricのCEOのJeff Immeltのインタビュー記事を掲載した。

シェールガス革命で天然ガスが豊富に供給され、再生可能エネルギーの選択肢も増えたことから、原子力発電を正当化することは難しくなったという。

2012/7/31 原子力発電の正当化困難にーGE会長 

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一方、米政府は運転中に二酸化炭素(CO2)を出さない原発が一定の役割を担うことを期待し、原発計画に債務保証を実施するなどして支援している。

NRCは2012年2月、Southern Nuclear Operating Companyのジョージア州オーガスタの南東26マイルのVogtle power plantの2機の建設・運転一括許可を承認した。

2012年3月には、South Carolina Electric & Gasとサウスカロライナ州営電力会社Santee Cooperのサウスカロライナ州のコロンビアの北西約40キロにあるVirgil C. Summer 原発2号機と3号機について、Westinghouseによる新型加圧水型原子炉「AP1000®」の建設運転一括許可(Combined License=COL)を承認した。

2012/4/4 米、2件目の原子力発電所新設を承認 

逆に、NRG Energyは2011年4月、福島第1原発事故の影響で「規制動向など先行きが不透明になった」として、東芝との合弁会社でテキサス州で進めていた原発2基の新設計画への投資を打ち切った。

NRGは2008年にNuclear Innovation North America(NINA)を設立。同年に東芝が300百万米ドル(12%) 出資し、サウステキサスプロジェクト原子力発電所に改良型沸騰水型原子炉 (ABWR) 2基(3号機、4号機)を増設する計画を進めていた。

米電力大手Exelonも2012年8月、シェールガスの増産で天然ガスが値下がりし、予想しうる将来にわたって競争力がなくなったと判断し、テキサス州Victoria County Stationの原発申請を取り下げた。

2012/9/6 米電力大手Exelon、原子力発電所の申請を取り下げ 


既報のとおり、英国では
福島事故で原発の安全確保のためのコストが見直された結果、2012年以降、ドイツ、英国の企業が原発計画から撤退した。

英国政府はこのため、原発推進のため自然エネルギーの普及に使われている「固定価格買取制度」を原発に導入した。

Hinkley Point C 原発では、英国政府とEDFはこの時、原子力発電での電力の固定価格買取価格(35年間)について、下記の通り合意した。

Sizewell での建設を決める場合 £89.50/MWh(約14.1円/kWh)
Hinkley Point単独の場合    £92.50/MWh(約14.6円/kWh)

これは現在の卸価格の約2倍になる。

 

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