2014年1月に、PfizerがAstraZenecaに対する買収提案を行った。
買収目的の一つが買収後は英国に多くの利益を留保・移転し、米国の高い税を回避するという「効果的な租税負担を構築する」ことであった。
これに対し、AstraZenecaは、コスト節約と節税という財務面での利点がPfizerの買収の主な動機になっているようだと指摘、戦略上の魅力を感じなかったとして、この提案を拒否、Pfizerは買収断念を発表した。
Pfizerは2015年11月23日、アイルランドに拠点を置く同業のAllergan との合併で合意し、この目的を果たした。
2014/5/12 Pfizer が AstraZenecaに買収提案
AstraZenecaはその後、事業買収や提携で急速に事業を拡大している。
1. | AstraZenecaは2015年2月5日、Actavis Plc から米国とカナダの呼吸器疾患薬事業を買収する契約を締結した。 現金6億ドルでの買収で、他に低率のロイヤリティを支払う。 |
2. | 富士フイルムと協和発酵キリンは2015年7月24日、両社の共同出資会社の協和発酵キリン富士フィルムバイオロジクス(FKB)が開発中のバイオ後続品(バイオシミラー)で、英 AstraZeneca と提携すると発表した。
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3. | AstraZenecaは11月6日、米のバイオ医薬品会社 ZS Pharma を27億ドルで買収すると発表した。 主力の高脂血症治療薬 Crestor ®の特許が米国で切れたことを受け、心疾患治療薬のポートフォリオ拡充を目指す。
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4. | AstraZenecaは12月16日、中国の医薬品開発受託大手、薬明康徳新薬開發(WuXi AppTec) と提携し、中国でのバイオ医薬品事業を強化すると発表した。
両社で中国向け製剤を共同開発し、薬明康徳の生産拠点を買収する権利も取得する。 AstraZenecaの米子会社 MedImmune と薬明康徳の合弁会社が開発中の製剤の開発のスピードも上げ、炎症や免疫治療での用途を見込む。
更に、中国での従来型の低分子医薬品の研究設備にも5千万ドルを充て、競合が激しい同分野で研究開発力を高める。 |
5. | AstraZenecaは12月16日、 武田薬品の呼吸器系疾患領域事業を5億7500万ドルで買収することで合意した。 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬ダクサス(一般名:roflumilast、武田が買収したナイコメッドの画期的新薬)、呼吸器疾患治療剤 アルベスコおよびアレルギー用点鼻薬オムナリス(一般名:ciclesonide)を含む呼吸器系疾患領域事業を取得する。 各国・地域で販売されている同領域の製品や複数の前臨床段階にある化合物も移管される。 武田は2014年に、消化器系疾患領域、オンコロジー、中枢神経系疾患領域、代謝性・循環器系疾患領域を4つの重点疾患領域と定めている。 なお、AstraZeneca米国でroflumilastを「Daliresp」の商品名で販売している。上記のActavis から取得したもの。 |
6. | AstraZenecaは12月17日、オランダとカリフォルニアに拠点を持ち、癌関連の薬を開発する私企業 Acerta Pharma の株の過半を40億ドルで買収することで合意した。
AstraZenecaは更に、欧州と米国での同剤の承認後に、残りの株を30億ドルで買収するオプションを持つ。 同社では、同剤の年間売上高が世界中で50億ドルを超えると期待している。 |
AstraZenecaはICIから独立したZenecaとスウェーデンのAstraが統合したもの。
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