中国、増値税の電子領収書発行を全国的に実施

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日本では消費税アップに関連し、軽減税率を採用する場合に、商品や価格、税率や税額を記入するインボイスの発行が必要だが、手間がかかるとして問題になっている。

しかし、海外ではほとんどの国が軽減税率を採用しているが、全く問題になっていない。

欧州各国では、モノやサービスの代金を請求する「明細書(インボイス)」に、税抜き価格と消費税を記すことが義務づけられている。
税率や税額などを記してあるため、業者はインボイスによって売り上げと消費税がはっきりわかり、インボイスをみれば、納めるべき消費税が一目瞭然になる。
税を徴収する政府もどれだけ消費税がかかったかが把握できる。

欧州では「軽減税率」を採用している国が多いが、インボイスに商品ごとの税額や税率が記されている。

軽減税率を採用するとインボイス発行に手間がかかるので困る、などの議論は聞いたことがない。

人民日報によると、中国では、国税総局がこのほど発表した公告の中で、納税者の経営コスト削減、社会資源の節約、消費者の領収書保存・使用の便利化を目的として、増値税(付加価値税)の電子領収書発行システムを2016年より全国的に展開することを明らかにした。

紙製の領収書が必要な場合は、フォーマットを各自印刷することができ、その法的効力、基本的用途、基本的使用規定は、税務機関が監督管理する普通領収書と同様となる。

北京、上海、浙江、深圳の4地域では2015年8月1日よりすでに同システムの試行が始まっている。

このニュースを聞いて、中国の領収証システムを調べて驚いた。
中国では官製の詳細な領収証がないと、支払を拒否され、支払った場合はその分を費用として損金算入ができず、仕入れ税額控除も出来ないという。

中国の増値税率は、一般が17%だが、穀物・食用油・ガス・図書・水道などが13%の軽減税率となっている。

日本では領収書は企業や個人が自由に作成しており、領収書の様式も特に定められていない。
これに対して、中国では領収書は税務当局の完全な管理管轄下に置かれている。

中国での領収書は「発票 (FaPiao)」と呼ばれ、「発票」は税務当局が印刷発行し、納税者が税務当局から購入する。
作成発行、取得、保管、未使用部分の税務当局への返却に至るまでのすべての行為に対して、税務当局が管理と監督の権限を持っている。

「発票」には2種類ある。
 一般の購入の領収証である「増値税普通発票」
 仕入れ税額控除を受けるための「増値税専用発票」

「増値税専用発票」には発行企業の情報や取引内容、金額に加え、受取企業の企業名、納税者番号、住所、銀行口座番号などの情報が記載されている。

これらがないと、損金算入も仕入れ税額控除もできない。(企業所得税法では、発票がなければ原価または費用を計上することができないと規定されている。)
このため、買い手は
発票の記載内容に問題がないことを確認した後、支払いを行う。発票がない場合や発票の記載内容に問題がある場合は支払わない。

「発票」は発行が厳密に管理されており、普通発票は税務局官製発票を申請購入 する。

増値税専用発票は税務局官製の偽造防止システムで発行する必要がある。

専用PCはICチップを搭載したカード(金税カード)を差し込んで使うようになっており、発票印刷の内容が全て記録される。
金税カードは企業によって発行できる増値税専用発票に制限があり、制限枚数に達したら税務局へ持って行って、カード内のデータを提出し、枚数をリセットしてもらう必要があ る。

なお、自身で発票を発行できない小規模納税人の税率は売上の3%で、仕入れ控除をすることができない。

日本でも、売上高が5,000万円以下の事業者に適用される簡易課税制度があり、小売業の場合、みなし仕入率を80%として消費税を計算する。
中国での税率3%は、一般消費税率17%の場合、みなし仕入率は82%となり、日本とほぼ同じとなる。

2015年81日より北京、上海、浙江省、深圳の4つの省・市 において増値税発票システムのグレードアップ版電子発票の試験導入が開始された。

電子発票への切替で、次のようなメリットが生じる。

 ・コスト削減

「電子発票」は発票のペーパレス化に繋がり、企業が発票作成機による発票の印刷、保管、郵送等に投じてきた業務費用の支出が一切不要となり、コストの大規模削減が可能になる。

中国全土で1年間に「発票」を約3.6億通使用し、関連の年間合計コストは約20億円に達するという。

 ・「発票」の照会、保管の負担が大幅に縮小

取引発生と同時に電子発票を取得することができるようになる。
これまでのように発票を印刷して紙媒体で保存しておく必要はなく、必要な際に電子発票をダウンロードし紙に印刷するという対応で済む。

税務当局としても、納税者の情報の照会、統計、分析を効率よく実施できるようになり 、発票の虚偽発行の摘発及び抑止につながる。

今回、このシステムを全国的に展開する。


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