タイのIndorama Ventures、BPのアラバマのPX、PTA、NDCコンプレックスを買収 

| コメント(0)

タイのIndorama Ventures は1月6日、BPのアラバマ州Decatur のPX、PTA、NDCコンプレックスを買収する契約に調印した。

買収する事業は下記の通りで、全てBPの独自技術を使用している。

このうちNDC(ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル)はBPが世界で唯一、商業生産しているもので、機能性樹脂やフィルムに使用される。

Indorama は米国でのPET製造のため、AlphaPet Inc.を設立、BPのDecatur工場に隣接して432千トンのプラントを運営している。
原料のPTAはBPから供給を受けている。

2007/4/14 タイのIndorama Polymers、北米でPET工場新設へ

今回の買収で、DecaturでPX、PTA、PETの一貫生産を行うこととなる。
同社では今回の買収をProject AlphaPet Ⅱ と称している。

ーーー

BPは収益性改善と長期的成長の観点からグローバルな石油化学事業の見直し(BP技術を使用するワールドクラスで、低コストの設備に集中する)を決め、2015年11月にこのコンプレックスの売却を決めたと発表していた。

これにより、BPは南カロナイナ州Cooper RiverのワールドクラスのPTA(2系列計130万トン)設備と、テキサス州Texas Cityの原料パラキシレン、メタキシレン設備(合計能力 150万トン)に投資を集中する。

欧州ではベルギーのGeel (PTA 130万トン、PX 70万トン)にアップグレードのための投資を行う。

中国では2015年7月3日、広東省のBP 珠海ケミカル(BP 85%、Zhuhai Port 15%) の第3期(125万トン)の生産開始の式典を行った。
これは1系列では世界最大で、
BPの最新技術を世界で初めて使用する。

第1期 35万トン、第2期110万トン(当初 90万トン)と合わせ、合計能力は270万トンとなった。

2011/2/22  BP、中国のPTA事業を拡大

ーーー

この買収はIndorama Venturesにとって、2015年1月以来、8つ目の買収となる。

相手先
PET resin plant Polyplex (Thailand) PET 252千トン
Performance Fibers Asia Sun Capital Partners Inc (中国) Tyre fabrics メーカー
中国第二位の工場を持つ。
Bangkok Polyester PCL PET
 (買収によりタイでのシェアが43%→58%)
カナダのPTA事業 Cepsa Química 600千トン(カナダ唯一のPTA工場)
Ethylene cracker (Lake Charles, LA)
(休止中)
ルイジアナ州 エチレン 370千トン
プロピレン 30千トン
175百万ドルを投じ、手直し、
シェールガス利用で再開
スペインのPIA、PTA、PET事業 CEPSA Spain PIA 220千トン
PTA 325千トン
PET 175千トン
Micro Polypet Private Limited
(MicroPet)(インド)
PET 216千トン

今回のBPからの買収で、同社の北米のPTA能力は162万トンとなる。

米国では、Indoramaは既に、Invistaから南カロライナ州SpartanburgPETとポリエステルステープルの工場と、メキシコ子会社Grupo Artevaの同事業を、またClear Lake, TexasにEO/EGの設備を持つOld World のパートナーシップの100%を買収している。

Invistaから

 1. Spartanburg 工場
 
 PETSpecialty PolymersFibersFilm の製造設備(能力 470千トン)

  2. メキシコ子会社Grupo Arteva 及びその子会社の事業
  
PETSpecialty PolymersFiber の製造設備(能力 535千トン)

Old World

Product Capacity
 (tons)
EO 435,000
   
最終製品  
Purified EO 204,000
MEG 358,000
DEG 64,000
TEG 6,400

2010/11/18 タイのIndorama、米国と中国でポリエステル等の工場を買収

今後稼動するエチレンを含めると、北米での活動は下記の通りとなり、大きなシナジー効果が期待できる。

Indorama Group 1974年にMohan Lal Lohia ML Lohia)によりインドで設立され、インド、インドネシア、タイなどでPTAPET、ポリエステルなどの事業を拡大した。

ML Lohia は事業を3人の息子に分割した。長男OP Lohiaはインド、次男 SP Lohia はインドネシア、三男 Aloke Lohia (APL) はタイを受け継いだ。同じような事業を行っているが、それぞれが独立して事業を行っている。 

1月8日付けの日本経済新聞は「アジアひと未来(6)」で、 「国境なき民、世界駆ける インドラマのロヒアCEO」というタイトルでIndorama Ventures のAloke Lohia を取り上げている。

2015年11月、インドのニューデリー郊外。タイの石油化学大手インドラマ・ベンチャーズのグループ最高経営責任者(CEO)、アローク・ロヒア(57)は間もなく買収する工場を視察し、愛用の電子たばこの煙をくゆらせた。異国で起業して27年。進出21カ国目で故郷へ錦を飾った。

同社はペットボトル用樹脂(PET)で世界首位。飲料容器の6本に1本へ原材料を供給する。供給網は南米を除く4大陸に広がり、米コカ・コーラやペプシコの世界戦略の「黒子役」を担う。

父は印西部のマルワール地方出身。その商才から「インドの近江商人」と称されるマルワリ商人で、農産物や繊維を世界に売り歩いた。ロヒアの姉は神戸生まれだ。いったんビルマ(ミャンマー)に居着いたが、1962年の軍事クーデターで追われた。アジアを転々とした後、インドネシアに紡績工場を構えた。

家業を手伝う息子3人のうち2人に、父はインドとタイで起業を命じた。リスク分散のためだ。550万ドル(約7億円弱)を渡されたロヒアの行き先はタイ。88年、29歳で創業し、先進国の石化大手には片手間だったPETを主力に据えた。

「息子全員をインドネシアに置かなかった父を思い出した」というロヒアは03年の米企業買収を合図に世界進出を始めた。

ルクセンブルクが本拠の鉄鋼世界最大手、アルセロール・ミタルCEOのラクシュミ・ミタル(65)はロヒアの義姉の兄。共にインドネシアに住み着いたマルワリ商人の父同士が縁組した。息子2人は買収に次ぐ買収で世界の頂上に立った。


 



コメントする

月別 アーカイブ