「イソジン®」の承継完了

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ムンディファーマは3月31日、Meiji Seikaファルマより殺菌消毒薬「イソジン®」ブランド製品の一般用医薬品について、承継(製造販売承認の移管)を完了したと発表した。明治への「イソジン」商標ライセンス契約も終了する。
「イソジン」は4月からシオノギヘルスケアが国内における販売・流通を行う。

なお、医療用医薬品の承継は2016年8月1日に行う。(動物用医薬品については、詳細を協議中)

4月の発売時点では、現存のイソジンブランドのイメージを踏襲したパッケージで展開するが、秋の新製品発売に合わせ、8月末までにキャラクターを変更する。

これまで、医療用医薬品はMeiji Seikaファルマが、一般用医薬品については㈱明治が販売してきたが、明治も4月1日から、同社が商標登録するキャラクターである「カバくん」を用いたパッケージで、「明治うがい薬」をはじめとするポビドンヨード製剤16品目を発売した。

ムンディファーマと明治は、それぞれ東京地方裁判所に不正競争行為等の差止仮処分命令申立を行っていたが、3月18日に円満な合意に至り、和解によって解決したことを受けたもの。

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イソジン®は、グローバルに展開する製薬企業 Mundipharma が所有する殺菌消毒薬のブランドで、海外では主にBetadine®として販売されている。

ポリビニルピロリドンとヨウ素の化合物のポビドンヨードを有効成分とするもので、ポビドンヨードは1952年、ポリビニルピロリドンの解毒力に注目したアメリカのShelanski により特許申請された。(1956年に登録)
1955年にMundipharmaが世界で初めてBetadineとして製品化した。

日本では1961年に明治製菓がMundipharmaと技術提携し、殺菌消毒剤及びうがい薬として医薬品としての承認を取得、Mundiの商標「イソジン」で販売を開始した。(当初はMundipharmaが有効成分の供給を行った。)

また、一般家庭への普及を目的に、薬局薬店向けのOTC医薬品としてうがい薬を開発し、1983年1月に発売した。
1985年からは明治製菓の登録商標のマスコットキャラクターの「カバくん」の使用を開始した

明治製菓は明治乳業と統合し、2011年に事業再編で食品事業の㈱明治と薬品事業のMeiji Seika ファルマが設立された。

1895
大日本製糖設立
1996 
大日本明治製糖
三菱商事全額出資子会社で、明治ホールディングスとの関係はない。
1906
明治製糖設立
  

  

1916
東京菓子設立
→1924 明治製菓 2009
共同持株会社
明治ホールディングス設立
2011 事業再編 食品事業「㈱明治」
1917
極東練乳設立
→1940 明治乳業 薬品事業「Meiji Seika ファルマ」


現在、Meiji Seikaファルマが製造し、医療用医薬品ではMeiji Seika ファルマが、一般用医薬品(OTC)では㈱明治が販売している。

他方、Mundipharmaはそれ以来、塩野義製薬など、日本の製薬企業との提携を通じて、さまざまな製品を供給してきた。
1991年に日本法人ムンディファーマが設立された。

「疼痛」、「がん」、「コンシューマーヘルスケア」をムンディファーマの三つの事業の柱ととらえ、更にパイプラインの充実や活動の拡大を計画している。

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数年前にムンディファーマと明治の契約更新のタイミングを迎え、明治側は長期的な提携関係の維持を望んでいたが、2015年3月にムンディファーマがイソジンブランドのライセンス契約解消の通知を出し、同年8月に明治がそれを了承した。

Mundipharmaは慢性腰痛やがんに伴う痛みの治療薬などを欧米中心に販売してきたが、昨年から日本を重点地域に定め、積極投資を開始している。その一環で、日本市場に浸透したイソジンブランドの自社展開を決断した。

ムンディファーマは販売・流通に塩野義製薬を起用することとし、塩野義はこれを機にヘルスケア事業を分割し、コンシューマーヘルスケア事業を行うシオノギヘルスケアを設立した。

しかし、明治がこれまでの「明治イソジンうがい薬」と同じデザインの「明治うがい薬」を発売することとし、ムンディファーマ/シオノギが「カバくん」に似たキャラクターを使った「イソジンうがい薬」を発売することが分かり、紛糾した。

明治は「イソジン」の商標は返還したが、新しく販売する製品の名称を「明治うがい薬」とし、これまで使ってきたキャラクターの「カバくん」は自社の登録商標であるため、引き続き使用することとした。

これに対し、ムンディファーマ(販売元シオノギヘルスケア)は「カバくん」に似たキャラクターを使用した。



これまでのもの (明治 2016/4/1~) (ムンディ 2016/4/1~)

明治側は、ムンディに対し、明治グループが長期にわたり使用し、商標登録している「カバくん」に類似したキャラクターを使用した商品の製造販売を行わないように求めたが、ムンディとの2度にわたる書面でのやりとりを通じても、申し入れは実現されないと判断し、2月9日にムンディファーマとシオノギヘルスケアに対し、不正競争行為差止等仮処分命令の申立てを行った。

これに対しムンディ側は、「提携関係を終了するにあたり、認識のちがいが生じた場合には信義誠実の原則にもとづき、話し合いで解決することを合意している」として、明治の申立に反発、2月26日に不正競争防止法に基づく差止請求、契約に基づく競業行為差止請求、商標権に基づく差止請求等で仮処分命令の申立てを行ったもの。

和解の内容は発表されなかったが、結果として、明治は当初の案をそのまま使用、ムンディ/シオノギ側は当初の案は8月末までの使用に限り、それ以降は新しいデザインに変更する。

経緯まとめ:

明治 ムンディ
2015/12/9 「イソジン®」に関する提携関係を解消
「イソジン®」製品の一般用医薬品製造販売承認を2016/3/31にムンディファーマに移管
医薬用医薬品については2016/8/1に移管。
一般用医薬品「明治うがい薬」を、2016年4月1日から全国で発売すると発表
(新包装を発表)
「イソジン®」の一般用医薬品について、塩野義と日本国内における独占的な販売提携契約を締結
(新包装を発表)
2015/12/21 医療用医薬品についても、塩野義と日本国内における独占的な販売提携契約を締結
シュガーパスタ軟膏は2016/2/12、その他は2016/8/1以降
2016/1/15 塩野義製薬、シオノギヘルスケアを設立
2016/2/9 ムンディファーマとシオノギヘルスケアに対し、東京地裁に不正競争行為差止等仮処分命令の申立て
2016/2/26 明治に対し、東京地裁に仮処分申立
2016/3/18

各申立てが和解によって解決

なお、ムンディファーマは4月4日から10日まで、新宿歌舞伎町の「新宿東宝ビル」の8階テラスにそびえるゴジラを使用した「イソジン」のPRを行った。

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