大飯原発 基準地震動再計算へ

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原子力規制委員会は6月20日、関西電力大飯原発の基準地震動(耐震設計で目安とする揺れ)を他の手法で再計算することを決めた。
前委員長代理の島崎邦彦東京大名誉教授(地震学)から、計算式の不備で、地震動に過小評価の恐れがあると指摘されていた。

同原発の基準地震動は最大加速度 856ガルで、島崎氏が在任中に指揮した審査で了承されていたが、地震動の審査をやり直すかどうかは、再計算の結果を踏まえて検討する。
ほかの原発でも別手法で計算するかは、大飯原発の結果を見て決める。

島崎氏が問題視するのは、入倉孝次郎京都大名誉教授らが提唱し、震源の断層面積から地震規模を算出する「入倉・三宅式」。
大飯原発の震源など地表に対して垂直に近い断層に適用すると、地震規模が他の計算式に比べて四分の一程度に過小評価されるという。

島崎氏は、規制委委員長代理を退任した後、日本海側での津波予測について研究を重ねてきた。
さらに熊本地震での現地調査を経て、「入倉・三宅式」を横ずれ断層に用いることによる弊害について、確信を持つようになったという。

田中委員長と石渡委員が6月16日に島﨑前委員長代理から直接話を聞いたが、同氏の発言は以下の通り。

将来の地震を予測する場合は、地震前に、断層の長さ、面積、地震モーメントを測定、断層のずれの量を考える必要があるが、関係式は地震後にわかった量で作られている。そこから、不確定性というか、推定の誤りが出てくる。

断層面が垂直の場合は地震モーメントが、入倉・三宅式を 1とすると、山中・島﨑式は 3.5倍、武村式は4倍になる。

震源の大きさが入倉・三宅式での計算結果の3倍以上だとすると、短周期レベルの地震動は5割増しになる。これはかなり深刻な問題だ。

熊本地震に係る国土地理院の暫定的な解で計算した断層面積を、入倉・三宅式に入れると、地震モーメントと断層のずれの量が、実際の値に比べ非常に小さくなる。

入倉・三宅式を使う限り、震源の大きさは過小評価される。


大飯で評価している断層は垂直で、入倉・三宅式を使っている。より真実に近そうな、過小評価にならないような式を使って、これまでと同じように計算し、必要であれば色々な判断をするのが一番ではないか。まずそこがスタートである。

垂直になっている断層に入倉・三宅式を使うことが既成事実化すること、これ以上見直すつもりはないという後ろ向きになってしまうことが一番怖い。必ず前向きに新しいものを受け入れるという方向で進めていただきたい。

川内原発は、すぐにどうこうという問題ではなさそうに見える。 高浜原発は遠いから、そんなに影響はないであろう。

入倉・三宅式に欠陥があることは頭の隅ではなく、真ん中に置いてほしい。
入倉・三宅式が原子力発電所の基準地震動設定でも引き続き使われる可能性があることが問題だ。

規制委員会は20日の定例会で再計算に同意した。田中委員長は「元々の審査の責任者の指摘なので例外的に受け入れた」と話した。

付記

原子力規制委員会は7月13日、大飯原発の基準地震動について、現状のまま見直す必要はないとの判断を示した。

島崎名誉教授の指摘に基づき、揺れの大きさを断層の長さから求める「武村式」を使って再計算した結果、現在の基準地震動の856ガルに対し、再計算では644ガルだった。

島崎邦彦・東大名誉教授(地震学)は14日、「結論には納得できない」として再々計算を求める抗議文を送った。

大飯原発の審査では、過去に、別の原発で想定を大幅に上回る周期の短い地震の揺れが観測された実例を踏まえて補正をしているが、今回の再計算では行っていない。
同じ条件で計算すれば、結果は大まかな推定で1550ガルにもなるとした。



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大飯原発は東京電力福島第1原発事故後、他の原発が停止を続けるなか、3号機と4号機が2012年に発送電を開始した。
2013年9月に定期検査のため停止した。(
3号機、4号機は
2013年7月8日に再稼動申請をしている。1号機、2号機はまだ申請していない。)

福井県の住民らが、安全性の保証をせずに大飯原発3、4号機を再稼働させたとして、関西電力に運転差し止めを求めた。
この訴訟で、福井地裁は2014年5月21日、現在定期検査中の2基を「運転してはならない」と命じ、再稼働を認めない判決を言い渡した。

判決で、「1260ガルを超える地震によってこのシステムは崩壊し、非常用設備ないし予備的手段による補完もほぼ不可能となり、メルトダウンに結びつく。この規模の地震が起きた場合には打つべき有効な手段がほとんどないことは被告において自認しているところである」としている。

2014/5/30 大飯原発差し止め訴訟判決 

これに対し、福井地裁は2015年12月24日、周辺住民らが求めていた再稼働差し止めの「仮処分」の申し立てを却下する決定をした。

この控訴審が名古屋高裁金沢支部で行われているが、本年6月8日の口頭弁論で、住民側は島崎前委員長代理の陳述書を提出した。証人出廷を要請することも検討している。

関電は当初、規制委の審査会合で700ガルの基準地震動を示していたが、その後、規制委との議論を経て856ガルに引き上げて概ね了承を取り付けた。

今回、島崎氏から「そもそも、関電が基準地震動設定の基礎に用いた式そのものに欠陥があり、過小評価となる可能性がある」との問題提起 を行った。

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島崎氏は6月24日発売の岩波書店『科学』(7月号)で津波についても以下のとおり述べている。

国土交通省が2014年9月に策定した『日本海における大規模地震に関する調査検討会報告書』が日本海「最大クラス」の津波を過小評価している。

津波の対策がこのまま進めば、再び『想定外』の被害を生ずるのではないだろうか。

2002年の津波地震の予測を中央防災会議や東京電力が無視し、『想定外』の災害を起こしたことを忘れてはならない。

コメント(1)

規制委員会の大ウソ
入倉▪三宅の式も武村式も原理的に間違いです。両方とも地震のデータから求めた回帰式です。ところが「回帰式はそのデータの推定平均値を通る直線」(統計学の公理)です。大飯原発の基準地震動は入倉▪三宅の式を使って活断層の断面積から求められ、最大加速度856ガルとされています。これは完全に間違っていて856±αにある確率95%と表示される推定値です。856という確定値ではありません。答えは856付近にあるが何処にあるかは判りません。856を耐震基準にすれば未来の地震の半数は確実に、これをオーバします。この事は大飯原発裁判(2014.5)で樋口裁判長も指摘しています。「原発の基準地震動の設定法は根本的に間違っている。あるサイズの断層を想定した時の、その断層が起こす平均の地震、地震動を評価するものでしかない。原発のように危険なものの耐震基準を平均値で決めるようなことは、あってはならないこと。この十年足らずの間に全国20か所にも満たない原発で5回も耐震基準を超える地震動が起きた。基準地震動の設定法は今後科学的に解明すべき問題である。原発は地震に対して危険だから運転を禁止する」。この判決後入倉氏は「入倉式の答えは最大ではなく平均値だ」と認めました。規制委員会の田中委員長も「原発の耐震基準は平均値だが見直す必要はない」と言っています。しかしこの発表のように最大加速度856ガルと平気で嘘をつきます。全原発は「平均を最大値と偽った耐震基準」で作られています。耐震基準は建設時の372~600ガルを現在は450~800ガルに引き上げていますが原発の心臓部は一旦動かせば手を付けることは出来ません。強烈な放射線を放つ鉄のお釜を如何やって補強しますか?九電は正直に「数字は引き上げるが工事はしない」と公言しています。柏崎刈羽原発は2007年の新潟中越沖地震で耐震基準の4倍の1699ガルの猛烈な地震動に襲われました。震度6強(M6.8)の普通の地震です。この時動いた断層長さは東電の掴んでいた長さの5倍でした。震源は活断層の位置から遠く離れた原発寄りでした。震源と原発の距離は1/5になりました。耐震基準は「活断層のサイズは分っていて一定。震源は活断層の位置」という前提で原発立地地点の地震動を計算します。この前提が全く成り立たないことが証明されています。昔から大地震は断層が連動して起きることは知られていました。大地震の時断層は伸びるのです。この一番重要な条件を無視した理論はお笑いです。
柏崎刈羽原発は耐震基準を2008年に2300ガルに引き上げました。必ず誤魔化しが有ります。しかし規制委員会は肝心な部分は電力会社の責任と書類だけで合格にします。原発付近で普通の地震が起きれば耐震基準をオーバします。今度の熊本地震でも既知の活断層の近くではあっても離れた所が震源になりM6.5の地震で1580ガルの猛烈な揺れが起きました。
「活断層の真上に原子炉がなければ安全だ」というのも嘘だと証明されたのです。「回帰式を組み合わせて解を出す」この地震学の研究手法はまちがいです。答えのない式を組み合わせた答えには何の根拠も有りません。地震学そのものが存在しません。詳しくはフェイスブックのYuuji Tauchi を見てください。

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