出光興産の創業家、昭和シェルとの合併「反対」 

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出光興産は6月28日、定時株主総会を開催した。

社長から、報告事項および決議事項に関する説明が行われたが、その際に大株主の代理人から、現在協議を進めている昭和シェル石油との経営統合について反対の意見表明がなされた。

出光興産は2015年7月30日、昭和シェル石油の株式 33.24% をShellから取得する株式譲渡契約を締結したと発表した。

出光興産と昭和シェルは2015年11月12日、対等の精神に基づく両社の経営統合に関する基本合意書を締結したと発表した。

2015/11/16 出光興産と昭和シェル、経営統合に関する基本合意書締結 

当初、2016年10月から2017年4月を目途に本統合会社を発足させることを目指すとした。

しかし、2016年6月17日の発表では、公取委審査の遅れから、昭和シェル株式の譲り受けは、当初の2016年上期中から2016年9月中とし、統合会社発足を2017年4月1日(予定)としている。


創業家側の弁護士によると、出光の創業家は筆頭株主の日章興産などを通じて出光株の33.92%を握っている。

同社の有価証券報告書によると、大株主の持株比率は下記の通り。

日章興産 16.95%
出光文化福祉財団 7.75%
出光美術館 5.00%
(以上合計) (29.70%)
社員持株会 3.80%

この29.70%に、出光昭介名誉会長(1.21%)、同氏の長男と次男(各1.51%)を加えると33.92%となる。

このままでは、統合承認に必要な、議決権3分の2以上の賛成をえることが困難になる。

なお、会社側は文化福祉財団と美術館は公益財団であり、議決権を行使できず、創業家の議決権は21.2%にとどまり、合併は可能とみている。

合併の反対の理由について創業家側は、
①出光と昭和シェルが、労働組合の有無など異質の企業体質を持ち、合併により経営の効率性を失う
②中東情勢が不安定ななか、サウジアラビアの国営会社サウジアラムコの影響力を受ける昭和シェルとの合併を急ぐべきではない、としている。

昭和シェルにはSaudi Aramcoが14.96%を出資する。
Shell が50%を所有していたが、2004年に9.96%をSaudi Aramcoに売却、翌年さらに5%を追加売却した。)

Shell の持株 33.24% を出光が買収する。

出光興産は、1953年にイギリスから経済制裁・禁輸措置を受けていたイランから原油を輸入した「日章丸事件」以来、イランとの関係が深く、イランとサウジの「対立の渦中に合併でサウジアラビアとの関係を強化するのは適切な経営戦略でない」とする。

出光は当初、昭和シェルの買収を持ちかけたが、昭和シェルの反対で合併に変更した。合併の場合は、合併会社における出光家の議決権は薄まり、重要事項の決定に関与できなくなる。


また、第1号議案である取締役選任議案で出光の取締役10人の再任に反対票を投じた。
しかし、これを含む全ての議案は、賛成多数で原案どおり承認可決された。

付記

月岡隆社長の取締役再任案への賛成率が52.3%だったことが分かった。昨年は91.6%で、賛成が39.3ポイント減った。
反対47.2%、その他0.5%で、創業家(議決権 33.92%、投票のうちでは38.6%)以外にも現経営陣への反対勢力が多数存在することがうかがえる。


出光興産は次のとおり述べている。

当社グループの企業価値向上のみならず、日本国内のエネルギーの安定供給体制の維持・強化に貢献することの重要性について、大株主と当社経営陣はその考えを同じくする中で、大株主とは今回の経営統合について継続的にコミュニケーションを行ってまいりました。

本日の定時株主総会の場で大株主の代理人からこのような形で経営統合反対の意見表明があったことは、誠に残念であると考えております。

当社グループの持続的な成長と石油業界の将来を考えた時、昭和シェル石油との経営統合が最善の策と確信していることには変わりなく、今後も対等の精神の下、経営統合に向けた協議を継続して参ります。

大株主を始めとする株主の皆様にご理解頂ける統合会社の設立に向け取り組んで参りたいと存じます。

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